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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一七三話「ミミズ駆除も聖女の役目……なの?」

「リーファちゃん、防御(ぼうぎょ)交代(こうたい)出来(でき)る?」

「いや……私の防壁(ぼうへき)じゃあ……(かじ)られたら(こわ)れるかも……」


 (いく)神気(しんき)無尽蔵(むじんぞう)とは言え、シャラのように見事(みごと)な防壁を()れる自信は無い。となれば……


「……奇跡で攻撃するしか、無いかな」


 攻撃魔術は下手(へた)っぴで、攻撃神術(しんじゅつ)もこの巨体に()くものは持ち合わせていない。であればもう、奇跡を使うしか無いんだろう。


「……大丈夫(だいじょうぶ)なん? 使いすぎると……」

「平気。それにここは出し()しみする所じゃないと思ってるし」


 魔術防壁を維持(いじ)しながら心配(しんぱい)してくれるシャラにそう返すと、私は()(けっ)して右手で長杖(ちょうじょう)(かま)え、()ずは左の巨大蚯蚓(ジャイアントワーム)へともう片方の手を(かざ)した。相変(あいか)わらず蚯蚓(みみず)たちはがじがじと防壁を囓り続けている。本能のままに私たちを目指(めざ)しているのだろう。


 すぅっ、と小さく息を()い、久々(ひさびさ)に使う奇跡の準備(じゅんび)をする。……大丈夫、問題無く使える(はず)だ。


「……主よ、私に悪を()(ほろ)ぼす聖者(せいじゃ)(やり)(あた)(たま)え、〈竜殺しの槍(アスカロン)〉!」


 翳した私の左手から生まれた光の槍が、左の巨大蚯蚓の口の中へ吸い込まれる。そしてそのまま口腔(こうこう)内から外へ貫通(かんつう)し、天井に()い付けた。


「って、あんま効いてないように見えるなぁ……」

「……そうだね……」


 巨大蚯蚓は天井に縫い付けられたまま、ジタバタと元気に尻尾(しっぽ)(?)をばたつかせている。あの様子(ようす)だとすぐに槍が()け……あ、抜けた。


 そして再び魔術防壁を囓りに()かる。()り出しに(もど)ってしまった。


「……仕方(しかた)ない。洞窟(どうくつ)内ではあまり使いたく無かったんだけど……」

「え、なんやその不穏(ふおん)物言(ものい)いは」


 シャラが不安そうだけど、もうこの手しか無い。


 私は水筒(すいとう)を取り出し、口を開けた。


「シャラ、しっかり防壁を維持しててね! ――主よ、冒涜(ぼうとく)せし者を永久(とわ)業火(ごうか)で焼き(はら)い給え、〈神の炎(ウリエル)〉!」


 かつて空から『(けもの)』を迎撃(げいげき)した巨大な炎の玉が、巨大蚯蚓二匹の胴体(どうたい)(?)あたりに生まれる。そして蚯蚓たちに着いた炎は、あっという間にその全身へと(めぐ)り――


「あ、あちゃ、あっちゃっちゃ!」


 猛烈(もうれつ)な熱に悲鳴(ひめい)を上げるシャラ。でも防壁を()(わけ)にもいかないので、頑張(がんば)って()しい。


「シャラ、もうちょっと()えて! 『水の精霊(せいれい)ウンディーネよ、私たちと炎の間に(かべ)を作って!』」


 精霊語でそう呼びかけた直後、水筒から飛び出した水が(まく)となり、私たちを炎から守るようにしっかりと張られた。良かった、呼びかけに(こた)えてくれたようだ。


「あ、熱かった……。リーファちゃん、それ精霊魔術なん? そんなのも使えたんや?」

「うん、一応ね。水の精霊とは仲が良いんだ」


 私が涙目のシャラにそう答えると、水の精霊ウンディーネは手乗(ての)りサイズの女の子の形を取り、「ねー」と私に向かって微笑(ほほえ)んだ。小さい頃から、水とだけは相性(あいしょう)が良いのである。


「むぅ、なんかジェラシーや……」

「精霊相手に嫉妬(しっと)しないでよ……って、シャラも精霊だけどさ……」


 まあ、シャラは所謂(いわゆる)上位精霊だから、下位精霊のウンディーネとはそもそも()り方が(ちが)うのだけど。普通に精霊語以外話せるし。


「っと、巨大蚯蚓も流石(さすが)息絶(いきた)えたかな?」


 見れば燃え(さか)っていた巨体は、あっという間に炎で(ちぢ)んでしまったらしい。残ったのは黒焦(くろこ)げの何かだった。流石に神炎(しんえん)はよく燃える。


「さて、蚯蚓の死体がある所は酸欠(さんけつ)になるから通らない方が良いね。もうホールの真ん中は安全だろうし、そこを通って行こうか。『ウンディーネ、ありがとう。また助けてくれると(うれ)しいな』」


 精霊語で再びウンディーネに呼びかけると、小さな水の精霊は「またね」と手を振ってから水筒に戻っていった。


「……後でその水を飲むんやと思うと、なんや微妙(びみょう)な気持ちになるんやけど……」

大抵(たいてい)の水には精霊が宿(やど)ってるよ?」

「いや、そら知っとるんやけどな……。まあええわ……」


 なんかもにょっているシャラ。言いたいことは分かるけどね。というかシャラは自身が精霊なのに他の精霊とあまり(かか)わってないのかな? 勿体(もったい)ない。


 炎で空気が悪くなっているので、あまりこの場に(とど)まっているのは(よろ)しくない。早々(そうそう)に私たちはその場所を(はな)れ、巨大蚯蚓の住処(すみか)だった場所を()っ切っていくことにした。


◆ひとことふたことみこと


益虫と呼ばれるミミズですが、花壇などでは厄介者と思われるようで。

そしてここまで巨大だったら害虫でしか無いでしょう、はい。


リーファちゃん、久々に奇跡を行使!

ここからは主人公らしくガンガン活躍していきますよ!


ここに来て初めて登場の精霊魔術。

ですが実は過去話で水の精霊について触れているところがあります。何処でしょうね?


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 糞が害になるミミズもいるしね あと氷期が終わるまでミミズが居なかった森でも害虫
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