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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一四〇話「タイムリミットも近いので、攻めに出ることにした」

 この迎賓館(げいひんかん)滞在(たいざい)するようになって、もう結構(けっこう)な日数が()った。けれども(いま)だマスティマは見つかっていないらしく、夕食でご一緒(いっしょ)した(さい)のメタトロン様とラグエル様からは(あせ)りのようなものが見え(かく)れしていた。


「マスティマはかなり慎重(しんちょう)に事を(はこ)んでいるようでな、ラグエルが位置(いち)を特定した後に俺とサリエルが現場へ向かっても、気取(けど)られているのかすぐに逃げられてしまう」


 夜、私の部屋へ定期連絡に来て(いただ)いているメタトロン様が、しょんぼりとしょげているラグエル様を横目にそう説明してくれた。お二人ともかなり(つか)れていらっしゃるご様子(ようす)


 何かお手伝(てつだ)いが出来(でき)れば良いのだけれども、私には生憎(あいにく)とご飯を作ってあげることくらいしか出来ないのがもどかしい。


「そうなのですね……。何か、神気(しんき)感知(かんち)するような仕組(しく)みでも(そな)えているのかも知れませんね」

「どうだろうな? サマエルとアザゼルが向かっても同じように逃げられてしまうからな。何か別の問題があるのかも知れん」


 あ、サマエルさんとアザゼルも駄目(だめ)なのか。となると、何だろうなぁ。


「……そう言えば、サリエル様は今日も単独(たんどく)で行動を?」


「ああ、あいつには遊撃(ゆうげき)(もっと)(てき)しているからな。サマエルほどじゃないが、空を移動する時の速度は神国(しんこく)でもトップクラスなんだよ」


 へぇー、そういうタイプだったのか。というか、サマエルさんの(すご)さが(あらた)めて分かる一言だな。色々とぶっとんだスペックだよね、あのお姉さん。


「まぁ、いい加減(かげん)そろそろ俺たちも神国に(もど)らないとならん(わけ)だが、マスティマの放置も出来ない。そこで俺は良い作戦を思いついてな」

「良い作戦……ですか」


 御前(ごぜん)の天使たちがこの地を(おとず)れてから、結構(けっこう)な時間が経っているし、自国へと戻る必要が出てくるのも当然だ。こんな状況(じょうきょう)一石(いっせき)(とう)じる(あん)とは――


「リーファが(おとり)となり、マスティマをおびき出して(もら)う」


 ……え?


 それ、大丈夫(だいじょうぶ)なんでしょうか? だって万が一憑依(ひょうい)されて乗っ取られたら、無尽蔵(むじんぞう)な魔力を使われてしまい手に()えなくなるんじゃ?


 私がそういった心配を顔に出していると、メタトロン様は不敵(ふてき)に笑って見せた。


「なぁに、心配するな。絶対にお前が憑依されないような(さく)がある。というのも――」


 メタトロン様は、その計画についてを説明してくれた。


「……なるほど、それならば私が憑依されることはありませんが……(みな)さんに危険があるのでは?」

「そんなことは今更(いまさら)だ。今はマスティマを消滅(しょうめつ)させ、リーファが自由に動けるようになるために最優先(さいゆうせん)で行動しなけりゃならん。そのためにも、この作戦は絶対に成功させなければ、な」


 ま、そうですよね。今は聖女である私が(ふう)じられているも同然(どうぜん)状態(じょうたい)だ。もしかしたらマスティマにとっては、奇跡を行使(こうし)出来る「(いつわ)りの聖女」が身動(みうご)き出来ないこの状況こそが望んだ姿(すがた)なのかも知れないし。


「何か、私に出来ることはありませんか?」

「まあ、そうだな……ならば、一つだけ言っておこう。この作戦は、俺とラグエル以外には口外(こうがい)しないで()しい」

「メタトロン様と、ラグエル様以外には? サリエル様については?」

「サリエルにも話すな。敵を(あざむ)くにはまず味方から、だ」


 なんと。まあ、サリエル様がこの部屋はおろか迎賓館を訪れたのは初日だけなので、話すタイミングすら無いんですけど。


「そんな訳だから、もう少しの辛抱(しんぼう)だ、リーファ。待っていてくれ」

「……はい、よろしくお願いいたします」


 私は(むね)一抹(いちまつ)の不安を(かか)えつつも、メタトロン様とラグエル様を信じ、作戦の日を()つことにしたのだった。


◆ひとこと


長い間メタトロンは神国を離れていますが、現在は代理で弟のサンダルフォンがすべての執務を担当しています。

兄を超える巨漢のサンダルフォンですが、実は書類仕事が一番得意なので、神国の政務は滞り無く進んでいるとか。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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