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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一六九話「ならどうやって出ろと言うのですか」

 ラファエル様からお話を(うかが)った後、することも無いので再び(とこ)()き、(むか)えた翌朝(よくあさ)


 私はいつもの治療(ちりょう)を受けた後、広い洞窟(どうくつ)内を歩き回り、情報を集めていた。


「予想通り、クシエル(ひき)いる(きゅう)体制(たいせい)()の天使たちはこちらに向かっていて、メタトロン様は行方(ゆくえ)不明。ラファエル様が神都(しんと)に居る副司令(しれい)のサンダルフォン様に派兵(はへい)要請(ようせい)したけど、到着(とうちゃく)までは早くても一ヶ月は()かる、と……」


 いや、なんかこれ、絶望的(ぜつぼうてき)なんじゃないの? 領内(りょうない)の対空魔術機雷(きらい)も味方である天使が居るから起動出来(でき)ないみたいだし、エーデルブルート王国に他の対空戦力は無いしで()んでいるような気がしてならない。クシエルが落とした『ニガヨモギ(ラーナー)』のお(かげ)で王国も大混乱(こんらん)中らしいし、陛下(へいか)が頭痛に(なや)まされているお姿(すがた)が目に()かぶ。


「……っとと、ここから(おく)地竜(ちりゅう)族の住居区域(くいき)かな? ここから先は行かない方が良さそう」


 それにしても……歩き回っていて思ったけど、広いなこの洞窟。道幅(みちはば)が一五メートルはあるし、どこまで続いているか分からない。そりゃ地竜(ドラゴス)たちが()らしている所だし広くないと使えないんだろうけどさ。こんな洞窟がシュパン村からの移動圏内(けんない)にあったなんて知らなかったよ。


 この洞窟に地竜族全員とシュパン村の全員が(おさ)められているにも関わらず、まだまだ余裕(よゆう)があるように感じる。天井も非常に高いし、ここってもしやシェムハザたちが根城(ねじろ)にしていた神殿(しんでん)(かか)わりがあるのだろうか? そう思うと(くわ)しく調べたくなる気持ちが――


「おや、(ひま)そうじゃな聖女よ」

「……殿下(でんか)ほどではありませんよ?」


 私は背後(はいご)から掛けられた言葉に思考(しこう)を止め、()り向きながらそう返した。予想通りそこにはペル殿下とお付きの竜人(りゅうじん)、メイさんが居た。


相変(あいか)わらず(わらわ)には手厳(てきび)しいのう。別に(かま)わんがな」


 不敬(ふけい)な私の言葉にも余裕(よゆう)態度(たいど)で受け流す殿下。このお方、(きら)いという(わけ)では無いんだけどどうも苦手(にがて)だ。何もかもを見透(みす)かされているような気がして。


「して、おぬしはこれからどうするつもりじゃ?」

「どうする……とは? 見張(みは)りの方々には、私が外に出ないよう言い(わた)されているそうですが」


 私はその見張りに命令を出す権限(けんげん)を持つ目の前のお(かた)を軽く(にら)んだ。


「うむ、サマエルに(たの)まれたからな。ばっちり逃がすことの無いように(めい)じておる」


 ……サマエルさんに頼まれたなら、殿下にお(ねが)いした所で外に出して(もら)えるとは思えないなぁ。


「……それが分かっていて、どうするつもりとお聞きになるのは、(いささ)意地悪(いじわる)ではありませんか?」

「くっくっく、まぁな。じゃが、妾とて世界を(ほろ)ぼされるのは勘弁(かんべん)じゃからな。おぬしの奇跡の力で何とかして貰えると助かるのじゃが」


 …………え?


「ならば殿下は、私が洞窟の出口から外に出ることを見逃(みのが)して(いただ)けるのでしょうか?」

「いや、ならんな。サマエルとの約束(やくそく)じゃし」


 えぇ……。言ってること無茶苦茶(むちゃくちゃ)じゃないですかー。


「……でしたら、私に出来ることは無いのですが……」


 思わず(くちびる)(とが)らせる。期待(きたい)だけさせて落とすのがこの王女殿下の趣味(しゅみ)なのだろうか。


「まあ、そう(くさ)るな。(たし)かに、妾はおぬしがラウ山の洞窟の入口から出ないよう見張らせることをサマエルと約束した。が、外に出ること自体(じたい)を止めるようには言われておらん」

「…………まあ、(おっしゃ)っていることは分かるのですが……。結局、出られなければ一緒(いっしょ)ではないですか?」


 なんか頓知(とんち)のようなことを言われているけど、外に出られないのは同じだよね? それに外に出たところでシャムシエルたちに見つかったら(もど)されるだけだし。


 私が半目で睨んでいると、殿下はくるりと私から()を向け、そして振り返ることなく「覚悟(かくご)があるなら、夜に奥へ来い」とだけ言って、メイさんと一緒に()って行った。


「……奥……って、洞窟の奥?」


 先程回れ右した場所の奥の事……なんだろうな。そこに一体何があるというのか?


 でも――


「……行くしか、無いよね」


 そうだ。私は(みな)(すく)いたいのだから。


 覚悟なんてとうに出来ている。


◆ひとこと


最強のアドバイザーであるペル殿下の誘惑。

サマエルのお願いは彼女にとって絶対のようですが、果たして……?


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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