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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一八〇話「反逆者たちとの戦いが、始まる」

※リーファちゃんの一人称視点に戻ります。

「う……ぐっ……」

無茶(むちゃ)()ぎや、リーファちゃん!」


 流石(さすが)に、〈神の炎(ウリエル)〉、〈メギドの丘(ハルマゲドン)〉、〈安息を(レクイエム)〉の三連発(れんぱつ)は私の身体を大きく消耗(しょうもう)させてしまった。(あわ)てて()()ったシャラに、強く()()められる。


「シャ……ラ、私のことは、いいから、敵を……」

「……分かった! リーファちゃんは休んでるんやで! 天に()ちる第五元素(エーテル)よ! うちらを(ねら)奴等(やつら)を返り()ちにせえ! 〈彗星(コメット)〉!」


 すぐに立ち上がり、シャラは眼前(がんぜん)(せま)る天使たちを()ち落とす大魔術を(はな)った。天から雨あられと魔力弾(まりょくだん)()(そそ)ぎ、天使たちは次々と(つばさ)射貫(いぬ)かれてゆく。


 しかし魔力弾を()(くぐ)った天使たちも居る(わけ)で、彼らは私たちへと()()ぐ急降下(こうか)してきた。このままでは――


「〈聖壁(ディバイン)〉!」


 詠唱(えいしょう)も無く展開(てんかい)された神術(しんじゅつ)防壁(ぼうへき)が私たちを(つつ)()み、急降下してきた天使たちは次々と()ね飛ばされた。


「アタシを忘れて(もら)っちゃ、(こま)るんだよねー」

貴様(きさま)! ハニエルか! 生きていたのか!」

「そーそー、聖女ぴのお(かげ)でねー、マジ感謝(かんしゃ)しか無いって」


 (さけ)髭面(ひげづら)の天使に対して、余裕(よゆう)態度(たいど)で返すハニエル様。それにしても聖女ぴって何だ。何語なんだ。


「よう、俺も忘れて貰っちゃ困るぞ、クシエル。二日ぶりくらいか?」


 上空で戦っていたのか、神術防壁の前で立ち(ふさ)がるように()い降りたメタトロン様。って――


「あれが、クシエル……?」

「そうだ。こいつらを煽動(せんどう)した首領(しゅりょう)だな。おい、覚悟(かくご)しろよクシエル」

「メタトロン……!」


 メタトロン様をまるで親の(かたき)のように歯軋(はぎし)りしながら(にら)み付けるクシエル。何がそんなに(にく)いのか。やっぱり地位(ちい)に対する嫉妬(しっと)か何かなのだろうか。


「……ククク、だが、聖女は(すで)力尽(ちからつ)きた。後は二日前と同じくその防壁を破壊(はかい)し、聖女を殺すまでだ。こちらにはまだまだ兵が居るからなァ!」

「させるかよ!」


 クシエルの言葉が皮切(かわき)りとなり、天使たちが一斉(いっせい)に私たちへと密集し、防壁へと()りつけ始めた。敵はまだ一〇〇人以上は居る。このままではヤツの言う通り、いずれ防壁は突破(とっぱ)されてしまうだろう。


「オラオラァ! まったく虫みてぇにゾロゾロと! ()き飛びやがれ!」


 メタトロン様は集まる天使兵を、大剣を()るって言葉通りに吹き飛ばしている。でも、メタトロン様の身体がどれだけ()つのか。一〇〇人以上を相手取(あいてど)る事は出来(でき)るのか?


「くっ! 〈神域(パーミッション)〉を使われとる! 魔術が発動(はつどう)せえへん!」


 シャラは魔術を封印(ふういん)されてしまったらしい。この状況(じょうきょう)打破(だは)するには、私が――


「主よ、万軍(まんぐん)の神よ……ぐっ……」

「リーファちゃん! もうあかん! これ以上使うたら身体が()たへんで!」


 〈神の恩寵(グラティア)〉でメタトロン様を援護(えんご)しようとしたものの、身体が言うことを聞かない。神の純粋(じゅんすい)神気(しんき)を取り()み過ぎて、(おそ)らく身体が変質(へんしつ)してしまった(ため)順応(じゅんのう)出来ていないのだろう。なおも(つえ)(かか)げようとしたけれど、シャラに止められてしまった。


「うーん、まだまだ()えられるけど、この数はヤバいかもねー。時間の問題?」


 ハニエル様は余裕そうな態度だけど、言葉の内容は絶望的(ぜつぼうてき)だった。そんな、ここまで頑張(がんば)ったのに。


 そう思った時に、黒い何かは突然(とつぜん)降ってきた。


 メタトロン様を背後(はいご)から斬りつけようとしていた何かが、その黒い何かに(かた)から反対側の脇腹(わきばら)まで真っ(ぷた)つにされ、物言(ものい)わぬ死体へと()り下がった。


「ア……アザゼルさん!」

「アザ……ゼル……?」


 叫ぶシャラと、なんとか言葉を(しぼ)り出した私の方へ、執事(しつじ)のような黒い服に身を包んだ悪魔は、ニヤリと()みを()かべてみせた。手にはこの間持っていた〈慈悲の剣(クルタナ)〉ではない、新たな聖剣……〈高潔なる(オートクレール)〉だったか。やはり母さんから借りてきたのだろう。


()()ったようだな。あと、俺だけではないぞ」

「えっ…………シャムシエルさんや!」


 アザゼルに追いつこうと急いで飛んできたのだろう。シャムシエルは息を切らせていたものの、(むら)がる天使兵を次々と〈隠された剣(クォデネンツ)〉で(ほうむ)っていった。


「まったく、洞窟(どうくつ)を逃げ出すとは思わなかったぞ、リーファ。この事はしっかりと後で――」


 ちらり、とこちらを見て何か言いかけたシャムシエルだったけど、(おどろ)いたように何故(なぜ)か私を二度見(にどみ)した。え、一体何?


「……後で、きちんと説明して貰うからな、覚悟しておけ」

「う、うん……?」


 え、何だったんだろう、今の反応は。ちょっと気になる。


◆ひとことふたこと


聖女ぴっぴ。


オートクレールはクルタナと同じくシャルルマーニュ伝説に登場する剣です。

騎兵に斬りつけた時、真っ二つにした上に馬まで斬り裂いたという、とんでもない切れ味を持っているんだとか。

〈魔剣のアナスタシア〉と呼ばれる魔女は、こんな名剣まで持っていました。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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