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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一七六話「放たれたのは創世の光、そして私は何かを思い出す」

「リーファちゃん、あれってまさか……」


 シャラの言葉も固い。


「うん、『ニガヨモギ(ラーナー)』だ。あれが落ちたら……」


 そう、あのままあれが落ちたら、シュパン村は地図から消えて無くなるだろう。クシエルが『聖別されし者(マシアハ)』で二発目を(はな)ったのだ。


「『ニガヨモギ』……?」


 (こと)重大(じゅうだい)さに一人だけ気付(きづ)いていないベートさんは、空から落ちる(みょう)な名前の物体に首を(かし)げていた。どうやら彼女はあれを知らないらしい。


「……天上に()かぶ星の一種(いっしゅ)で、あれが落ちた場所は猛毒(もうどく)(おか)されます。水も、大地も」

「なんですって!? ……まさか、先日の大地震(だいじしん)は……」

「はい、ここより南の山を()えた土地に、あれが落ちました」


 ベートさんはすぐに大地震との相関(そうかん)に気付いたようだ。(かん)(するど)いお(かた)だ。


「でも、今回は落とさせません」


 私はそう言って、(はる)か北にある物体へと長杖(ちょうじょう)を向けた。初回は落とされてしまったけれども、このまま(だま)って見ているつもりはない。


 ここで大きな奇跡を使ったらクシエル側に居場所(いばしょ)がバレてしまう可能性(かのうせい)があるけど、(かま)うものか。


「主よ、創造(そうぞう)の光であるべきはじめの姿(すがた)へと()(もど)(たま)え! 〈光あれ(イェヒー・オール)〉!」


 奇跡の術式(じゅつしき)展開(てんかい)されると(とも)に、私の長杖の先から(まばゆ)い光が放たれる。その光は放射状(ほうしゃじょう)に広がり、空からシュパン村を目指(めざ)そうとしていた『ニガヨモギ』を(つつ)()む。


 創世(そうせい)の光が放たれていたのは一〇秒(ほど)だっただろうか。光が(おさ)まった後には、何も残っては居なかった。どうやら成功したようだ。


「ふぅ……、はぁ……」

「リーファちゃん、大丈夫(だいじょうぶ)なん?」

「う、うん、ちょっと(つか)れただけ……」


 心配(しんぱい)そうなシャラを安心させる(ため)、私はにっこりと微笑(ほほえ)みを返した。〈メギドの丘(ハルマゲドン)〉以上に強力な奇跡だったから、かなり消耗(しょうもう)してしまった。神の純粋(じゅんすい)神気(しんき)結構(けっこう)取り込んでしまったかも知れない。また身体が神に近づいてしまったかなぁ。


「あんな巨大な物体を、消し()るなんて……」

「消し去る……と言いますか、光の当たった場所を(しゅ)(つく)(たも)うた元の姿へと(もど)したんです」

「何にせよ、規格外(きかくがい)の力ね……。なるほど、神の奇跡、か……」


 ベートさんは再び目の前で起きた信じられない光景(こうけい)に、呆然(ぼうぜん)(つぶや)いているだけだった。私としてもここまで規格外の力を使ったのは初めてです。


「けど、これでクシエルやシャムシエルさんたちに居場所が知られたかも知れんなぁ」


 そう言ってシャラは、(こま)ったように遠くの空を見回(みまわ)している。(おそ)らくクシエルは東北東の方向に、シャムシエルたちは西北西の方向に()り、光が放たれた場所についても把握(はあく)しているだろう。ここは(はら)(くく)り、双方(そうほう)対応するしか無いか。


「シャムシエルたちは説得(せっとく)するとして、クシエル側の兵が来た時、どうするかな」

「まあ、戦うしか無いやろうな。けど、なんであっちの下っ()天使は世界を(ほろ)ぼすなんて無茶(むちゃ)な命令に(したが)っとるんやろうな?」

「……そこが何とか出来(でき)れば、逆転(ぎゃくてん)のチャンスはあるかもね…………ん?」


 何か視線(しせん)を感じると思ったら、ベートさんが私たちを(にら)んでいた。()いてきぼりにしてしまってゴメンナサイ。


「そろそろ、何が起きているのか教えてくれない?」

「……そうやな。リーファちゃん、ベートさんにも教えといた方がええやろ」

「そうだね……えーと……」


 私とシャラは、一部の天使たちが世界を滅ぼそうとしていること、そしてあの『ニガヨモギ』はその為に落とされていること(など)を話した。全部が全部話すとなると時間が()かるので、()()まんで。


 話を聞き終わったベートさんは、眉間(みけん)(しわ)()せて考え込んでいた。話の内容を理解(りかい)したようだけど、納得(なっとく)はしていない様子(ようす)だ。


「天使が……世界を滅ぼす……? だとしたら、主は何故(なぜ)それを放置(ほうち)しているの……?」

「……それもそうですね。それに、明らかに神に(そむ)く行動であるのに、彼らは(いま)だに()ちてはいない」


 ……もしかすると、我等(われら)が主には、手を(くだ)せない理由があるのか?



 ――(なんじ)がその役目(やくめ)を終えぬ(かぎ)りは、我も引き続き力を貸すことであろう――



「うっ……?」


 記憶(きおく)に無い(はず)の何者かの声を思い出し、頭痛に(ひざ)をついてしまった。


 今の声は一体何なんだろう。でも、何処(どこ)かで聞いたような気もする。一体何処で――


「なんや、どないしたんやリーファちゃん? 大丈夫なんか? さっきの奇跡のせいなんか?」

「へ、平気、ちょっと眩暈(めまい)がしただけ……」


 そう、おろおろと心配するシャラに作り笑いを返した時には、(すで)にその声が何を(かた)っていたのかを忘れてしまっていた。


 一体、何を言われたんだっけ――


◆ひとことふたこと


「光あれ」は世界創造における、神の初めの言葉ですね。

この言葉で文字通り、世界に光が生まれたのです。

それまでは闇しか無かったんだそうな。


大事な言葉を思い出しかけたリーファちゃんですが、また忘れてしまいました。

リーファちゃんの役目とは、一体?


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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