表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
172/184

第一七二話「シャラと二人で洞窟探検と洒落込みますか」

「着いたぞ。ここから先は、我等(われら)滅多(めった)に足を()み入れん領域(りょういき)じゃ」


 居住(きょじゅう)区域(くいき)防衛(ぼうえい)(ため)(つく)ったのか、目の前には大きな鉄の門と見張(みは)りの地竜(ドラゴス)が二頭。見張りたちはペル殿下(でんか)突然(とつぜん)訪問(ほうもん)に、(あわ)てた様子(ようす)()いつくばるように(こうべ)()れた。竜人(りゅうじん)姿(すがた)だと敬礼(けいれい)に当たるんだろうか。


「地図ですと、この(あた)りですね……。まだまだ先は長そうです」


 私はシャラにも見えるように地図を広げながら、自分たちの居る場所を指で(しめ)した。一応見張りさんが居るので聖女モード。


途中(とちゅう)はいきなり(せま)くなったり、容易(ようい)には登れない段差(だんさ)があったり、(さき)地震(じしん)崩落(ほうらく)した部分があるかも知れんし、その所為(せい)で地図に()っていないような魔物が出るかも知れんが、まあ頑張(がんば)るのじゃ」

「…………はい」


 本当に、他の手段は無かったのだろうかとも思ったけど、まあでも、仕方(しかた)有るまい。


「それでは殿下も、どうぞご無事(ぶじ)で」

「殿下、行ってきます、お土産(みやげ)()うてくるわー」

「うむ、十分に気を付けるのじゃぞ。――開門(かいもん)!」


 殿下の一声で、見張りの地竜たちが仕掛(しか)けを動かして門を開け(はな)った。(おく)は何てことは無く今までの洞窟(どうくつ)が続いているように見えるものの、気を引き()めて行かねばなるまい。


 私たちが平穏(へいおん)から不穏(ふおん)境界(きょうかい)を通り()ぎると、再び門は閉じられた。これで、後戻(あともど)りは出来(でき)ない。


「さて、じゃあ行こうかシャラ。二人旅は二回目だね」

「そうやな。まあ、もううちはリーファちゃんから(はな)れられんようになってもうたから、(いく)らでも二人きりになれるんやけどな」


 そう言ってきゃあきゃあと(よろこ)んでいるシャラ。……まあ、本人がそれで良いなら良いんだけど。




 魔道具(まどうぐ)(あか)りを(たよ)りに(しばら)く道なりに進んで行くと分かれ道。これは地図上に存在(そんざい)しているので、示された道の方へ進む。殿下の(おっしゃ)っていたように、地震による崩落で道が変わっている可能性もあるし、慎重(しんちょう)に進まないと奈落(ならく)へ落ちたりする可能性もある。気を付けねば。


 シャラはいきなり魔物に(おそ)われたりしないよう、(となり)で魔力探知(たんち)をしながら歩いている。前後左右だけでなく、巨大蚯蚓(ジャンアントワーム)(など)は上下から襲い掛かってくる可能性もある為、(つね)四方八方(しほうはっぽう)へ気を(くば)らねばならない。非常に(つか)れる迷宮だね、ここは。


「リーファちゃん、前方から何か来とる。小さい反応やから、巨大蚯蚓では無さそうやけど……」

「私が神術(しんじゅつ)防壁(ぼうへき)()るから、シャラが攻撃をお願い」

了解(りょうかい)や!」


 私は攻撃魔術が下手(へた)っぴなので防御(ぼうぎょ)(てっ)した方が良い。シャラが魔術防壁を張って私が神術で攻撃するという手もあるけど、どうせならお(たが)いの得意(とくい)分野(ぶんや)()かした方が良いしね。


 やがて魔物らしき影が見えてきた。大顎(おおあご)を持つ白い大型の甲殻類(こうかくるい)である。この顎に(はさ)まれたらたぶん身体が()(ぷた)つになるなぁ。


聖霊(せいれい)よ、何人(なんぴと)たりとも通さぬ守りをここに、〈聖壁(ディバイン)〉!」


 丁寧(ていねい)()み出された神術防壁は私の膨大(ぼうだい)神気(しんき)によって鋼鉄(こうてつ)の守りと化し、魔物の大顎を(なん)なく(はじ)いている。よしよし、(ひさ)しぶりの戦いだったけど問題無さそう。


「そら、上から下から挟み込んでまえ! 〈圧殺(プレッシャー)〉!」


 射程(しゃてい)範囲(はんい)が短いのだろう。しっかりと防壁境界まで近づいたシャラの高等攻撃魔術が発動(はつどう)する。(かた)そうな魔物が段々(だんだん)と上からひしゃげていき、そして最後には押し(つぶ)されてしまった。こわっ!


「なかなか(こわ)い魔術を持ってるね……。と言うか、シャラの魔力って、何処(どこ)から出てるの?」

「うん? ()(しろ)からやで?」

「……私じゃん」


 道理(どうり)で魔力が身体から出て行く感覚(かんかく)があると思ったよ。そりゃ自身だけで実体(じったい)(たも)てない精霊(せいれい)なんだし当然(とうぜん)だった。


「それにしても、ここには魔物が出没(しゅつぼつ)するって書いて無いんだけど……、やっぱり、地震で棲息域(せいそくいき)が変わっちゃったのかなぁ」

「その可能性はあるなー。慎重にいこか」

「そうだね」


 地震で一部が崩落したり穴が()いたりして、魔物たちが住処(すみか)を追われているのかも知れない。となれば、この地図を信頼(しんらい)()ぎるのも良くないだろう。


 (しばら)く似たような魔物たちを退(しりぞ)けていくと、地図上にも存在する広いホールに出た。


「えーっと、このホールは()()ぐ進んでしまうと巨大蚯蚓の住処に出ちゃうみたい。右側の(かべ)沿()いに進め、とあるね」


 地竜ならば()(かく)、人間と精霊という矮小(わいしょう)な存在が巨大蚯蚓を相手取るのは(いささ)(つら)い。ここは地図のコメントに(したが)って回避(かいひ)すべきだろうね。


「……でもリーファちゃん。右側の壁沿いなんやけど、足元崩落しとるで」

「………………」


 ホントだ、崩落してる。思わず絶句(ぜっく)してしまった。たぶん落ちたら奈落ってヤツだ。


「うちは〈飛行(フライト)〉で飛べるけど、リーファちゃんはもう(おぼ)えた?」

「う、ううん。まだ覚えてない」

「なんでや……、前に覚えてへんかったから(こま)ったやろ……」


 うぅ、(あき)れられてしまった。私の得意分野は防御系や付与(ふよ)系の魔術だけど、そればっかり()ばしているといざという時に困る羽目(はめ)になる(わけ)だなぁ、今みたいに。


「仕方ない、左の壁沿いは穴が空いていないみたいだし、そっちを進む?」

「そっちは地図に書かれとるんか?」

「ううん。でも巨大蚯蚓はちょっと勘弁(かんべん)だよねぇ」

「せやなぁ……まぁ、少々博打(ばくち)になるけど、しゃあないか」


 二人(そろ)って溜息(ためいき)()き、左側に手を付くようにして壁沿いを進む。


 すると、(ほど)なくして壁は右側へカーブを(えが)き、そして再び直線の壁が続いていく。感覚頼りになるけれども、(おそ)らく今右側の方に巨大蚯蚓の住処がある(はず)だ。


「……上手く回避出来たのかな?」


 進みながら安堵(あんど)していたその時、いきなり背後(はいご)のシャラから(かた)(つか)まれ、思いっきり引っ()られた。


「きゃっ――」


 と、(おどろ)(ひま)も無い。


 目の前を右側から左へ、大きな何かが通り過ぎる。左側の壁は難なく()(やぶ)られ、轟音(ごうおん)が鳴り(ひび)く。


「うちらを守れ! 〈広域護陣(エリアシェル)〉!」


 シャラの機転(きてん)により展開(てんかい)された魔術防壁が私たちを(つつ)み込む。その直後、通り過ぎたと思われた筈の何かがゾロゾロと(きば)()えた大きな口を開けて防壁へと(かじ)りついた。が、シャラの魔術はビクともしない。流石(さすが)元女神、こんな化け物の攻撃も難なく(ふせ)ぐとは。


 しかし――


「……これ、巨大蚯蚓?」

「せやな……。しかも…………」


 名前の通り、身体の(はば)だけで私たちの身長と同じ(くらい)ある巨大な蚯蚓(みみず)


 其奴等(そいつら)は二匹で、シャラの魔術防壁に囓りついていたのだった。


◆ひとことふたこと


精霊になったとは言え魔術の知識は持ったままのシャラですので、リーファちゃんの膨大な魔力タンクで好き放題やれるようです。

攻撃魔術が得意なシャラと防御魔術が得意なリーファちゃん、良いコンビです。


ただでさえ相手をしたくない巨大蚯蚓が二匹。

果たして二人はこの中ボスを倒せるのでしょうか?


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ