表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
49/184

第四九話「厄介事のあとは厄介事の予感」

これより第二章になります!

本章もよろしくお願いいたします!

 エーデルブルート王国中央地方にあるシュパン村から王都までは、馬車で一〇日間もの距離(きょり)がある。そうそうは()()出来ないのだけれども、私は諸事情(しょじじょう)により前に滞在(たいざい)していた時から二ヶ月と少しという短期間で王都を再訪問しなければならなくなっていた。


 何のために(おとず)れていたのかと言うと……国王陛下(へいか)(たばか)っていた、という、普通ならば死罪も考えられるような大事(だいじ)が理由だったんだけど。


 背後(はいご)謁見(えっけん)()(つう)ずる重厚(じゅうこう)(とびら)が閉じられ、私は大きく溜息(ためいき)()きながら(かた)を落とした。


「うぅ……、自業自得(じごうじとく)とはいえ、(ひど)い目に()いました……」


 落ち込んでいるとは言え近衛(このえ)兵の方が見ているので、あくまで聖女モードとしての振る舞いは(くず)さない。


 少し前の話だけれど、魔術師であるという以外は普通の少年であった私は、いま(となり)で同じように溜息を吐いている能天使(パワーズ)シャムシエルの勘違(かんちが)いにより聖女の身体へと変えられてしまったのである。


 しかし、あれよあれよと王国の聖女として持ち上げられていく中で、シャムシエルの他に事情を話せていたのは師匠、サマエルさん、カナフェル大司教(だいしきょう)猊下(げいか)幼馴染(おさななじみ)リリの四人しか()らず、とある事情で「〈魔剣のアナスタシア〉には息子しか居ない」という事実が陛下の耳に入ってしまったため、こうして謁見の間に召喚(しょうかん)されてしまったワケだ。


「よかったわねぇ、リーファちゃん。お(とが)め無しで」

「はい……、陛下にはさんざん(いじ)られてしまいましたが……」


 死罪も覚悟(かくご)していたのだけれど、護衛である近衛兵のお二人以外にお人払(ひとばら)いをした中で、事情を(つまび)らかに告白した私に対して陛下はニヤニヤと底意地(そこいじ)の悪い笑顔を浮かべながら弄り倒しただけで、それ以外はお咎めも無く解放されたのである。


「しかし、リーファが聖女になった経緯(けいい)は誰にも話してはならないと念を押されてしまったな」

「それはそうでしょうねぇ。リーファちゃんは(すで)に王国の聖女として(みと)められてしまった存在ですもの。真実が知られてしまっては王国の権威(けんい)に関わるわ」

「……()が痛いです……。村の人たちには私の正体、既にバレていそうな気がするのですが……」


 なにせリリには既に話してしまっているし、(せま)い村のことだ、少年リーファの代わりに少女リーファが魔女の家に()ついているのである。うん、この状況でバレないワケが無いね。


 母さんたちとそんな話をしながら、通路を歩いていくと……おや? 突き当たりでぶんぶん手を振っている妹のアンナともう一人、男性の天使が静かに(たたず)んで居る。あれは大教会でカナフェル大司教猊下のお付きをしている天使のハロムさんだな。


「おかあさん、おねえちゃん、シャムシエルおねえちゃん、おかえりなさい!」


 死霊(しりょう)(あやつ)られ膨大(ぼうだい)な魔力を(あつか)った結果、後遺症(こういしょう)により記憶喪失(そうしつ)になってしまったためうちで引き取っている私の妹のアンナは、(うれ)しそうに私の(こし)に飛びついた。紅魔族(ロートトイフェル)特徴(とくちょう)であるやや赤い蝙蝠(こうもり)の羽と尻尾(しっぽ)も、彼女の感情を表現するようにぱたぱたと動いている。うーん可愛い。


「ただいま、アンナ。ええと、ハロムさん、ごきげんよう。ハロムさんも謁見ですか?」

「おねえちゃんをまってたんだって!」

「わたくしを……?」


 私が首を(かし)げると、ハロムさんは「はい」と真剣な表情を作る。いつもポーカーフェイスの大司教猊下と違って、この天使さんはよくニコニコと笑っていらっしゃる温厚(おんこう)な方だけれど、今日は何やら顔色が悪い。わざわざここまで私を呼びに来たことといい、緊急(きんきゅう)の用事があったんだろうか。


「謁見でお疲れとは思いますが、至急(しきゅう)大教会までご一緒しては頂けませんでしょうか。我々にとっても、貴女(あなた)にとっても、とても重要なことなのです」

「もともと大教会には顔を出すつもりではおりましたので、それはよろしいのですが……、重要なこと、ですか?」


 えー、なんだろう。大司教猊下に無茶ぶりでもされるんだろうか、嫌だなぁ。


 そんな思いはおくびにも顔へ出さずにハロムさんの言葉を待っていると、彼は一度大きく息を吐いた。


御前(ごぜん)の天使メタトロン様と、同じく御前の天使ラグエル様が、大教会にいらしております。聖女リーファに話を(うかが)いたいと」

「……えっ」


 御前の天使、それは名前の通り神の御前に位置する最高位の天使である。


 (さら)にメタトロンと言えば、その中でも筆頭(ひっとう)と呼ばれる天使の中の天使、最強の天使だ。そんなお方が、わざわざ(はる)か遠い神都(しんと)ハルシオンから遠路(えんろ)はるばるエーデルブルート王国まで来たということ?


「……リーファちゃん、どうやらまた厄介(やっかい)ごとが舞い込んできそうねぇ」

「…………取り()えず、参りましょうか」


 私は母さんと同意見だったけれども、表向きは特に答えを返さないままに城門の方へと歩き始めたのであった。


◆ひとことふたこと


普通は死罪ですよね(笑)

流石に器が広いと評判の陛下です。


男性の天使さんが出てきました。

階級は一番下の「天使エンジェル」ですね。

ハロムはヘブライ語で「夢」という意味です。


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] びっくりしたー! 陛下、身体を弄り回したのかとww 平和は訪れた……と思いきや? リーファちゃんの受難はまだまだ続きそうですね〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ