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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一六八話「また軟禁されてしまった」

「…………うぅ?」


 瞳を開けたが、(あた)りはぼんやりとした神術(しんじゅつ)らしき(あか)りに(つつ)まれている。誰かの気配(けはい)はするものの、今は何時だろう? それとなんか土臭(つちくさ)いというか。


「目が()めましたか?」

「……あれ、ラファエル様?」


 そうだ、あの時シャムシエルに気絶(きぜつ)させられて――


「えっ!? ここ何処(どこ)ですか!?」


 はっきり頭が覚醒(かくせい)し、自分が簡素(かんそ)なベッドに寝かされていること、そして左側が何故(なぜ)岩壁(いわかべ)であることに気付(きづ)いて声を上げた。が、ラファエル様は(だま)って口に指を当てる。


「今は夜です。(みな)さん寝静(ねしず)まっているので、静かにしてくださいねぇ」

「あ、はい……。で、何処なのですか? ここは」

「ここはラウ山にある洞窟(どうくつ)ですねぇ。地竜(ちりゅう)族の住処(すみか)にお邪魔(じゃま)させて(もら)っているのです。シュパン村の避難(ひなん)民を受け入れてくださったのですよ」

「地竜族が……」


 意外(いがい)だった。ペル殿下(でんか)もそのお父上であらせられるグラン陛下(へいか)も、人間のことには興味(きょうみ)無さそうなのに。それだけ今回の(けん)重大(じゅうだい)なのだろうけども。


「ちなみにぃ、リーファちゃんをここから出さないよう、見張(みは)りの地竜(ドラゴス)さんにはお(つた)えしてありますので~、外に出るのは(あきら)めてくださいねぇ」

「……そこまでしますか……」

(ほう)っておくと飛び出して行きそうなのですもの~」


 ……まあ、(すき)あらば出て行こうかとは思っていたけど。先回(さきまわ)りされていたか。


 仕方(しかた)ない、今は状況(じょうきょう)確認(かくにん)するだけにしておこうか。


「地竜族は今回の敵に応戦(おうせん)するつもりなのでしょうか?」

「それは勿論(もちろん)、するでしょうねぇ。ただ……」

「ただ?」


 ラファエル様は言葉を切って、小さく溜息(ためいき)()いた。何やら問題が有りそうな雰囲気(ふんいき)だ。


「……以前、ペル殿下がナビール王国に()らえられていたことはご存知(ぞんじ)でしょうか?」

「え? あ、はい。勿論です」


 その場に居て、ペル殿下の救出(きゅうしゅつ)作戦を実行したしねぇ。でもそれが何か関係あるのだろうか。


「実は、その時殿下を拘束(こうそく)していた魔術を、天使側が保持(ほじ)している可能性(かのうせい)があるとの事なのですよぉ。ですから応戦するにしても、その魔術を行使(こうし)されると地竜は拘束されてしまうのです」

「拘束……」


 そう言えばあの時、殿下は黒い魔術の(ひも)で拘束されていたような。あれを用いれば地竜王女でも身動(みうご)きが出来(でき)なくなってしまうというのか。


「……その魔術が、何故天使側、それも(きゅう)体制(たいせい)()に……」

「マスティマでしょうねぇ」


 あー、そこ(つな)がりか。使える技術だということでマスティマが流したのね。


「でも、旧体制派って魔術を(きら)っていたのではないのですか? サリエル様がそうだったように」

「……サリエル様の後継(こうけい)である智天使(ケルビム)クシエルは、そうでも無いのですよ~」


 クシエル? 初めて聞いた名前だけど……サリエル様の後継ということは、敵の首領(しゅりょう)、と考えて良いんだろうな。


「智天使クシエルは『懲罰(ちょうばつ)の天使』と呼ばれる七人の天使の一人です。災厄(さいやく)をもって天使や人類に罰を与える役目(やくめ)を持っているのですが……規律(ルール)を守らない天使には、上司(じょうし)である私たちであろうが炎の(むち)容赦(ようしゃ)ない罰を(あた)える頭のおかしい天使、とでも言えば(よろ)しいでしょうか~」


 あ、頭のおかしい天使、とか言っちゃったよ。ラファエル様をしてここまで言わしめるってことはよっぽどアレな天使なんだろうなぁ。


「智天使クシエルは規律に(きび)しいですが、逆に規律に反してさえいなければ使えるものは使う性格です。ですから魔術なども平気で使ってくるでしょうね~」

「なるほど……ところで、サマエルさんたちもここに居るんですか?」


 (おそ)らくはここに居るんだろうな。単騎(たんき)で飛び出そうとした私を気絶させてまで止めたのだから、少ない戦力で戦いに出ることもないだろうし。


能天使(パワーズ)シャムシエル、アザゼル様、シェムハザさんは交代(こうたい)交代で近くの見回りをしてくれていますね。サマエル様は……南へ向かいました」

「南……『ニガヨモギ』が落ちた所、ですか?」


 あの星が落ちた場所がどうなっているのか、現状確認をしに行ったのだろうか。しかしあの大爆発(ばくはつ)だし、生き残っている人たちは居ないだろう。


「それもあるのですが~、誰かを(むか)えに行く、と(おっしゃ)ってましたねぇ」


 南へ、誰かを、迎えに?


 一体、何をしに行ったんだ、サマエルさんは。


◆ひとことふたこと


よく軟禁も監禁もされるリーファちゃん。

重要人物だからね、仕方ないね。


クシエルは七人居る「懲罰の天使」と呼ばれる者たちの一人です。

(文書によっては五人だったりするようですが)

非常に厳格な性格をしており、規律を守らない者には容赦ない罰を与えるとか。

「懲罰の天使」はその役目からしばしば悪魔という扱いも受けるようで、はっきり「懲罰の天使とはデーモンだ」と記載されている文書もあったりするそうな。

名前の意味は「神の厳格な者」。そのまんまやんけ。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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