表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第一章「聖女はじめました」
31/184

第三一話「何処に在るかも分からない封印を守る簡単なお仕事」

 鬱蒼(うっそう)()い茂る背の高い雑草(ざっそう)、飛び()う大型の羽虫(はむし)


 曇天(どんてん)と言うこともあり、ゲーベル(ぬま)はおどろおどろしい雰囲気(ふんいき)(つつ)まれていた。


「ここが、古代悪魔サタナキアが封印されているゲーベル沼です」

「案内を頂きありがとうございます、ギュンター様。それにしても、雑草で視界(しかい)が悪いですね」

「はい。定期的に兵が()り取ってはいるのですが、すぐに()えてきてしまいますね」


 うーん、そうなのか。だとすると私とサマエルさんは魔力を探知出来るけれども、シャムシエルと近衛(このえ)兵の皆さんはそうもいかないから厄介(やっかい)だな。


 沼の水の透明(とうめい)度は低く、水面(みなも)からはとてもじゃないけど底を見通せない。何か魚が(およ)いでいるらしいことが分かるくらいだ。


「さて……、封印はどちらにあるのでしょう?」


 ギュンターさんに聞いてみたけど……おや? かぶりを振っている。どういうことだ。


「分からぬのです」

「え? それはどういう……」

「ここに封印がある、ということしか分かっておりません」


 え、えぇぇ……、そんなことってある? 調べればすぐ分かるでしょうに……と思ったけど、神の奇跡で封じられているから〈魔力探知(マナサーチ)〉じゃ引っかからないのか。


「サマエルさんは封印の場所を感知出来たりしませんか?」

「無茶言わないでよー。神様の奇跡だとアタシでもわかんないってばー」


 ぐぬぬ、そうか。もしかしなくても沼の底かも知れないけど、(もぐ)る訳にもいかないんだよねぇ。水中で呼吸出来るようになる魔術もあるけど、汚いし何より(どろ)にはまったりしたら死を意味する。


 私が奇跡を行使すれば分かるだろうけど、封印にどんな影響があるか分からないリスクのある手段(しゅだん)を使う場面(ばめん)でも無いような気はする。むぅ、どうしたものか。


「リーファ、封印の場所を知ることにそれほど意味は無いのではないか? (よう)は相手から封印を守ることが肝要(かんよう)だ」

「……それもそうですね」


 ()えているねシャムシエル。だったらやることは一つだ。守るためには敵を探そう。


「その流れを我に(うつ)せ、〈魔力探知〉」


 普段より精密(せいみつ)術式(じゅつしき)を意識し、〈魔力探知〉を組み上げる。これがあれば、古代悪魔を吸収(きゅうしゅう)したような存在が居ればすぐに――


「これは……! 沼の南方向に居ます!」


 すぐに見つかった。私たちの背後から堂々(どうどう)と近づく強大(きょうだい)な反応。しかし、それと一緒に動く小さな反応もある。


 私たちが振り返って見たそこには、ダークエルフの女(やり)使いを(したが)えた黒ずくめの男が悠然(ゆうぜん)と立っていた。


 しかしマズいな。左右と背後は沼に(かこ)まれている。逃げ道を(ふさ)がれてしまったか。


「おやおやぁ、見つかってしまったか。まったく、魔術が使える聖女とは、厄介(やっかい)なものだよ」


 誰だ? 初めて見る顔だ。強大な力を持っているダークエルフは恐らくルピアだろうけど、この男には(おぼ)えが無い。


 なんというか根暗(ねくら)そうで、それでいて人を見下(みくだ)したような視線を向けてくる、見ていて気分の悪くなる男だ。


「貴様は……!」


 ギュンターさんを始めとする近衛兵の皆さんが、男を見て驚愕(きょうがく)に目を見開(みひら)いている。となると、城に関わる人物?


「ギュンター様、あの男性は何者ですか?」

「……国王陛下(へいか)宰相(さいしょう)閣下(かっか)弟君(おとうとぎみ)、だった人物です」

「……だった?」

「今は放逐(ほうちく)され、王侯貴族としての(くらい)()くしています。名はアーデルベルト」


 そういうことか、となれば話がだんだん見えてきた。この男は王族への(うら)みで動いている、といったあたりか。


「いやいや、その名はもう捨てたよ。今の名はプロディティオだ。しっかし、俺の行く先を的確(てきかく)に当てて聖女を派遣(はけん)してくるとは、ブルクハルト兄上も(かん)(するど)いお方だぁ。しかも、王弟(おうてい)派の息がかかっていない聖女をなぁ」

「その物言(ものい)いは、貴方(あなた)が王弟派と関係があると(おっしゃ)っているようなものですよ」

「実際そうだからなぁ、聖女様よぉ。ディートハルト兄上は俺のパトロンだし?」


 あっさり宰相と(つな)がりがあると(しゃべ)ったよ。大方(おおかた)あの宰相は混乱に(じょう)じて実権(じっけん)(にぎ)ることでも考えているんだろう。生憎(あいにく)と王弟派の勇者と聖女は、国王派とペアで別の封印へと派遣されている。万が一裏切(うらぎ)っても対応出来るようにだ。


 それにしても全く、ベラベラとよく喋る。それだけこちらを()めてくれているのだろうけど。まぁいい、(あなど)っているのならばそれが(すき)になる。


「聖女様、問答(もんどう)は無用かと。(とら)えた後に尋問(じんもん)しましょう」

「そうですね、では(まい)りましょう」


 ギュンターさんの合図(あいず)で、近衛兵の皆さんが剣を構えてじりじりとプロディティオに近づく。私の役目はそのサポートだ。


 私も長杖(ちょうじょう)を力強く(にぎ)り、神術(しんじゅつ)を行使すべく術式の構築(こうちく)に入った。


◆ひとこと


根暗とネクロマンサーを掛けました(おい

まぁ死霊術師なんてやってりゃ放逐もされますよね。


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ