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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一六三話「そりゃ、侵略と思われても無理の無い話ですよね」

 数日後、村周辺(しゅうへん)警備(けいび)担当(たんとう)する部隊(ぶたい)がやって来た。今回の作戦行動ではエーデルブルート王国に大部隊が展開(てんかい)しているようで周辺諸国(しょこく)難色(なんしょく)(しめ)していたようだけれども、(こと)重大(じゅうだい)なだけに神国(しんこく)(かま)わず行動しているらしい。先のマスティマやサリエル様の独断(どくだん)行動で国の信用が失墜(しっつい)しているだけに、(まわ)りからの(あつ)も強そうだけど……。


 ちなみに(さら)に数日後にはメタトロン様までやって来た。このお方とも長いお付き合いとなっているけれども、シュパン村にいらっしゃるのは初めてだと言う。


 しかしながら、この作戦行動にエーデルブルート王国の中枢(ちゅうすう)はいい顔をしない(わけ)で……。


御前(ごぜん)の天使メタトロンよ、貴国(きこく)の行動は侵略(しんりゃく)(とら)えられても仕方(しかた)の無いことであるぞ」


 通信用魔道具(まどうぐ)の向こうから聞こえる国王陛下(へいか)の声が、いつもと打って変わって怒りを(はら)んだものとなっている。まあ、事前に聞いていたよりも多くの部隊を投入(とうにゅう)してきたのだからそれもその(はず)だよね。


 でも、メタトロン様……と言うより、神国は何故(なぜ)、私という人物を守る(ため)だけにここまで大部隊を寄越(よこ)したのだろう? 私を守ってくれるのは有難(ありがた)いんだけど、古代兵器を守る方が先決(せんけつ)なのでは?


(おっしゃ)ることは(もっと)もだ、ブルクハルト国王陛下。だが、強引(ごういん)にでも部隊を展開する理由があったのだ」


 非難(ひなん)されているにも(かか)わらず、メタトロン様は淡々(たんたん)とそう返している。ちなみに今リビングには私、母さん、シャムシエル、サマエルさん、アザゼル、メタトロン様、ラファエル様の七人が居る。(せま)いったら。(おも)にデカいメタトロン様の所為(せい)だけど。


「陛下、ゲーベル(ぬま)という場所を(おぼ)えておいでだろうか」

「……サタナキアの封印があった場所であり、『(けもの)』が復活(ふっかつ)した場所でもあるな」


 突然(とつぜん)()られた問い()けに、陛下は鼻白(はなじろ)んだ様子(ようす)だったけれどもお答えになった。また(なつ)かしい名前が出てきた。『獣』か。私が聖女になってから初めて片付(かたづ)けた大仕事だ。あの時も死にかけたんだよねぇ。


「そこの近くに、神国の最高機密(きみつ)である古代兵器も(ねむ)っている」

「……なんだと?」


 ……そういうことだったのか。あの封印の場所には他にそんなものがあったから、急ぎ大部隊をエーデルブルート王国まで寄越したのだ。


 メタトロン様は、その古代兵器が世界を(ほろ)ぼしかねない力を持っていること、それを使用せんとする一派(いっぱ)存在(そんざい)しており、行動に(うつ)していることを説明した。


「……なるほど、そういうことか」

「ああ、(おそ)らく、いや必ずウチの馬鹿(ども)はラッパを鳴らそうとそこへやって来る。貴国の軍でそれを(むか)()たせる訳にはいかん」


 カマエル以上の誰かが、軍勢(ぐんぜい)(ひき)いてやって来る。それをエーデルブルート軍が迎え撃てば、それは国と国との戦いになってしまうという訳か。


「御前の天使メタトロンよ。我が国にどの(くらい)の戦力を寄越した?」

「二〇〇〇程度(ていど)だ。その(うち)一部をシュパン村とリーファの警備に()て、残りはゲーベル沼に向かわせる。彼らの目的は古代兵器を破壊(はかい)することだが、同時にラッパを鳴らしに来た奴らを殲滅(せんめつ)する役割(やくわり)も持っているがな」

「……よかろう、我が国の五月蠅(うるさ)(やつ)らは()(だま)らせる。しかし、こちらからは周辺の防衛(ぼうえい)()(かく)として、迎撃(げいげき)には一兵(いっぺい)たりとも出さん。そのつもりで迎え撃って(もら)おう」


 自国に無断(むだん)侵入(しんにゅう)されている陛下にとっては最大の譲歩(じょうほ)なんだろうね。気持ちは分かる。


寛大(かんだい)なお心遣(こころづか)い、感謝(かんしゃ)する。作戦行動が終われば、リーファの護衛(ごえい)の一部以外は(すみ)やかに出国するつもりだ」


 ……あ、私の護衛は続けるのか。まあ、残党(ざんとう)が居るかも知れないもんね。


 しかし、何故『獣』の封印場所近くに古代兵器も眠っていたのか? 『獣』の封印された三〇〇〇年以上前はエーデルブルート王国の影も形も無かったし、神国が勝手に土地を使っていたというのは分かるのだけど、古代兵器と『獣』を一緒(いっしょ)に封印する意図(いと)が……?


「あの、お話中申し訳御座(ござ)いません、メタトロン様。今この場でお(うかが)いしたいことが御座います」

「む? 俺か?」


 そうだ、これについては陛下とメタトロン様が一堂(いちどう)(かい)している今聞いておきたい。


「もしや、古代兵器は『獣』へ対抗(たいこう)する為に、近くへ封印されたのではないですか?」

「……その通りだ。まぁ、ちょっと考えれば分かる話ではあるがな」


 やはりそうか。


「だとすれば、世界を滅ぼしかねない力は過分(かぶん)と思われますが、何故そのような兵器が出来てしまったのでしょう?」

「…………それは」


 答えづらそうにしているメタトロン様。


 でも、そこへ発言のために手を()げたのは意外(いがい)にも、サマエルさんだった。


「それはね、リーファちゃん。その兵器が『獣』に対抗するものじゃないからだよ」

「え?」

「サ、サマエル!」


 意外なところからの真実(しんじつ)(おどろ)いていると、メタトロン様が(あわ)ててそれを(さえぎ)ろうとしたけど、サマエルさんは「ちょっと(だま)ってなー」と御前の天使の筆頭(ひっとう)様を(にら)み付けた。そう言えばサマエルさんは元御前の天使でしたね、なら真実について知っている可能性がある訳か。


 というか、サマエルさんは『獣』の存在(そんざい)を知らなかったのに、古代兵器の存在は知っている。ということは、古代兵器が『獣』への対抗手段(しゅだん)として用意された訳ではないということが分かってしまうよね。


「あの兵器はね、『獣』が存在するより、アタシが封印されるよりも前に存在していた。何を目的に(つく)られたか? ――それはね、人類の滅亡なんかじゃない、人類の選別(せんべつ)だよ」


◆ひとことふたこと


相手は天使なので国境で阻める筈も無く、あれよあれよと王国に進入(侵入)されてしまったようです。

やはり航空戦力は正義。


古代兵器が創られた本当の目的については、次回にて!


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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