第二一話「一二〇〇年モノと三〇〇〇年モノのカルチャーショック」
王都ヘルマーは東の広大なフォークト湾に接した巨大な港町でもあり、港には多種多様な帆船が停泊している様子が見られる。大型船の登場以来、この港から色々な文化が流入することでエーデルブルート王国は近年めざましい発展を遂げたのである。
「おねえちゃん、あれなあに?」
「あれは船と言う、水の上を進む乗り物ですよ。たくさんの人や荷物を運んで国を豊かにしているのです」
「それじゃ、あれは?」
「あれはですね――」
私の膝の上のアンナは物珍しさに瞳を輝かせながら、馬車の外に新しい物が見えるたびに質問してくる。私も妹に頼られるのは嬉しいので、一つ一つ丁寧に答えてあげている。私自身は師匠と一緒に何回かこの王都へ足を運んだことがあり、町の案内はお手の物なのだ。
「「………………」」
一方、あまりにも自分たちの知る常識と異なる光景に、一二〇〇年前の天使と三〇〇〇年前の悪魔の二人は圧倒され呆けている様子だった。今からこんな調子で大丈夫?
「シャ、シャムシエル? あれってもしかして船……? マジデカすぎない……?」
「はい……。しかも見てください、サマエル様。船の側面には何か筒状のモノが付いてますよ? アレはもしや、一つ一つが兵器なのでは……?」
あー、それね。大砲ですね。兵器で正解ですね。よくできました。
「馬上より失礼いたします。予定通り、この後は我がリーフェンシュタール家の屋敷にお招きをさせて頂きます。今暫く馬車より見える光景を皆様とお楽しみください」
おっと、騎士様もといアロイスさんに反対側の窓から声を掛けられたので、聖女スマイルを作って振り向く。
「はい、承知いたしました。道中護衛をして頂き感謝申し上げます。他の皆々様へも、どうかそのようにお伝え願えますでしょうか」
「勿体なきお言葉……! 聖女様より労いの御言葉を頂けたこと、必ずや部下にも伝えさせて頂きます!」
「ありがとうございます。でもわたくしはまだ、聖女ではありませんよ」
あー、しんどい。
ホント、なんでこんなことになってんだろ……。
◆ひとこと
短くてスミマセン。
どうやら大航海時代真っ盛りのようですね。
大砲も登場しました。
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次回は明日21時半頃に更新予定です!