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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第一章「聖女はじめました」
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第一五話「僕は私であって私という私が居るから僕じゃなくて私らしい」

 取り()えずリリのことは頭から一時退避(たいひ)させておくことにして、僕は(となり)にちょこんと座る魔族の子のことを考えることにした。


「えっと、お名前、言えるかな?」


 まずコミュニケーションの基本として名前を(たず)ねることにする。ルピアってのはたぶんあの死霊(しりょう)の名前だろうし。


 ところが、少女は困ったように眉尻(まゆじり)を下げ、おろおろと所在(しょざい)なさげに母さんを見るだけだった。


「その子ね、記憶(きおく)が無いみたいなのよ。あの死霊が()いていた時のことも覚えていないみたい」

「……そうなんだ」


 あれだけ無茶に魔力を送り込んでいたのだ。後遺症(こういしょう)が残ってしまっても仕方がないだろう。


「そんな訳で、記憶が戻るまでその子には『アンナ』って名前を付けてあげようと思うの。私の故郷(こきょう)で女の子に使われる名前よ」

「うん、いいんじゃないかな」


 (うれ)しそうに両手を合わせる母さん。可愛らしい名前だし、母さんの名前にも似ている。僕も賛成だ。


 僕は背中を(かが)めてアンナと目線を合わせ、微笑(ほほえ)んで見せた。


「君は今日からアンナだよ。僕はリーファ、お兄ちゃんだと思って(もら)ってもいいよ、よろしくね」


 するとアンナは嬉しそうに……嬉しそうじゃないな、キョトンと僕の顔を見つめるだけで、反応が無い。


「おねえちゃんは、どうしてじぶんのこと『ぼく』とか『おにいちゃん』っていうの?」


 アンナの言葉で思い出した。そうだった! 今の僕、どっからどう見ても女の子じゃん!


「そうね、いい機会だし、リーファお姉ちゃんも『僕』から卒業したらいいんじゃないかしら?」


 え、何言ってるの母さん? 僕は僕であって、僕以外無い僕だよ?


「ほらほらー、妹の手本にならなきゃ、お姉ちゃん?」

「うぐっ!?」


 (くや)しいけどサマエルさんの言う通りだ。僕が兄として……じゃなくて、私が姉として妹の手本にならないといけないんだ……、そうだ、そうなんだ……。


「ご、ごめんね? そう、私はリーファ、アンナのお姉ちゃんと思ってくれていいからね?」


 あぁ……、なんか開いてはいけない扉を開いちゃったような気がするよ……。戻れるのかな、私……。


 背後でぶふぉっ、と()き出す音が聞こえた。サマエルさんしか居ないだろう。神の奇跡でもう一度封印してやろうかこの悪魔。


 アンナはじぃっと私を見つめていたけど、突然ぎゅうっとしがみつき、「おねえちゃん」と小さく(つぶや)いた。


「あらあら、アンナちゃんは、早速リーファちゃんに(なつ)いちゃったみたいねぇ」

「美しき姉妹愛ですね。素晴(すば)らしいです」

「はは……ははは…………」


 どんどん私が私でなくなっていく気がするよ……。


◆ひとこと


哲学的なタイトルですね()

ここからリーファくん改めリーファちゃんの一人称が変わります。合掌。


--


次回は本日23時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 僕っことかいるし別に一人称が私じゃなくて僕でも良くない?
2021/12/11 00:21 退会済み
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