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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第五〇話「遠路はるばる一番偉い天使がやってきた」

 天使兵が(わき)を守る応接(おうせつ)室のドアを、ハロムさんがノックする。ちなみに大事なお話なので、アンナはシスターの一人に(あず)けてきた。最近妹はおうたにハマっているので、聖歌(せいか)とか教えて(もら)えるかも知れない。


「失礼いたします、聖女リーファ様をお連れいたしました」

「入ってください」


 ドアの向こうからカナフェル大司教(だいしきょう)猊下(げいか)の声。どうやらずっと御前(ごぜん)の天使の二人を応対していたらしい。


 ハロムさんが開けたドアの向こうには、いつも通り祭服(さいふく)姿で見た目が一〇歳程度の仏頂面(ぶっちょうづら)をしている大司教猊下。その(となり)に座るのは私の姉のような位置に(おさ)まっている能天気な悪魔サマエルさん、そして……その正面には(よろい)を着こんだ二人の天使が応接のソファに座っていた。この多くの(つばさ)を持っている二人が御前の天使か。


「おっ、来たな。コイツが聖女リーファか」

「人の子相手とは言え、『コイツ』呼ばわりは失礼ですよ、メタトロン」


 もの(すご)大柄(おおがら)な男性の天使と、それを(たしな)めるもう一人の女性の天使。ということは、この大柄な方がメタトロン様、普通サイズの方がラグエル様か。


 メタトロン様はホライゾンブルーのショーストレートの髪にシルバーグレーの瞳を持っており、全身を(まと)う青い鎧を身に着けている。野性味(あふ)れるようなやや浅黒い顔には大きな傷痕(きずあと)が付いており、歴戦(れきせん)猛者(もさ)ということが(うかが)える。彼の脇には(さや)に収まった大剣が置かれているけど、たぶん神剣(しんけん)なんだろうなぁ。それにしても大きいお方だ。二メートルは超えてそう。


 ラグエル様の方はというと、赤い髪を頭の後ろで(まと)めていて、同じく赤い瞳にきりりとした(まゆ)実直(じっちょく)そうな印象(いんしょう)を与えるお方だ。白を基調(きちょう)とした鎧はこちらも全身をがっちりと守っており、脇には大剣ではなく片手剣。これも神剣なんだろうか。彼女の身長は私よりたぶん一〇センチほど低い。こちらは女性としては少し低い程度(ていど)だ。


 しかし、メタトロン様と大司教猊下が居並(いなら)ぶと縮尺(しゅくしゃく)がおかしいような気分になってくる。というかメタトロン様がデカすぎるんだけど。


「お待たせいたしまして申し訳ございません。お初にお目に()かります、エーデルブルート王国の聖女が一人、リーファです」


 私が軽く(ひざ)を折って淑女(しゅくじょ)らしく挨拶(あいさつ)すると、メタトロン様は「おう」と片手を挙げた。


「話は聞いているぜ。そこの隣に居る能天使(パワーズ)が聖女の身体に変えちまったそうだな。俺はメタトロン、一応全ての天使を纏めている、ということになっている御前の天使だ、よろしくな。こっちはラグエル、同じく御前の天使だ」

「よろしくお願いいたします、聖女リーファ、能天使シャムシエル」


 メタトロン様に紹介され、ラグエル様は(こし)かけたまま深々とお辞儀(じぎ)をする。隣のシャムシエルも慌てて頭を下げた。自分よりも(はる)か遥か上に位置する御前の天使という存在の前だからか、普段見ないような緊張(きんちょう)をしているな。瞳がぐるぐると(うず)()いている。


 母さんも自己紹介をしたところで、私たち三人はサマエルさんの隣に腰かける。魔術師が二人、能天使が一人、大司教の権天使(プリンシパリティーズ)が一人、古代の堕天使(だてんし)が一人、御前の天使が二人。どういう状況だ、これは。


(おそ)かったねー、リーファちゃん。死罪になってもう会えなくなるかと思ったよー」

「……それはわたくしもだいぶ覚悟(かくご)をしておりました」


 相変(あいか)わらず本心なのかどうなのか分からない調子でケラケラと笑いながら(かた)を叩いてくる隣の悪魔サマエルさん。一緒に王都へ来たとは言えなんでこの場に居るのかと思ったけど、そう言えばこのお方も大昔御前の天使の一人だったんだっけ。元同僚(どうりょう)なのか。


「死罪……、ですか? 聖女リーファ、何か問題でも起こされたのでしょうか?」

「いえ……、大事なことを国王陛下にお伝え出来ていなかったために問題となりましたのですが、陛下よりご厚情(こうじょう)を頂きまして、お(とが)めも無く解放されました」

「はぁ、なるほど……」


 ラグエル様は特にそれ以上突っ込んでこなかった。うん、元男でしたという事情を話すとまたワケの分からない事態になりかねないので有難(ありがた)いんだけどね。


◆ひとことふたこと


先にも触れましたが、メタトロンという天使は聖書ではなく聖典に登場します。

とてもとても大きな体をお持ちで、宇宙サイズです。パネェ。

でも双子の弟のサンダルフォンはもっともっとデカいのです。パネェ。

名前についてヘブライ語に合致するものは無いようなのですが、「見守る者」「玉座に侍る者」などが語源なのではないかと言われています。


ラグエルは天使が堕落しないよう監視を行う天使です。

こちらは旧約聖書の偽典にのみ登場します。なのでウリエル同様悪魔と扱われた過去があります。監視役なのにヒドイ。

名前はヘブライ語で「神の友」という意味です。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 元男って黙ってると罪になるのか 元男は自己申告しないと死罪です、 とか言う法律でも有るんだろうか [一言] 天使が身近に一杯居るって言うことは、御前は神様?
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