第四話「お花摘みの方法を聞いたら普通殴られてもおかしくはない」
「どうやら、短剣にも槍にも毒が塗られているようだ。なんともあく……魔族らしい陰険なやり口だな」
僕の魔術でルピアを拘束した後、短剣と槍を拾いに行ったシャムシエルが顔を顰めながら戻ってきた。彼女の頭に染み付いているんだろうね、「悪魔」って言い掛けたみたいだけど、さっき「理由も無く相手を悪魔呼ばわりしたら、この国では捕まるからね?」と言っておいたのでちゃんと訂正してくれたみたいだ。でも「魔族らしい陰険なやり口」って言い方も偏見だから、今後直してもらうとしよう。
「で、君は遺跡で何をしようとしてたのさ。あそこに何があるの?」
「オマエ、言葉遣いが外見と見合ってないぞ。もうちょっと何とかならないのか」
むっ。お、男なんだよ中身は! ……と言えないところが辛い。というか、外見と見合ってないのはそっちもでしょ!
「……僕のことはいいから。で、遺跡に何があるの? 僕を殺そうとしたのは、目撃者を消そうとしたからだよね?」
「………………」
またかぁ。遺跡のことについて語らせようとすると話を逸らすか口を紡いでしまう。あまり時間的余裕も無いし、この後は師匠に口を割らせてもらうとして家まで連れて行こうかな。
それに、そろそろ、なんというか、その、トイレに行きたくて……。あ、ダメ。気になったら一気に尿意が。
っていうか、女性ってどうやって……その、するんだろう?
「あ、あの、シャムシエル?」
「ん? どうした、リーファ」
ひそひそ耳打ちする僕の様子が挙動不審だったため、ルピアが逃げ出さないよう警戒を続けながらも怪訝そうに首を傾げるシャムシエルさん。い、言いづらい……。
「そ、その……女性って、どうやってトイレ、するの?」
「んなっ!?」
一瞬で顔を赤らめるシャムシエル。うぅ、恥ずかしいったらもう! ルピアも訝しんでるし!
「き、貴様、そこから動くなよ! いいな!」
「いや、動きたくても動けないが……」
シャムシエルに無茶なことを言われて不満そうな顔のルピアを放置し、真っ赤な顔の天使が僕の肩を掴んで草陰へと連れ込んだのだった。
「ふぅ……なんとかなった。……あれ?」
人生初のお花摘み(と言ったらなんか語弊があるけど)を終わらせて戻ってきたら、シャムシエルが見張っていた筈のルピアが姿を消し、残されていたのは肩を落とした天使だけだった。
「リーファ、戻ってきたか。私が来た時には既に姿を消していた。してやられたようだ」
「逃げられたかー。でもあの拘束魔術は対象者側から外せないようになってた筈なんだけど」
「協力者が見ていたということだろう」
協力者ねぇ……。ということは、誰かが近くで見てたってこと? トイレの方を見られなくてよかった……。
「それにしても、遺跡と言ったか? 一体そこに何があるのだ?」
「僕も知らない。見に行ったことはあるけど特に魔力とか感じるものじゃなかったなぁ。師匠なら知ってるかもしれないし、戻って報告しよっか」
あの遺跡は確かサークル上に置かれた岩の中心に紋様が描かれた円錐状の金属が突き刺さっているだけの地味なモノだったと思うけど。古代文明の何かという他、僕は知らない。
「そう言えば、リーファはアナスタシアさんのことを外では師匠と呼ぶのだな」
「うん、外ではそう呼べって言われてる。僕を息子だと思うのは家の中だけ、なんだって」
そんな会話をしながら、僕たちは自宅へと戻って行った。
◆ひとこと
リーファくんの言っていることで理解が出来ると思いますが、この国では随分と人権に対する意識が高いようです。
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次回は本日22時半頃に更新予定です!