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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第一章「聖女はじめました」
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第三四話「出し惜しみなんてしていられる状況じゃない」

「半霊体(れいたい)か。神術(しんじゅつ)の方が()くのだろうが、リーファを守らなければならん。剣で相手をするとしよう」


 私の方へと進む不死王(ノーライフキング)(はば)むようにシャムシエルが上空から()りかかる。袈裟懸(けさが)けに斬撃(ざんげき)が入ったものの、王は(うるさ)(はえ)を追い(はら)うように手を()るう。彼女は(つばさ)駆使(くし)しギリギリでそれを(かわ)し、()うように(さら)に斬り(きざ)む。そう言えば初めてシャムシエルのまともな剣技(けんぎ)を見たけれども、中々のものだ。純粋(じゅんすい)な技術だけなら師匠以上かも知れない。


「〈光槍(ジャベリン)〉」


 不死王の胸元(むなもと)から何本も光の(やり)が生まれ、雨あられと私へ突き進む。無詠唱(えいしょう)でこれほどの複数展開(マルチキャスト)とは流石(さすが)と言う他無い。もう一つ〈聖壁(ディバイン)〉を展開し、これを阻む。


「ええい、骨相手は(ねら)いにくいったらもう!」


 サマエルさんは文句(もんく)を言っているけど、彼女の矢が()()ぐ不死王の(ひたい)に命中し、頭が爆散(ばくさん)する。相変(あいか)わらず規格(きかく)外の力だけど……頭はすぐに復活してしまう。こちらも規格外だ。


「ちょっとー、こんなんどうやって倒すのよー、めんどー」

「復活しているように見えますが、ダメージは蓄積(ちくせき)されています。続けていれば、なんとか……」


 うぅ、()(ごと)言わないでくださいよサマエルさん。それを言いたいのは狙われてる私なんですから。


「聖女様を守れ! ……うわっ!」


 近衛(このえ)兵の皆さんが剣で(たた)みかけるも、不死王の手が(いきお)いよく振るわれ近づくことすら難しい。シャムシエルとは違い、飛べないから逃げ場が限られるのだ。


「無理をなさらないでください! あれに()れられると生気(せいき)()い取られます!」


 厄介(やっかい)なことに生気を吸われると回復されて攻撃した分が無駄(むだ)になってしまう。攻略(こうりゃく)難易度(なんいど)の高い相手だよ、ホント。


「クカカッ! 苦戦(くせん)をしているようだなぁ、聖女よ!」


 プロディティオが(あお)ってきよる。ええい、お前が召喚(しょうかん)したんだろうが、やかましいわ!


 ついでにルピアを見る。もう魔力弾を()つつもりが無いのか何なのか、槍を地面に突き刺し不敵(ふてき)()みを浮かべている。とは言え、いつまた撃ってくるか分からないから〈聖壁〉の解除(かいじょ)は出来ない。


「っとと……」


 地面が()れた。地震か、こんな時に。(すき)を見せてしまったために不死王から〈光槍〉が再び雨のように飛んできたので、(あわ)てて〈聖壁〉で守る。


 しかし、だんだんと不死王が近づいてきている。コイツは〈護陣(シェル)〉でも〈聖壁〉でも(ふせ)げないし、いざとなったら奇跡を――


「リーファちゃん、すっごい揺れてない?」

「……揺れてますね」


 地震が(おさ)まらない。これではもはや〈聖壁〉の維持(いじ)(あや)ういけど、気を抜いたら魔力弾が飛んでくるだろうし、不死王の〈光槍〉に(つらぬ)かれてしまう。


 やはり地震が収まらない。しかも段々と揺れが強くなっている。一体……?


 そこまで考えて、私はルピアをもう一度見る。


「遅い」


 彼女の(くちびる)がそう動いたように見えた。


 咄嗟(とっさ)に私は躊躇(ためら)いも無く奇跡の術式(じゅつしき)を組み上げる。


(しゅ)よ、死せる者の御霊(みたま)を、(つみ)(ほだ)しより()(はな)(たま)え、〈主よ憐れみ給え(キリエエレイソン)〉!」

「リ、リーファ!?」


 気付(きづ)いたシャムシエルが慌てて止めようとしたけど、構わず放つ。


 不死王の足元から光が立ち(のぼ)り、一瞬(いっしゅん)で王は消し飛んだ。あまりに強力過ぎる術に近衛兵の方々が唖然(あぜん)としているけど、そんな(ひま)は無いですよ!


 たぶん不死王は(おとり)だ。そして本命はルピアの槍。地面に突き刺していたのは、そこから広範囲(こうはんい)膨大(ぼうだい)な魔力を送り込んでいたからだ。封印が反応していたため、地震が発生していたのだろう。


「皆さん、伏せてください!」


 (さけ)んだ直後、轟音(ごうおん)と共に背後から恐ろしい衝撃(しょうげき)(おそ)()かり、私の意識(いしき)暗転(あんてん)した。


◆ひとこと


キリエエレイソン、かっこいいですよね響きが。

レクイエムの一節なのです。やっぱりラテン語。


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] わーい最新話まで追いつきましたよ~(*´▽`*)
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