第一七話「封印の封印による封印のための封印」
お風呂上がり、肉体的にも精神的にも疲れてしまったアンナがお昼寝に入ったところで、私、母さん、シャムシエルは、ようやくサマエルさんのお話を聞く機会を設け、リビングに集まっていたのだった。
「それで、サマエルさん。何故貴女があの遺跡に封印されていたのか、その理由を教えて貰えますか?」
「ほいほい、リーファちゃんたちは勝者だからね、構わないよー。とは言っても、教えられることなんてあんま無いんだけどさ」
お茶を啜りながら、サマエルさんは語り出す。
「封印の目的についてだけど……簡単に言うとね、アタシは封印されていたけれど、アタシも封印だったのさ」
「…………んん?」
全然簡単じゃないような……、意味が分からない。
私がもにょっていると、サマエルさんは上手い説明を考えているのか「んー」と天井を見つめた。
「ええと、サマエル様自身が別の何かを封印するための存在だった、ということですか?」
「あ、そうそう、それ」
シャムシエルが上手く噛み砕いてくれた。そういうことね。
……って、サマエルさん以上に危険な存在が封印されてたのに、それが解けたってことですか?
「あのー、それって割と深刻な事態ですよね? いったい何が封印されていたんですか?」
「んー、ごめんねリーファちゃん。それは分かんない。アタシが封印中探った時に分かったことは、アタシを含む五つの存在が何者かの封印に使われてたってことだけなんだ。他の地域に何が封印されているかについても分かんない」
「そうですか……」
あと四ヶ所封印があるのか。もし死霊の狙いがそれならば、そちらも狙ってくるんだろうな。もしかしたらもう破られている可能性だってある。しかし、随分スケールの大きな話になってきたものだ。
恐ろしい話だけれども、一介の魔術師にどうこう出来る話ではなさそうではある。けど――
「母さん、これって国に警告を入れた方が良い話だよね? 兵隊さんたちがサマエルさんの封印を守っていたってことは、封印の目的を知っているかも知れないし」
「それについては、たぶん向こうも今回封印が解けたことを知っているからいちいち伝える必要は無い筈よ。さっき駐留している兵のお偉いさんに事情は話しておいたから、今頃早馬が王都に向かっているんじゃないかしら」
「それ、下手したらアタシが再封印される流れになりそう……。ルシファーくんの所に逃げとこうかな……」
「一応サマエルさんの復活については伏せておいたけど、そのうち分かるわよねぇ」
ああ、そうか。一ヶ所封印が解けたことで大事になっているだろうしね。流石に国に報告が行くし、解けた封印の調査もされるか。
それにしてもまたルシファーくんの名前が出た。マブダチなんだろうか?
◆ひとこと
皆さん大好きルシファーくんは神が創りたもうた最初の天使です。
当然神の御前の天使だったワケで、サマエルの元同僚なのです。
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