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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第一章「聖女はじめました」
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第三三話「根暗死霊術師の本領発揮らしい」

「さて、貴方(あなた)(わな)無効(むこう)化され、状況は元に戻りましたよ。大人しくして頂けると幸いです」


 (やり)を持つルピアに守られたプロディティオへ、一応投降(とうこう)を呼びかける。まぁ、無駄(むだ)だとは思っているけどさ。


 プロディティオは舌打ちすると、「プラン変更だ」とルピアへ呼びかけた。魔術も吸収(きゅうしゅう)トラップも使えない状況で一体何をするつもりだ。


承知(しょうち)しました。……はぁっ!」


 ルピアが気合(きあい)を入れると、彼女の持つ槍の先で何かが(こわ)れる音がした。これは――


「そこだけ〈神域(パーミッション)〉を壊した? ……いけない!」


 彼女の目論見(もくろみ)に気付いた私は、咄嗟(とっさ)近衛(このえ)兵さんたちを守るように槍の正面(しょうめん)へ〈聖壁(ディバイン)〉を無詠唱(えいしょう)展開した。次の瞬間(しゅんかん)轟音(ごうおん)が鳴り(ひび)くと共に(かべ)が打ち(ふる)えた。()め込んでいる魔力を使って強烈(きょうれつ)な魔力弾が(はな)たれたんだろう。こんなの当たったらただじゃ済まないぞ!


「チッ、(かん)のいい奴だ。だが、まだだ!」


 続けて魔力弾を放つルピア。だがこちらも神気(しんき)の量には自信がある。壁を打ち(くだ)くことは出来ないだろう。


 ルピアが()ち続けているため、〈聖壁〉のお(かげ)でお(たが)い近づくことが出来ない。もしかしてこちらの神気が枯渇(こかつ)するのを待っている? いや、そんな分の悪い()けをするとは思えない。


「リーファ、プロディティオが何かをしている。一瞬(いっしゅん)だけ〈聖壁〉を弱められるか?」

「え? ……あれは」


 シャムシエルの言葉で気が付いた。見ればプロディティオが地面に短剣を突き立て何かを(とな)えている。あれは、もしや――


「さあ来い、不死(ふし)の王よ! アーデルベルトの名においてその姿をここに(あらわ)せ!」

死霊召喚術(アンデッドコーリング)! シャムシエル、止めてください!」

「させるかっ!」


 私が〈聖壁〉を弱めようとしたところを見逃(みのが)さず、ルピアが(たた)みかける。(あわ)てて神術(しんじゅつ)()りなおしたため、結局(けっきょく)誰も壁の向こう側へと辿(たど)り着けなかった。くそっ、魔力弾で牽制(けんせい)している間に召喚(しょうかん)するなんて!


 プロディティオの目の前に黒い(きり)が立ち込め、人の形を取り始める。それはやがて、一人の高僧(こうそう)の姿となった。……ただし、その身体は(すで)に骨だけとなっているようだが。


「我を()び出したのは貴様か。我に何を望む」


 骸骨(がいこつ)何処(どこ)から出しているのか、しわがれた声でプロディティオへと(たず)ねる。あれは、まさか不死王(ノーライフキング)? 使役(しえき)するとなると、とんでもない対価(たいか)が必要となる(はず)だ。


「あそこに居る忌々(いまいま)しい聖女を殺せ。対価は俺の命の半分だ」


 はぁっ!?


 私を殺すためだけに自分の命を半分!? 正気(しょうき)か!?


(うけたまわ)った。では、貴様の望みを(かな)えよう」


 ゆらり、と不死王がこちらを向く。とんでもない大物(おおもの)だ。私の手には(あま)る。


「仕方ありませんね……術者を倒せばなんとかなる筈です。サマエルさん、弓でプロディティオを(ねら)えますか?」

「………………」


 あれ? サマエルさんの返事が無い。どうしたんだろう?


 彼女を見ると……(めずら)しく脂汗(あぶらあせ)を流している。何があった。


「ご、ごめん、リーファちゃん。なんか、さっきから狙ってるんだけど、全然狙いが(さだ)まんないっていうか……、手が(ふる)える」

「は?」


 この何者にも怖気(おじけ)づかなそうなお姉さんが、震えてる?


「たぶんアイツ、自分に何かの(のろ)いをかけてる。アレを傷つけたらアタシもタダじゃ済まなそう」

「……そういうことですか」


 サマエルさんは恐るべき(かん)で、反射の呪いを感じ取ったのか。もしそれが本当だとすると、気づかず()ていたら大変なことになっていただろう。


「分かりました。プロディティオを狙うのは最後の手段にしましょう。不死王の相手をするしかありませんね」


 私は覚悟(かくご)を決めて、不死王に視線を向けた。()ちた高僧は〈聖壁〉をすり抜け、ゆったりとした速度で近づいてきている。狙いは間違いなく、私だ。


◆ひとこと


みんな大好きノーライフキング。リッチとも言う。

死霊召喚術で呼び出した者を使役するには代償、つまり生贄が必要というわけです。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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