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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一七八話「そんな理由なら、もう容赦する必要は無いよね」

「主よ、暗き(あし)灯火(ともしび)を今一度(かがや)かせ(たま)え、〈復活(レスレクティオ)〉!」


 メタトロン様の傷も中々(なかなか)だったけど、もう一人の御前(ごぜんn)の天使ハニエル様の容態(ようだい)が危険だったので、(まよ)わず神術(しんじゅつ)ではなく奇跡を使って回復させた。お二人の傷はみるみるうちに(ふさ)がってゆく。


「助かった、リーファ。……だが、お前はもう、奇跡を使わないんじゃなかったのか?」

「このような状況(じょうきょう)手段(しゅだん)など選んでいられませんよ。それに、覚悟(かくご)もとうに決まっているのです」

「……そうか、感謝(かんしゃ)する」


 メタトロン様は色々と()い目がある所為(せい)なのか、私に対して深々(ふかぶか)と頭を下げた。大部分はメタトロン様の所為じゃないのだけど、神国(しんこく)の事実上トップのお方だし責任(せきにん)は取らないといけないのだろうね。


「う……う~ん……、あれ? メタトロンが居る? アタシ、神の御許(みもと)へ行ったんじゃなかったの?」

「よう、起きたかハニエル。聖女が治してくれたぞ」

「え? マジ? 聖女?」


 ハニエル様が目を()ましたようだ。彼女の金色の髪は私と同じくウェーブがかかっていて、おでこが見えているのが特徴的(とくちょうてき)だ。まだ起きがけでぼーっとしているけど、大きな瞳は蠱惑的(こわくてき)で男を(まど)わせそうな魅力(みりょく)がある。それにしても(しゃべ)り方が何処(どこ)となくサマエルさんに似ている。それとおっぱい大きい。()が低いのに。天使と言うよりは魔女っぽい黒基調(きちょう)のワンピースの(むね)部分がぱつんぱつんである。


「ありがと~聖女様! マジ助かって(ちょう)感謝だって! 愛してる!」

「わぷっ!? んむっ、んむむむむ……!?」


 ガバッと起きたハニエル様は、突然(とつぜん)()き付いてきたと思ったら私にキスの雨を降らせてきた!? ちょっと! こういうのって神に(そむ)行為(こうい)じゃないの!?


「なっ!? ちょっ、リーファちゃんから(はな)れんかい! この色ボケ天使が!」

「なぁによ~、アンタ(うらや)ましいの? しょ~がないな~」

「う、羨ましいとかやのうて……んむむ!?」


 ……私が解放(かいほう)されたと思ったら、今度はシャラにディープキスしてる。なんだこの天使。ホントに御前の天使なの? キャラ()いな……。


「その辺にしとけハニエル……。リーファ、さっきは『ニガヨモギ(ラーナー)』を止めてくれたようだな。(かさ)(がさ)ね、感謝しか無い」

「やはり、それでここまで飛んで来られたのですね」

「ああ、あれを止められるとしたらお前しか居ないだろうからな」


 まあ、そうでしょうね……。私の他に奇跡が使える人が居るなら()(かく)、居ないだろうし。


「で、メタトロン、状況どんな感じ? ウチらの兵は?」


 放心(ほうしん)しているシャラを放置(ほうち)して、ハニエル様は普通に話へ()()んできた。シャラ、可哀想(かわいそう)に。


「俺たちを(のぞ)いて全滅(ぜんめつ)だ。(すで)にあれから二日以上()っていて、二度、星は落とされている。一度目は落ちたが、二度目はリーファが消し飛ばしてくれた。()を考えると、再度落とすのに二日(ほど)()かると見て良いな」

「マジで? 聖女(すご)いじゃん! しっかし全滅かぁ~。だから周辺国(しゅうへんこく)になんて配慮(はいりょ)せずに派兵(はへい)しろって言ったじゃん」


 ぶーぶーと文句(もんく)()れるハニエル様。メタトロン様は苦々(にがにが)しい表情で「返す言葉が()ぇな」と項垂(うなだ)れている。


「あの、メタトロン様。何故(なぜ)、敵はそれほどまでに数が多いのでしょうか? 如何(いか)な天使とて、堕天(だてん)するリスクを(かか)えてまで世界を(ほろ)ぼす等という事に賛同(さんどう)などしないと思うのですが」


 私は、先程シャラと二人で考えていたことを問うてみた。一体クシエルは何をもってあそこまで多くの兵を(ひき)いることが出来(でき)ているのか。


「ああ、それか……。うちの恥部(ちぶ)を話すようで(はばか)られるんだがな……」

「恥部、ですか……?」


 え、まさか……?


「実は俺も気になって、ハニエルを抱えて潜伏(せんぷく)中に、一人敵の兵を尋問(じんもん)してみたんだよ」


 メタトロン様は追手(おって)能天使(パワーズ)を逆に()らえ、何故(なにゆえ)に『聖別されし者(マシアハ)』を(うば)おうとしているのかを聞いた、らしい。


(やつ)らは、神国の改革(かいかく)、それと領土(りょうど)拡大(かくだい)の為に行動していた。世界を滅亡(めつぼう)させるなんてハッタリだったのさ」

「……(まぎ)れもなく、(よく)に従って動いていたということ、ですか?」


 信じられない。天使たちはそんな事をすれば堕天すると分かっている(はず)なのに。


 だが、そんな考えを持っている天使が堕天しない現状(げんじょう)を見て、神に何かが起こっていることに彼らも気付(きづ)いたのだろう。それからは抑圧(よくあつ)された欲望(よくぼう)が解放され、神国、いや、神への反逆(はんぎゃく)が起こっているという訳か。


「その通りだ。俺たち御前の天使が事実上国を率いているのが面白(おもしろ)くない、たかが一二枚の(つばさ)を持って生まれただけで上に立つということが面白くない、そんな神国の()り方は間違(まちが)っている、とな」

「……そんなことで、他国に『ニガヨモギ』を落とし、大勢の人を死なせたというのですか」

「そうなるな。カマエルも真実(しんじつ)を知らなかったということは、(おど)らされていただけなんだろう。奴等(やつら)は『聖別されし者』を持つことで、神国を()()った後に他国への圧力とするつもりと見える。何故奴等が堕天していないのかは分かっていないがな」


 ……なるほど。話は分かった。


 つまりもう、容赦(ようしゃ)などする必要は無いということなんだな。


「二人とも、お話中悪いんだけどさー」

「なんだ、ハニエル」

「たぶん天使の集団が、こっちに向かって来てる」


 私とメタトロン様が、ハニエル様の指さす方向(ほうこう)視線(しせん)を向ける。……あ、シャラも復活(ふっかつ)してる。


 見れば東北東の方向からは、南からの光を()びてキラキラと(かがや)金色(こんじき)の集団が、こちらを目指(めざ)して飛んで来ていた。まだサンダルフォン様が派兵した隊が(とど)いている筈が無い。となれば、あれは間違い無く敵、だろう。


「……メタトロン様、ハニエル様、シャラ、初撃(しょげき)は私に(まか)せてください」


 私はそう三人へ()げると、長杖(ちょうじょう)を強く(にぎ)()め、遠き反逆の天使たちを(にら)みつけた。


「リーファ、顔が(こわ)いぞ」

「……乙女に向かって、(いささ)(ひど)い言い方ではありませんか? メタトロン様」


 失礼な事を(おっしゃ)るメタトロン様に向かって、目を細めながらそう(こた)える。御前の天使の筆頭(ひっとう)は、少し顔を引き()らせていた。


 人や亜人(あじん)を殺したことはある。盗賊(とうぞく)山賊(さんぞく)相手だったけど、その時は不思議(ふしぎ)と特別な感情は()かなかった。私はもしかすると、そういう人間なのかも知れない。



 でも、それならば都合(つごう)が良い。


 これからする事は、天使の大量虐殺(ぎゃくさつ)なのだから。



 私はそんな事を思いながら、ゆっくりと長杖の先を大群(たいぐん)へと向けた。


◆ひとことふたこと


堕天しないが故に抑圧から解放された天使が神に背いていた、それが真実でした。

タガが外れるとこんなもんです。


ブチ切れリーファちゃん再び。

今度は本当に怖いぞ!


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] >こういうのって神に背そむく行為こういじゃないの 200年くらい前は「治療」してたしねぇ
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