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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一四三話「七対一、負ける筈の無い戦いだけど……」

 メタトロン様を先頭に、私たち四人はサマエルさんの()った結界(けっかい)内部へと進入した。サリエル様の猛攻(もうこう)がアザゼルを(おそ)っているけれども、機械鎌(アームドサイズ)(やいば)一向(いっこう)(とど)かない。反面(はんめん)、ラグエル様の神術(しんじゅつ)による攻撃が、徐々(じょじょ)に死の天使へ命中してきているのが分かる。


「よう、サリエル。(ふる)き考えを捨てられずにいよいよ俺たちを裏切(うらぎ)った結果がこのザマだ。何か(もう)し開きはあるか?」

「……(だま)れ、成り上がりのメタトロン! 筆頭(ひっとう)という地位に居るとは言え、御前(ごぜん)では新入りのお前が知ったような口を聞くな!」


 余裕(よゆう)のメタトロン様を親の(かたき)のように(にら)み付け、サリエル様は()えた。あ、メタトロン様の方が後輩(こうはい)なんですね。だからベリアルも「成り上がりのメタトロン」って言ってたのか。


「先も後も関係無ぇよ。お前は神国(しんこく)の重要なルールを(おか)したんだ。(つみ)(つぐな)ってもらうぞ?」

(くだ)らん! 神のお考えは今も昔も変わらぬというのに、勝手な解釈(かいしゃく)で天使と人間以外の存在(そんざい)(ゆる)すその考えこそが神に(そむ)傲慢(ごうまん)だと、何故(なぜ)分からんのだ! ……ぐっ!」


 メタトロン様との会話中にも、アザゼルと打ち合うサリエル様の身体に次々と神術の(やり)(かす)めていく。最早(もはや)勝敗は(けっ)したのだろうけれども、油断(ゆだん)は出来ないな。あの(かま)(たましい)()ると聞いている。まともに受けたら神の御許(みもと)()されることは確実(かくじつ)だろう。


「傲慢は貴様(きさま)だ、サリエル。ならば何故悪魔であるマスティマを使っていたんだ。言っていることが支離滅裂(しりめつれつ)だとは思わないのか?」

大局(たいきょく)のために悪魔を利用することの何が悪い! そこな聖女と呼ばれている女は、神の権威(けんい)(おびや)かす危険分子だぞ? 事が大きくなる前に()()んでおかねばならんのだ!」


 あ、私? マスティマが私を(ねら)っていたのはそういうこともあったのか。てっきり聖女の無尽蔵(むじんぞう)な魔力で私とアザゼルに復讐(ふくしゅう)するつもりだけだったのかと。


 メタトロン様は会話が平行線(へいこうせん)辿(たど)っていることに落胆(らくたん)しているのか、一度(かた)(すく)めてから大剣を(かま)える。シャラとベリアルの時は見られなかった、神国最強の天使と呼ばれるメタトロン様の本気が見られるかも知れない。


「その程度(ていど)で神の権威が落ちるか。寝言(ねごと)は後から聞いてやるから大人しく(なわ)につけ、サリエル。……アザゼル、(かま)わん。(うで)の一本や二本(うば)っても問題ないから本気で行くぞ」

承知(しょうち)した」


 クールな堕天使(だてんし)は先程までただサリエル様の大鎌(おおがま)を受けるだけだったけど、メタトロン様へ短く返事をした後、猛烈(もうれつ)(いきお)いでサーベルの()きを(はな)ち始めた。け、剣が見えない。


 そしてメタトロン様はというと……あの巨大な身体を信じられないスピードで動かし、サリエル様の鎌を大剣で受けるのではなく、(かわ)していく。はっきり言って目の前の光景(こうけい)異次元(いじげん)()ぎて付いていけない。


「おいザアフィエル! シャムシエル! リーファ! ぼーっとしてんじゃねぇ! 援護(えんご)しろ!」


 はっ、そうだった。


 私たち三人は御前の天使筆頭の命令に(したが)い、各々(おのおの)動き出す。ザアフィエルさんが神術の詠唱(えいしょう)に入り、シャムシエルは〈隠された剣(クォデネンツ)〉を()(はな)ってサリエル様の方へと向かう。


 私は……そもそも空中で戦っている人たちに近接(きんせつ)参戦(さんせん)することは出来(でき)ないし、それほど広くも無いこの空間ででっかい奇跡を使うと他のみんなを()()みかねないので、神術を使うことにした。攻撃魔術は苦手(にがて)ですし、はい。


「聖霊よ、異端(いたん)なる存在を――」


 と、〈光槍(ジャベリン)〉の詠唱に入った時だった。


 なんとサリエル様から私の方へと、高速の機械鎌が飛来(ひらい)してきた。(あわ)てて身を守る奇跡の方へと切り()える。


「主よ、許しを()う者に慈悲(じひ)(あた)(たま)え! 〈(ハコテル)〉!」


 奇跡によって(つく)り出された見えない(かべ)が、間一髪(かんいっぱつ)、飛来した機械鎌を(はじ)き飛ばす。まさか、自分の獲物を投擲(とうてき)してまで私を狙ってくるなどとは思いもよらなかったけど、ま、間に合って良かった……。


 そして、武器を失ったサリエル様は――


「……ぅ…………」


 見上げると、サリエル様の左(むね)にシャムシエルの魔剣(まけん)深々(ふかぶか)と突き()さっており、彼は(かす)かに(うめ)き声を上げるだけだった。


 そして何か言葉を(つむ)ごうと口が動いたけれども、結局(けっきょく)、言葉にならずにサリエル様の身体は脱力(だつりょく)してしまった。絶命(ぜつめい)したのだろう。


「……申し(わけ)ございません、メタトロン様。捕縛(ほばく)()りませんでした」

「殺してしまったか、まぁ、仕方(しかた)あるまい。それでもよくやった、シャムシ――」


 メタトロン様の言葉がシャムシエルに(ねぎら)いの言葉を()けようとした、その瞬間(しゅんかん)


 突如(とつじょ)サリエル様の身体から生まれた猛烈な爆風(ばくふう)が、結界内に居る全員を吹き飛ばし、私の意識(いしき)も暗い(どろ)(そこ)へと落ちて行った。


◆ひとことふたこと


実際メタトロンは成り上がりで、なんと元は人間です。

彼が人間から最も尊き天使の一人となるまでを記したのが、エノク書なのです。

ちなみに人間時代の名前はエノク、読み方を変えればイーノック。

そんな装備で大丈夫か?


サリエルの最後っ屁。

しかしこれで最後な筈はありませんよね!


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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