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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一七九話「幕間:天使たちの見た地獄」

※三人称視点です。

 智天使(ケルビム)クシエルは、先程(さきほど)ニガヨモギ(ラーナー)』を消し飛ばした光の発生源(はっせいげん)目指(めざ)し、大軍(たいぐん)最後方(さいこうほう)を飛んでいた。


「アレを消し飛ばしたことには(おどろ)きだが……、居場所(いばしょ)が分かったからにはそこを(たた)けば良いだけのこと。我等(われら)脅威(きょうい)となる聖女リーファよ、俺が直々(じきじき)に殺してくれるわ」


 ニヤニヤと(いや)らしい笑みを()り付けながら、クシエルは目指す西南西の森に向かってそう(うそぶ)いた。


「クシエル様! (おそ)れながら進言(しんげん)いたします! ここまで密集(みっしゅう)していては聖女の攻撃を受けた時に()えられません!」


 クシエルの(そば)を飛ぶ主天使(ドミニオン)の一人が、組織(そしき)のトップにそう上申(じょうしん)した。彼の言う通りであり、密集陣形(じんけい)では範囲(はんい)攻撃を受けた時に耐えられないだろう。


「今は一時(いっとき)も早く聖女の所へ急ぐべきだ。先程何かが飛んでいくのが見えたが、(おそ)らくメタトロンだろう。彼奴(きゃつ)らが合流(ごうりゅう)する前に叩かねば、厄介(やっかい)な事になりかねん」

「……はっ、出過(です)ぎたことを(もう)しました! 申し(わけ)御座(ござ)いません!」

(かま)わん」


 クシエルは短く部下にそう()げると、気分を(がい)された様子(ようす)も見せずに、再び(だま)って飛び続ける。


(それに、貴様等(きさまら)(かべ)になって(もら)わねば(こま)る。広範囲(こうはんい)に広がって、俺が(ねら)われてしまっては困るだろうが)


 本心を(かく)しつつ、クシエルは小さく(はな)を鳴らした。集団が壁になってさえくれれば、『聖別されし者(マシアハ)』を持つクシエルが()(さき)に狙われることも無いのだ。


 そして飛び続けること一時間、そろそろ目的地の近くとなった時に、彼の居る後方に伝令(でんれい)能天使(パワーズ)がやって来た。


「申し上げます! 標的(ターゲット)を発見しました! なお、標的は単独(たんどく)でこちらへ武器を向けており、抗戦(こうせん)姿勢(しせい)を取っております!」

「ふん、無駄(むだ)なことを。この軍勢(ぐんぜい)相手に一人で何が出来(でき)るというのだ。早々(そうそう)捕縛(ほばく)し、俺の前へ()れて来い」

「はっ!」


(それに、奇跡が使えるとは言え、相手はたかが人間の娘一人だ。天使を殺すことに抵抗(ていこう)があるだろう)


 クシエルが嘲笑(ちょうしょう)(とも)に命令を()げ、伝令が(きびす)を返そうとしたその時。


 突如(とつじょ)として、彼らの眼前(がんぜん)に燃え(さか)る巨大な炎の玉が(あらわ)れた。


「なっ!? かっ、回避(かいひ)しろ! 回避――――っ!」


 クシエルが、(あわ)てて低空(ていくう)に移動しつつそう(さけ)んだ。


 しかし、高速で移動する運動エネルギーの方向(ほうこう)を変えることなど、容易(たやす)い事では無い。多くの兵たちが何も出来ず、絶叫(ぜっきょう)を上げながら目の前の火球(かきゅう)に飲み込まれて行った。


 天使たちは炎でコーティングされた後、墜落(ついらく)して行き、森の中へ次々と()()む。炎は不思議(ふしぎ)なことに木々へと引火(いんか)する事も無く、ただ苦しみに(あえ)ぐ彼らの身体だけを焼いていく。


「おい、なんだこれは? 聖女と呼ばれている女が、虐殺(ぎゃくさつ)をするというのか? くそっ! 止まれ! 止まって()れ!」


 密集していることの(おそ)ろしさを実感(じっかん)したクシエルは、急ぎ散開(さんかい)の命令を(くだ)した。


 だが、次の奇跡は(すで)に用意されている。


「次、何か来ます!」


 クシエルの側近(そっきん)(さけ)んだ直後(ちょくご)


 炎の玉ごと(つつ)み込むような、神気(しんき)(あら)()()れだした。嵐は炎を取り込み、真っ赤に()まる。嵐に()れてしまった天使たちは、声を上げることも出来ずにその中へと消えて行った。


「くっ……! 限界(げんかい)まで散って、(じゅつ)が終わったら取り(かこ)んで攻撃しろ! これ以上()たせるな!」


 最早(もはや)兵の半数以上が炎に飲み込まれてしまったが、まだまだ数ではクシエル側に()がある。(たと)え敵が近くに(かく)れていようとも圧倒(あっとう)できると、クシエルは()んでいた。


 そして嵐が(おさ)まり、四方(しほう)から生き残った能天使兵たちが聖女を目指して降下(こうか)する。


 だが、突如彼女の(まわ)りに生まれた金色(こんじき)の光が触れた途端(とたん)、兵たちは次々と墜落して行く。次の奇跡が(はな)たれたのだ。


「……なんだ、なんだこれは? なんなんだ、あの化け物は? 『聖別されし者』などより、ヤツの方がよっぽど脅威(きょうい)ではないか!」


 そう、恐怖(きょうふ)(ふる)えるクシエルだった。が、途端(とたん)面白(おもしろ)いものを見つけたかのように、彼の口角(こうかく)は上がった。


 標的の聖女が、(ひざ)をついているのである。


「ヤツは力尽(ちからつ)きたぞ! 今だ! 今しか無い!」


 そう叫んで、クシエルは残った兵たちと共に自らも聖女の元へと突っ込んで行ったのだった。


◆ひとことふたこと


舐めプしていたらえらいことになったクシエル陣営。

狩る時には全力を出さなきゃ駄目ですね!


今回リーファちゃんは三つの奇跡を使いました。

果たしてどれがどれだか分かりましたか?


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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