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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一八一話「仲間たちは集い、そして世界最強もやって来た」

 何処(どこ)から()いて出るのか、メタトロン様、アザゼル、シャムシエルが(たお)せど倒せど、天使たちは次々とやって来る。奇跡でだいぶ落としたというのに、これ(ほど)までに居るとは思わなかった。そりゃメタトロン様の部隊(ぶたい)も負ける(わけ)だ。


「ちっ! 次から次へと!」

(まった)くだ! だが、リーファには()れさせん!」


 舌打(したう)ちをするアザゼルと、同感だと悪態(あくたい)をつきながらも天使たちを()り伏せてゆくシャムシエル。メタトロン様曰くこの天使兵たちは殆どが能天使だというのに、シャムシエルは全く気にすることなく殺している。この辺、私たちと感覚(かんかく)(ちが)うのだろうか。それにしても同じ階級(かいきゅう)相手でもこれ程までにシャムシエルは強いんだな。


「なっ、何だ!? 水が……がっ!?」


 後方(こうほう)から聞こえた声に()り返ると、天使兵たちが次々と水に頭を射貫(いぬ)かれていた。これは一体……?


(あたしよ、あたし)

「わっ!?」

「なんや? どないしたんやリーファちゃ……わっ!?」


 突如(とつじょ)(ひび)いた声に(おどろ)いた私へ不思議(ふしぎ)そうに(たず)ねたシャラも、何やら驚いた様子(ようす)。もしかして、同じように声が聞こえたんだろうか。


「……って、この声、ベートさん?」

(あたり。こいつら敵でしょ? 仲間を()れて来たから助けたげる)


 ベートさんが仲間を連れてわざわざ(もど)ってきて、水の精霊(せいれい)魔術で助けてくれているらしい。そう言えばここは川の(そば)だった。精霊魔術ならば〈神域(パーミッション)〉の影響(えいきょう)も受けないし、多分この声も精霊を(かい)して(かた)りかけているのだろう。


「……ありがとうございます!」

「おおきに! 助かる!」

「え、ナニ突然(とつぜん)? 見えない誰かと交信中(こうしんちゅう)? (こわ)いんだケド」


 ハニエル様が普通に引いていた。




 如何(いか)にメタトロン様たちが強かろうが、無傷(むきず)では居られない訳で。ハニエル様が神術(しんじゅつ)複数展開(マルチキャスト)(いや)したりもしているけれど、限界(げんかい)はある。段々(だんだん)と味方の手傷(てきず)は多くなってきた。その上、油断(ゆだん)をしたら死に(いた)状況(じょうきょう)である。精神的にも()()めているだろう。


 こんな時、身体が言うことを聞かないのがもどかしい。敵はまだまだ無傷の兵たちが上空で(ひか)えているようだし、奴等(やつら)(たた)きたいのに。


 そう思い空を見上げた直後、空に()う天使の一人の頭が、石榴(ざくろ)のように(はじ)けたのを見た。そして次々と同じように天使たちが殺されていき、彼らは(はち)()(つつ)いたように()り始めた。これは――間違(まちが)い無い!


「……サマエルさん!」


 この正確無比(せいかくむひ)狙撃(そげき)(うで)はサマエルさん以外には居ない。それにしても、南の方へ誰かを(むか)えに行くと言っていたけど、一体誰を迎えに行ったのか。


 と、南の空を見た瞬間(しゅんかん)、私は強烈(きょうれつ)なプレッシャーに思考(しこう)が止まったような気分を(おぼ)えた。


 そのプレッシャーを(はな)っているのは……上空に(とど)まる悪魔の兵士たちの中心に居る。いや、御座(おわ)すお方だ。長い黒髪をたなびかせる、一二枚の黒い(つばさ)を持つ美しい男性の悪魔。


(ちん)が許す! 聖女の上空に居る敵の天使(ども)(ほろ)ぼせ!」


 ……朕?


 今、あの長髪の黒い悪魔、朕って言った? え、まさか……?




 何時(いつ)の間にか形勢(けいせい)逆転(ぎゃくてん)しており、残る敵兵はクシエルと、クシエルの側近(そっきん)らしき者たち数名だけだった。途中(とちゅう)、彼らは戦場から離脱(りだつ)しようとしたものの、無情(むじょう)にもサマエルさんの狙撃により翼を()られて(かな)わなくなってしまった。


 ハニエル様も神術防壁(ぼうへき)()いたところで、私の所へ先程到着(とうちゃく)した美しい悪魔がやって来た。いや、いらっしゃった。


「ああ、よい、(ひざ)をつくな。その服が戦場(いくさば)の血に()れてしまうだろう?」


 いえだいぶ返り血に()まってますけどね。でもお気遣(きづか)(いただ)いているのにそんなこと言えない。


「その…………はい、恐縮(きょうしゅく)です……」


 私だけでなく、シャラまでがっちがちに緊張(きんちょう)してしまっている。だって、目の前に御座す悪魔って……。


「ふむ……美しいな。(ととの)った顔に、(やわ)らかそうな(くちびる)翠色(みどりいろ)の髪と瞳は西方(せいほう)の血か? だが、姿(すがた)も美しいが……何より、(みずか)らの存在(そんざい)犠牲(ぎせい)にしてまでも愛する者たちを(すく)おうとするその慈愛(じあい)の心、それこそが何より美しい」

「あっ……、もっ、勿体(もったい)なき、お言葉です……」


 ()れ馴れしく髪と(ほお)()れられて口説(くど)かれたけれど、それを()()ける勇気は私に無い。こ、これ、どうすればいいの?


 と思っていたら、私を(もてあそ)んでいた気高(けだか)きお方の頭を、スパーンと叩いた人、いや悪魔が居た。側近の方々(かたがた)の空気が(こお)り付く。


「ちょっとルシファーくん!? アンタこんなトコでリーファちゃんを口説くんじゃない!」


 叩いたのはやっぱりサマエルさんだった。そしてやっぱり、目の前のお方はカナン神国(しんこく)(なら)んで最強の国と呼ばれる、ヴィニエーラ帝国の皇帝(こうてい)、ルシファー陛下(へいか)だった……。


 信じたくは無かったけど、サマエルさんはマブダチである皇帝陛下と、その直属(ちょくぞく)の部隊を連れてきたらしい。正気(しょうき)ですか? いや、お(かげ)で助かったんだけどさ……


(たわむ)れだ、(ゆる)せ、サマエル」

「許さん。奥さんにチクる」

「そこをなんとか……」


 先程まで悠然(ゆうぜん)としたお姿だったのに、奥様を出された途端(とたん)に頭を下げて懇願(こんがん)する陛下。()(ぐち)されるのがそんなに怖いんですか……。


◆ひとことふたこと


精霊は、それ自体が何かしらの依り代を持って動く存在です。

そして精霊魔術は精霊に呼び掛けて行使するので、魔術とは言いますが魔力を必要としないのです。


やって来ました、リーファちゃんを除けば世界最強キャラのルシファーくん。

そして口説かれるリーファちゃんもまんざらでは無さそう(笑)


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 一人称が「朕」 とても偉そうである 偉いんだけどさ
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