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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一六二話「彼らの目的は、想像していたよりもよっぽど危険なものだった」

 翌日(よくじつ)、いつものように治療(ちりょう)を終えた後、私はラファエル様から昨日の襲撃(しゅうげき)について詳細(しょうさい)(うかが)っていた。


能天使(パワーズ)カマエルから事情(じじょう)聴取(ちょうしゅ)はしておきましたよ~。大方(おおかた)の理由はリーファちゃんも聞いた通りに、リーファちゃんが『神を()した』と判断(はんだん)したことによる(きゅう)体制(たいせい)()暴走(ぼうそう)のようですねぇ」

「そうですか……。それにしても、よくすんなりと話して(もら)えましたね?」


 私が何とも言えぬ気分で(たず)ねると、ラファエル様は「そこはそれ、やり方はあるのですよぉ」と意味深(いみしん)な笑みを()かべた。……なんか、これ以上深くは聞かない方がいいような気がしたので、()()むことは()めておいた。


「大方の理由、ということは、それ以外の理由もあるのですね?」

「そうですね~。大方の理由とは(もう)しましたが、むしろ、わたくしとしてはそちらの方がメインでは無いかと考えますよ~」

「メイン、ですか」


 私が(おそ)われた理由として、『神を模した』以外のことがあるという事なのだろうか? と、なると……


「旧体制派にとって、リーファちゃんは邪魔(じゃま)なのですねぇ」

「……どういうことでしょう?」


 邪魔、というと、私の奇跡を行使(こうし)出来(でき)る力が邪魔、という意味なのだろうな。でも、天使たちにとっては別に関係の無い事なのではないだろうか?


 首を(ひね)る私に、ラファエル様はいつもののんびりした様子ではない、真剣(しんけん)な表情を向けた。


「リーファちゃん、カマエル()旧体制派の一部はラッパを鳴らそうとしているのです」

「……は? ラッパ?」


 真剣な口調(くちょう)で何が出てくるのかと思えば、ラッパ? どういう意味?


 意味を(はか)りかね困惑(こんわく)する私に、ラファエル様は言葉を続ける。


「……ここからお話しする内容は神国(しんこく)の最高機密(きみつ)となるのですが、神国においてラッパというのは、(はる)か昔に神国が(つく)り出した古代兵器を起動させる(かぎ)を意味しているのです」

「さ、最高機密……」


 直接(ちょくせつ)被害者(ひがいしゃ)とは言え、私がそれを知ってしまって良いのだろうか。それにしても、古代兵器?


「その古代兵器というのは、何を目的に創られたのですか?」


 神国の古代兵器という(くらい)なのだから、かなりの威力(いりょく)はあるのだろう。もしかすると、私ごとエーデルブルート王国を焦土(しょうど)()程度(ていど)のことくらいは出来るのかも知れない。そんなものを使って一体何を(たくら)んでいるのか。


「人類の滅亡(めつぼう)です」

「………………」


 思ったよりとんでもない内容に、私の(のう)一瞬(いっしゅん)活動を停止した。


 え? 人類の滅亡? 王国が(ほろ)ぶどころじゃないですね、それ。


「…………人類の、滅亡」

「はい、そうです。彼らは人類が楽園(エデン)に向かうことが唯一(ゆいいつ)救済(きゅうさい)だと考えているのです。それを(はば)める力を持つリーファちゃんは、邪魔だという訳ですね」


 ようやく言葉を(しぼ)り出した私に対して、淡々(たんたん)過激派(かげきは)意図(いと)を説明して(いただ)けるラファエル様。


 しかし……


「色々とお(うかが)いしたいことはありますが……何故(なぜ)このタイミングで、その、ラッパを鳴らそうとしているのでしょう? 楽園に向かうことが救済だとする一派(いっぱ)は、今までもそのような活動はしていなかったのでしょうか?」


 だって、ねえ? 古代兵器って言う位だから古代からあるんでしょ? だったら何故それを起動しようという動きが今突然高まっているのか。


 そう疑問(ぎもん)を口にすると、何やらラファエル様は言い(づら)そうに少し目を()せてしまった。


「それはですね……、先日、リーファちゃんが一度神の御許(みもと)へ送られたことと関連しているのです……」

「……ありましたね、そんなこと」


 私は『群体(レギオン)』との戦いで一度死んでいる。その時、(しゅ)御前(ごぜん)の天使ラグエル様に(たましい)を呼び(もど)す奇跡を(さず)けてくださったのだ。そのお(かげ)で私はまたこの世に()い戻ることが出来たのである。


 ……あ、もしかして……。


「……その一派は、私が魂を呼び戻す奇跡を行使出来るようになるのでは、と危惧(きぐ)しているのですね? 一度神の御許へ()された人を呼び戻せると、楽園に行けないから」

「はい、それがリーファちゃんを(ねら)う理由です。そして第二、第三のリーファちゃんが出ない内に、ラッパを鳴らそうとしている」

「それは……なんとも……。私はそんな奇跡は使えませんよ」

「彼らはそう思っていないのです……」


 (ほお)に手を当て、溜息(ためいき)()くラファエル様。思い込みで世界を(ほろ)ぼさないで()しいなぁ……。


「そういう(わけ)ですので、リーファちゃんとシュパン村には今後警備(けいび)が付きますよ。今回は神国も総力戦(そうりょくせん)になりますので、周辺(しゅうへん)諸国(しょこく)調整(ちょうせい)して、警備担当(たんとう)方々(かたがた)が向かっております」

「あ、もう来ているのですね……」

「はい。カマエルが向かっていることが分かった時には彼女の目的もほぼ(つか)んでおりましたので、先に手を打っておきました」


 なんとも根回(ねまわ)しの早いことだ。まあ、有難(ありがた)いんですけどね。


◆ひとことふたこと


ラッパと言えば、ヨハネの黙示録ですね。

御使いがラッパを吹き鳴らす度に災厄が起こり、合計七回のラッパが吹き鳴らされた時、世界に本当の終末が訪れ神に選ばれた者だけが生き残る、というのが黙示録の流れです。

途中ではアバドン(が起こす蝗害)も災厄の一つとして出てきます。まぁ、本作ではもう退場していますが。


総力戦、と言っていますが神国にとっては同盟国でもない他国の領内。

このままでは色々とマズいですよねぇ。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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