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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第四章「聖女リーファ」
152/184

第一五二話「婚期とか言われても困る」

これより第四章になります!

本章もよろしくお願いいたします!

 秋も深まり、シュパン村の各家庭での冬支度(ふゆじたく)着々(ちゃくちゃく)と進んでいる。


 私も色々と(そろ)えるべく、リリが店番(みせばん)をしている雑貨屋(ざっかや)(おとず)れていた、んだけど……。


「うーん……、これなんて良いかも?」


 目の前のリリは、どういう訳なのか髪(かざ)りを手に取り、私の顔とを交互(こうご)に見(くら)べている。えーっと……?


「リ、リリ? 今日は冬に使う燃料(ねんりょう)とか、その他諸々(もろもろ)を買いに来たんだけど……」

「え、いいじゃない。リーファちゃんで着せ()えさせてよ、可愛(かわい)いんだから」


 そう言って「これかなー?」と店の売り物である暖色(だんしょく)系の髪飾りを(あさ)っている。またか。またなのか。


 ついこの間、「女性として生きていく覚悟(かくご)出来(でき)た」と私に打ち明けられたリリは、その時こそショックを受けた様子(ようす)だったけれど、「もう男に(もど)る気が無いならとことん可愛くさせてやる!」などと意味不明な供述(きょうじゅつ)をしており、休日は一緒(いっしょ)にベンカーの町で服を見たり、こうして自分の店の売り物を(あて)がったりしてくるのだ。いや、別に(いや)(わけ)じゃないんですけどね……。


「リーファちゃん、いつも同じワンピース着てるでしょ? (たま)にはお洒落(しゃれ)もすべきだと思うの」

「う、うーん、貴族じゃないんだから、そんなことにお金は……」

「国から褒賞金(ほうしょうきん)とか(もら)ってお金沢山(たくさん)持ってるの、知ってるよ? サマエルさんから聞いた」


 サ、サマエルさーん! 私のプライバシーを軽々しく話さないで!


「それに、ほら。素材(そざい)がすっっっっごく良いんだから、もうちょっと外見(がいけん)には気を(つか)わないと。リーファちゃんなら平民とは言え聖女なんだし貴族からでも引く手数多(あまた)だと思うけど、選択肢(せんたくし)は多い方がいいじゃない?」

「……まだ、結婚とか、全然考えてないんですけど……」


 そう(つぶや)いた私の顔を、リリは(あき)れた表情で見つめ、大袈裟(おおげさ)溜息(ためいき)()いて見せた。ちょっとその態度(たいど)、傷つくんだけど……。


「甘い、甘いよリーファちゃん。そんな事を言っていたら婚期(こんき)(のが)すんだよ。私たちは来年でもう一七歳だよ? この年なら結婚してる子だって普通に居るんだから」

「前にも言ったと思うけど、私、(ほとん)ど年を取らないんだけどなぁ……。リリもハーフエルフだから人間よりずっと長い間若い姿(すがた)じゃない……」


 そう、私は奇跡を行使(こうし)する時に神の純粋(じゅんすい)神気(しんき)を受けている(ため)、身体が聖霊(せいれい)に近づいており、もう殆ど年を取らなくなっているのだ。結婚するかは()(かく)として、婚期が何時(いつ)かと言われれば「ずっと」と答えられるだろう。


「リーファちゃん? それでもね、三〇歳にもなってみなよ。外見は若くてもその年齢だけで敬遠(けいえん)されるんだよ? 実際(じっさい)私のお母さんも結婚したのは五四歳の頃だけど、お父さん以外に(もら)い手が――」


 リリのお説教(せっきょう)は、ごん、という大きな音で(さえぎ)られた。彼女の背後(はいご)からこっそりと近づいていたリリのお母さん、リラさんの(こぶし)頭頂部(とうちょうぶ)炸裂(さくれつ)したのである。エルフなので細腕(ほそうで)だけど、滅茶苦茶(めちゃくちゃ)痛そうな音だったなぁ。頭を押さえて(うめ)くリリは、どうやら(しばら)復活(ふっかつ)しまい。


「全く、他にお客さんが居ないからってリーファちゃんにあたしの(はじ)(さら)してるんじゃないよ。ごめんねリーファちゃん、冬支度の買い物だろう?」


 リラさんはエルフらしく色白(いろじろ)細身(ほそみ)綺麗(きれい)(かた)だけど、性格はエルフとしては(めずら)しく(きも)っ玉母さんだ。いつもリリと弟のアデルが悪さをすると、容赦(ようしゃ)なく拳固(げんこ)が飛んでくる。


「あ、はい。おばさん、精製油(せいせいゆ)を五リットル(いただ)けますか?」

「おや、そんなに買っても、リーファちゃん一人で持って帰れるのかい?」

「いえ、後でシャムシエルに手伝(てつだ)って貰いますので」


 菜種(なたね)などから(しぼ)り出し()してある植物油は水より軽いけど、やはり五リットルともなればそれなりに重くなる。こういう時は鍛錬(たんれん)大好き脳筋(のうきん)天使に(たの)むのが一番だ。


「はいはい、じゃあお(だい)だけ頂くから取り()きしておくね」

「はい、お(ねが)いします。他にはですね――」


 その他の細々(こまごま)なものを選んでいる間も、リリは復活しなかった。リラさんの拳固、(おそ)るべし。


◆ひとことふたことみこと


吹っ切れてしまったリリは、どうやら唯一無二の親友としてリーファちゃんをいいとこのお嫁に出すつもりのようです(笑)


リーファちゃんは国に多大な貢献をしているので、城からの褒賞金で貯金の額がとんでもないことになっています。

普段は王都の銀行に預けている為キャッシュで持っている訳ではありませんが、総資産は半端な貴族では太刀打ち出来ないかも知れません。


植物油は圧搾で造られています。材料は菜種や胡麻など、オーソドックスなものです。

シュパン村の近辺には製油工場はありませんが、ディースブルクに大工場がありそこから届けられています。守った甲斐がありましたね。


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] リリちゃぁあんんん!! 吹っ切れちゃったのねww ん?いや、同じ長命同士で末永くイチャイチャできるし良いのかな?w
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