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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一六六話「幕間:古代兵器防衛戦」

※三人称視点です。

 ――シュパン村が大地震(だいじしん)見舞(みま)われる数刻(すうこく)前。


「おいお前ら! 右翼(うよく)側の防御(ぼうぎょ)が弱いぞ! ()()りやがれ!」


 御前(ごぜん)の天使の筆頭(ひっとう)であり、カナン神国(しんこく)の最高司令官(しれいかん)でもあるメタトロンは、自らゲーベル(ぬま)上空に押し()せる(きゅう)体制(たいせい)()軍勢(ぐんぜい)を押し(とど)める先陣(せんじん)()(むす)んでいた。彼の振るう大剣で、敵の能天使(パワーズ)たちが()()のように吹き飛ばされていく。


 しかしながら、敵は数で圧倒(あっとう)していた。二〇〇〇弱という大部隊(ぶたい)を用意しているにも(かか)わらず、敵はその三倍近くを用意して()()んできたのだ。如何(いか)にメタトロンのような強兵(きょうへい)が居たとしても、対応出来(でき)る数は(かぎ)られてしまうのである。


 おまけにメタトロン側部隊の一部は、『聖別されし者(マシアハ)』の破壊(はかい)活動を(おこな)っている(ため)事実(じじつ)上四倍近い兵力差で防衛(ぼうえい)をしている状況(じょうきょう)である。


「メタトロぉン、マジ無理だってばぁ! これ以上()えられないって!」

五月蠅(うるせ)ぇ耐えろハニエル! お前の愛の力はそんなものか!」

「愛の力にも限界(げんかい)があるのぉ!」


 同じく御前の天使であるハニエルが、今にも(こわ)れそうな神術(しんじゅつ)防壁(ぼうへき)展開(てんかい)しながら泣き(ごと)を上げるも、メタトロンに一蹴(いっしゅう)されてしまう。これが壊れた時、(みつ)(むら)がる(あり)のように旧体制側の天使たちが飛び込んでくるだろう。


「ハハハハハ! 良いザマだなメタトロン! 貴様(きさま)の手ぬるいやり方に反発する者がこれ(ほど)までに居る現実を受け入れろ!」


 炎を(まと)(むち)を持った髭面(ひげづら)智天使(ケルビム)が、煌々(こうこう)と光る赤い瞳をメタトロンに向け野太(のぶと)い声で高らかに笑う。旧体制側でサリエルの遺志(いし)()いだ者、懲罰(ちょうばつ)の天使クシエルである。


「クシエルてめぇ! やってることが謀反(むほん)だと分かってんのか!」

「謀反? いやいや、(すで)に貴様は過去の者だ。この力の差がそれを物語(ものがた)っているだろう?」

「よくもここまで木っ端天使(ども)を集めたもんだ! 何で()りやがった? あぁ?」


 ここまでの数の天使を纏め上げるというのは尋常(じんじょう)では無い。何かしら(うら)があるとメタトロンは踏んでいた。


 そんな(さけ)びには答える必要も無いという様子(ようす)で、クシエルは手近(てぢか)な能天使に「やれ」と命じる。能天使は(おの)()り上げ、神術防壁へ最後の一撃(いちげき)()ち込んだ。


「……駄目(だめ)ッ! もう壊れる!」

「おい、ハニエル――」


 (ひび)き渡る破砕音(はさいおん)(とも)に神術防壁が破壊され、一気に旧体制派の天使たちが雪崩(なだ)れ込み、メタトロンとハニエルは押し流されてしまった。




標的(ターゲット)確保(かくほ)しました!」


 古代神術の力により発見された古代兵器『聖別されし者』の前で敬礼(けいれい)する能天使兵に向かって、クシエルは満足(まんぞく)そうに(うなず)いた。(まわ)りで兵器の破壊活動を行っていた天使たちは既に圧倒的(あっとうてき)な兵力差に押し(つぶ)され、全滅(ぜんめつ)している。


 クシエル(ひき)いる旧体制派は、敵の首魁(しゅかい)であるメタトロンとその側近(そっきん)、ハニエルの行方(ゆくえ)を探していたが、(いま)だ見つかっていない。だが、クシエルにとってそんなことは既にどうでも良かったのだ。


「これが、『聖別されし者』か……」


 クシエルは目の前に置かれている、兵器と呼ぶには(いささ)不釣(ふつ)り合いな物体に拍子抜(ひょうしぬ)けしていた。


 何故(なぜ)ならそれはどう見てもただのみすぼらしい長杖(ちょうじょう)であり、誰が見たところでこれが古代兵器に見えようも無いだろう。クシエルでなくとも微妙(びみょう)な反応となるのもむべなるかな、ということである。


「誰か、手にしてみた者は居るか?」

「いえ!」

「ならば、貴様が持ってみろ」

「……はっ!」


 能天使兵は一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)ったものの、トップの命令に(さか)らえる(はず)も無い。すぐに敬礼を(くず)すと、長杖を手に取ってみた。


「……これは……」

「何か分かったか?」


 クシエルは二回りも小さな兵の顔を(のぞ)き込むように(たず)ねた。兵の顔はと言うと、感動に打ち(ふる)えている。


間違(まちが)い無く兵器であります! 『ニガヨモギ』を落とす兵器です!」

「……ほう!」


 これにはクシエルも相好(そうごう)を崩した。ただ星を落とす兵器では無く、それ以上のものを落とす力があるとは彼も思っていなかったのである。


「使い方についても、頭の中にイメージが流れ込んで来ました! ただ……先程まで破壊活動が行われていたようですので、少々動作(どうさ)(あや)しいようではありますが……」


(かま)わん。俺に貸せ」


 手短(てみじか)にそう言い(はな)つと、クシエルは兵の手から長杖をもぎ取った。


 そして脳内(のうない)にイメージが()いたのだろう、クシエルが長杖をてにしたままニヤリと不敵(ふてき)な笑みを()かべた。


「ふむ、確かに少し怪しい部分はあるが……、まあ、動作させてみないことには分からんな。手始(てはじ)めに……」


 クシエルはそう(つぶや)くと、西の地平(ちへい)、彼にとってサリエルの(かたき)である(にく)き聖女が居る方角(ほうがく)を見つめた。


()ずはあの聖女に一つ、プレゼントと洒落込(しゃれこ)むか」


◆ひとことふたことみこと


メタトロン様想定外の状況に大苦戦。

戦いは数だよ兄貴!


ちょこっと出たハニエルは慈愛の天使。

御前の天使の一人で、愛や美を司っています。

キューピッドと言えばこの天使なのだとか。

名前の意味は「神の栄光」。グロリアス!


敵の頭領であるクシエル登場。

コイツについては後述しますね~


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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