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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一四四話「胸はまだ良いけどそこは触っちゃダメ!」

「……う、うぅ…………?」

「お、起きた。だいじょぶ? リーファちゃん」


 瞳を開けると、サマエルさんとメタトロン様が(のぞ)き込んでいた。


「はい……、(はな)れていたので、なんとか。皆様(みなさま)は……?」

「ああ、見た目よりは威力(いりょく)が無かったので全員大丈夫(だいじょうぶ)だったが……寝ている(ひま)は無いぞ、リーファ」

「え?」


 そう言ってメタトロン様が()(しめ)した場所には――


「……何ですか、あれは……?」


 見ればシャムシエルとアザゼルが、地上で(うごめ)く巨大な(かたまり)を相手に剣を()るっていた。それは肉塊(にくかい)と言って良いのだろうけれども、所々に人間や(けもの)の口が付いており、怨嗟(えんさ)の声を上げている。二人は肉塊から()びる触手(しょくしゅ)のようなものを(たく)みに()り飛ばしているが、次から次へと再生しているようで、キリが無いように見える。


「何ですかも何も、死霊(しりょう)の塊って言えばいいのかなー」

「死霊の……塊……」


 サマエルさんの説明で納得(なっとく)出来(でき)る人は居ないかも知れない。何がどうなって、あんなものが生まれたというのか。想像(そうぞう)が付かない。


(おそ)らくだが、アレは……サリエルが管理していた(たましい)の一部、だろうな。(やつ)(こま)として死霊を使っていたんだろう。魂を管理する天使だったからな。勿論(もちろん)違法(いほう)だが」

「……そういうことですか」


 そういえば、サリエル様はそういう役目(やくめ)(にな)っていたっけ。空席(くうせき)になってしまったけど、誰か()わりの天使は居るのだろうか……ということを今気にしていても仕方(しかた)ないな。


 それにしてもメタトロン様の言葉で死霊の出処(でどころ)は分かったけれども、何故(なぜ)あんな風に……?


「……あぁ、分かりました。()()を無くした死霊たちが、サリエル様の身体を一斉(いっせい)に乗っ取ったのですね」

推測(すいそく)するに、そうだろうな。実体化までしているのは、恐らくサリエルの身体が()えられなかったからだろう」


 なんと、まぁ。長い時代を生きた天使のなれの()てがコレだとは。(あわ)れという言葉で片付(かたづ)けるには(あま)りある悲劇(ひげき)である。


 シャムシエルとアザゼルは物理主体の剣士なので苦戦している様子(ようす)。ラグエル様は不死体(アンデッド)(ほろ)ぼす大神術(しんじゅつ)が使えると聞いているけれども、二人の援護(えんご)手一杯(ていっぱい)らしい。唯一(ゆいいつ)効果的(こうかてき)なダメージを(あた)えられていそうなのはザアフィエルさんの神術だろうか。それでも死霊の数が減っているようには見えない。


「すぐに、奇跡で死霊たちを昇天(しょうてん)させます。ある程度(ていど)近づく必要が御座(ござ)いますので、(もう)(わけ)ございませんが護衛(ごえい)(いただ)けますでしょうか」

「ああ、分かった。俺が地上でリーファの正面(しょうめん)を守るので、サマエルは上からサポートを(たの)む」

「はいな」


 話が早く、メタトロン様もサマエルさんも快諾(かいだく)してくれた。実体化した不死体の昇天だし、〈明けの明星(ルシファー)〉を使えば、神の御許(みもと)へ送り出す事が出来るだろう。




 メタトロン様の後ろを引っ付くようにして、死霊たち――『群体(レギオン)』とでも呼ぼうかな。口に出して名付けをすると力を与えるので言わないけれど――に近づいていく。西の丘で巨人の死霊たちを昇天させた作業を思い出すけれど、アレほど大変ではあるまい。


「もう少し近づくか?」

「はい、あと三メートルくらいでしょうか」

了解(りょうかい)。……っと、こちらに気付(きづ)いたか。触手が伸びてきた」


 メタトロン様は大剣を振るう為、私が背後(はいご)にぴったり付くと邪魔(じゃま)になってしまう。(ゆえ)に少し離れているんだけれども、そのお(かげ)でメタトロン様は触手の攻撃に(さら)されてしまっている。申し訳ない。


 しかし最強の天使はそんな事問題でも無いようで、まるで()()のように軽々と大剣を振り回して触手を斬り落としてゆく。上からはサマエルさんの弓の援護もあるので、取り(のが)して私の方へ攻撃が来ることも無かった。うーん、流石(さすが)


「この(あた)りで良いでしょう。詠唱(えいしょう)に入ります!」

「分かった、頼むぜリーファ」


 私はメタトロン様とサマエルさんに負担(ふたん)()けないよう、迅速(じんそく)に詠唱へと入った。


「主よ、迷える御霊(みたま)を正しき道へと(みちび)(たま)え! 〈明けの明星〉!」


 奇跡の術式(じゅつしき)発動(はつどう)し、『群体』が昇天を――


「あ……、え……?」


 もの(すご)(いきお)いで神気(しんき)(うば)われていく感覚(かんかく)に、思わず声を上げ、(ひざ)をつく。奇跡も中断(ちゅうだん)されてしまい、神の御許へ送り出せた死霊も、大した数では無かった。


「リーファちゃん! どうした!」

「わ、わかりません……異常(いじょう)なほどに神気を()われました……。ごめんなさい、もう一度――」

駄目(だめ)だって! 原因(さぐ)ってからじゃないと! 神気(から)っぽになっちゃうでしょ! ほら!」

「え……ひゃあ!」


 朦朧(もうろう)とした頭でもう一回詠唱に入ろうとした私をサマエルさんが(とど)めて……いきなり背後から(むね)鷲掴(わしづか)みにされ、私の目が一気に()めた。


「な、何をしているのですか!」

「ほら! 胸もちっちゃくなってる! 股間(こかん)だって――」

「わ、わーっ! (さわ)らなくていいです!」


 神気を使いすぎたからといって、そんなこと確かめなくていいですから!


「おいこら、俺たちに戦わせておいてイチャイチャしてるんじゃねぇ、一旦(いったん)全員で下がるぞ」


 メタトロン様に怒られました。ごめんなさい。


◆ひとことふたこと


なんてエロいサブタイなんだ()


レギオンは新約聖書に登場する、ある男に憑いていた「悪霊たち」です。

その数や二〇〇〇。最後にはその魂は別々に豚へ乗り移らされて全員入水自殺します。レミングか。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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