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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第一章「聖女はじめました」
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第一九話「幕間:昏き獣の脈動」

※三人称視点です。

「ふむ、予想外の邪魔(じゃま)が入ったが、(しゅ)目的は()たせたようだなぁ」


 古代遺跡(いせき)からやや離れた森の中、手に持った水晶玉に(うつ)(こわ)れた古代遺物(アーティファクト)の様子を(なが)めながら、その黒い外套(がいとう)(まと)った四〇代くらいの男は満足そうにそう(ひと)()ちた。


 いや、一人ではない。男の背後にはぼやっと浮かび上がる紫色の女性の霊体(れいたい)が片(ひざ)をつき、(かしこ)まっている。


「申し訳ございません、プロディティオ様。封印を()くことには(いた)りましたが、悪魔の力を手に入れることが(かな)いませんでした」


 プロディティオと呼ばれた男は、霊体の言葉に小さく笑うと振り返り、自分も片膝をついて霊体の(ほお)に手を()わせた。いや、霊体なので()れることは出来ないのだが。


「ああ、構わんよルピア。あくまで第一の目的は封印の解除だからなぁ。それにまだ四ヶ所残っている。恐らくあと二つ封印を解けばアレが復活するだろうが、それまでに十分力を()い上げてくれれば良い」

「はっ、承知(しょうち)しました」


 死霊(しりょう)ルピアは主君(しゅくん)(めい)を心に(きざ)むように、力強く(こた)える。〈魔剣のアナスタシア〉を始めとする予想外の分子のお(かげ)で予定が狂い、計画の一部については(あきら)めざるを()なくなったのである。


「……して、次はいずこの封印へ?」

「ロイヒテンダーバルトへ向かう。ダークエルフの縄張(なわば)りではあるが、あそこは身を(かく)しやすいからな」

「南方に位置するダークエルフの森ですか。では、私はそこで次の身体を見つけることにいたしましょう」


 死霊のような幽体は誰かに憑依(ひょうい)しなければ物質に強い影響(えいきょう)を与えることが出来ない。そのため彼女はシュパン村の近くを彷徨(さまよ)っていた(おさな)い魔族に憑依していたのだが、封印を解く際の爆発に巻き込まれないため、脱出せざるを得なかったのである。


「ああ、引き続き貴様の活躍(かつやく)に期待しているぞ」

勿体(もったい)無きお言葉にございます。必ずや、主君の大願(たいがん)を果たして見せましょう」


 終始(しゅうし)頭を下げたままであった死霊ルピアは、森の闇に溶け込むように消えてしまった。


 残されたプロディティオはザックの中へ水晶玉を仕舞(しま)い、ククッと(ふく)み笑いを()らした。


「アレの復活は近い。兄上たちよ、俺を放逐(ほうちく)した(うら)みを思い知って(もら)うぞ」


 含み笑いは段々(だんだん)と大きくなり、やがて森へ(ひび)き渡る高笑いとなったのだった。


◆ひとこと


変なおじさん登場()

ダークエルフの森という単語が出てきましたが、この世界ではダークエルフも基本的に他種族と共存しています。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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