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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
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第一五三話「シェムハザ曰く、女の子同士の間に挟まることは七つの大罪の一つらしい」

 買った物を取り()えずリラさんに(あず)けて、私は一旦(いったん)雑貨屋(ざっかや)を出た。後は……鍛冶屋(かじや)さんで修理(しゅうり)に出していた包丁(ほうちょう)手鍋(てなべ)を受け取らないと。油はシャムシエルに(はこ)んで(もら)うけど、それ以外の荷物(にもつ)結構(けっこう)な量になるなぁ。


「……ん? アレ、何だ……?」


 何やら村の広場に人だかりが出来(でき)ている。行商(ぎょうしょう)でも来てるのかな? いや、でもケビンの行商が来るのはまだまだ先だった(はず)。だとしたら何だろう?


 私は野次馬(やじうま)っぽい人たちの一人に、この人だかりの正体(しょうたい)(たず)ねてみることにした。


「こんにちは。こちらは一体、何のお集まりですか?」

「おや、聖女様。何でも有名な天使様がいらっしゃったとかで、野次馬が集まってるんですよ」

「有名な……天使様……?」


 え、誰だ? 有名と言ったらメタトロン様とか? でもメタトロン様だったら身体がデカいので野次馬の向こう側でも見える筈。なら誰だ?


 ……というか、絶対うちに用事があって村を訪問(ほうもん)してるよね? それ以外にこの村を天使が(おとず)れる理由なんて無いだろうし。


 私は野次馬の合間(あいま)()うようにして、(くだん)の天使様がいらっしゃる所に辿(たど)り着いた。いやはや、(すご)い人数の野次馬だね。


「……と、おや、お目に()かった事の無い天使様ですね」


 野次馬たちの中央には、何やらお(ばあ)さんに治療(ちりょう)神術(しんじゅつ)(ほどこ)している、白衣(はくい)着込(きこ)んだ女性の天使様がいらっしゃった。(つばさ)の数は普通に二枚なので御前(ごぜん)の天使では無いかな? ピンクゴールドの髪は私と同じくふわふわで、外見(がいけん)は人間で言うと二〇代後半だろうか。実におっとりとした印象(いんしょう)(あた)えている。近くに居たら(なご)んでしまうような、そんなお(かた)だ。


「は~い、これでもう治りましたからねぇ? でもでもぉ、(しばら)安静(あんせい)にしてないとダメですよぉ?」


 天使様はぽんぽんと優しくお婆さんの背中(せなか)を叩き、にっこりと優しげな微笑(ほほえ)みを見せた。まるで聖母のような、慈愛(じあい)()ちたお顔である。


「あ、有難(ありがと)御座(ござ)います、ラファエル様!」


 え、ラファエル様? あの熾天使(セラフィム)の?


 御前の天使の七人(今は六人になってしまったけれど)を(のぞ)く九階級(かいきゅう)のうち、頂点に立つ熾天使の四人。


 この熾天使の皆様(みなさま)は、民衆(みんしゅう)にとっては御前の天使よりも馴染(なじ)(ぶか)存在(そんざい)で、話に聞く「アイドル」と言って良いような存在であり、かなりの知名度を(ほこ)っている。


 そんなアイドルのラファエル様が何故(なにゆえ)シュパン村にいらっしゃったのか? これはきちんとお話を(うかが)わねば――


「ふむ……白衣の下はノースリーブの縦縞(たてじま)セーターとタイトスカート、それにニーハイブーツですか。その上中身はおっとりお姉さんだとは。いやはやこれはやられましたな。流石(さすが)はラファエル様です。属性(ぞくせい)がこれでもかとばかりに()()まれている」

「そうですね……。ガブリエル様はボーイッシュでありながらそのギャップに()えるようなキャラクターですが、ラファエル様は(ちが)います。おっとりとした外見通りのお方なのです。また性格も天然でいらっしゃるのがポイントで、私も滅多(めった)に怒った所を見たことが無く、いざ怒った時でも『めっ、ですよ?』とほっぺを(つつ)くだけという……これがまた、破壊力(はかいりょく)があってですね……」

「………………」


 私の視覚(しかく)聴覚(ちょうかく)(まわ)りの野次馬など何するものぞと熱弁(ねつべん)()るうシェムハザとシャムシエルを知覚(ちかく)したような気がしたけど、幻覚(げんかく)だったことにしておこう。うん、きっとそうだ。


「お次の患者(かんじゃ)様はいらっしゃいませんかぁ? あ、本当に具合(ぐあい)の悪い方じゃないとダメですよ? おねーさんとお話ししたいからと言って(うそ)()くのは、めっ、ですからね?」


 ウィンクしながらそうのたまうラファエル様に、野次馬から「めってされたーい!」と歓声(かんせい)が上がった。なんだこれ、……なんだこれ。


「あ、あのう……ラファエル様?」

「まぁ、可愛(かわい)らしい女の子ですね。次は貴女(あなた)ですか? どうなさったのでしょう?」


 おずおずと手を()げて話しかけた私に、ラファエル様だけでなく野次馬たちの視線(しせん)も集中した。き、気まずい。「聖女様だ」「聖女様とラファエル様のツーショット……(とうと)い……」「俺、二人の間に()ざってきて良い?」など色んな声が聞こえてくる。ちなみに何があったのかは知らないけれども、最後の男性はシェムハザとシャムシエルに(うで)(つか)まれて何処(どこ)かへ連れて行かれた。……これも見なかったことにしよう。


「いえ、あの……わたくしは具合が悪い(わけ)では御座いませんが、ラファエル様にお伺いしたいことが御座います」

「まあ、何でしょう? ……お(じょう)さんは聖女と呼ばれていますが、もしかして……?」

「はい、(もう)(おく)れました、エーデルブルート王国の聖女が一人、リーファと申します。ラファエル様は、何用(なによう)でこちらにいらっしゃったのかをお伺いしても(よろ)しいでしょうか?」


 私がそう自己(じこ)紹介(しょうかい)(とも)に用件を伺うと、ラファエル様は「まあ、まあまあまあ!」と両手を合わせて感激(かんげき)してから、(にわか)に私の右手を両手で(にぎ)りしめた。


「これも神のお(みちび)きでしょう! 聖女リーファ、わたくしは貴女を探しておりましたのです! 貴女をお(すく)いする(ため)にここまで(まい)りました!」

「す、救いに、ですか……?」


 大袈裟(おおげさ)に感動しながら顔を近づけるラファエル様に、私は鼻白(はなじろ)んでそう聞き返すしか出来なかったのだった。


◆ひとことふたこと


シェムハザとシャムシエルが一緒になるとカオスになります()

女の子同士の間に挟まるのは大罪だからね、仕方ないね。


ラファエル、と言いますか、熾天使の四人はとてつもなく有名な存在ですよね。

ミカエル同様、世界中で親御さんからラファエルのお名前を貰っている方も多いと思います。

名前の意味は「神が癒したもの」で、それが示す通りに医療に長けた天使です。

そんな彼女ですが、リーファちゃんとどう関わっていくのでしょうか?


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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