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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一三一話「こちらには敵が予想していない新たな要素があったのだ」

※リーファちゃんの視点に戻ります。

「どうやら、風が(おさ)まってきたようですね」


 耳を(ふさ)いでいたにも(かか)わらず、サマエルさんの合図(あいず)である〈閃光弾(フォイアーヴェルク)〉はそれでも頭の中に大きな音を(ひび)かせた。アレを間近(まぢか)でまともに()いてしまったナビール軍では、鼓膜(こまく)(やぶ)れた人が居てもおかしくないんじゃないかな……。


 時間にして一分も()っていなかったであろう、突如(とつじょ)発生した(あらし)偶然(ぐうぜん)産物(さんぶつ)では無い。これは暴風(ぼうふう)(あやつる)る天使ザアフィエルさんが、大神術(しんじゅつ)で起こしたものである。


 私はナビール軍の通告(つうこく)(したが)ってナビール軍の伝令(でんれい)さんの後ろからサマエルさんとアザゼルを()れてついて行ったのだけれども、大人しく(つか)まるつもりなんて毛頭(もうとう)無かった(わけ)で。きちんと王女様を奪還(だっかん)するための作戦を展開(てんかい)していたのでした。


「リーファちゃん、任務(にんむ)達成(たっせい)したよん」

「サマエルさん、お(つか)れ様でした。その子を連れて後方(こうほう)へ下がってください。私とアザゼルは作戦の次の段階(だんかい)に入ります」

「あいあいさー」


 得意気(とくいげ)な顔で私とアザゼルの元へ飛んで(もど)ってきたサマエルさんは、気を失っている竜人(りゅうじん)の少女を(かか)えていた。どうやら地竜(ドラゴス)の王女ペル殿下(でんか)無事(ぶじ)(すく)い出せたご様子(ようす)



 サマエルさん、というか、私たちがどうやって地竜の王女様を救い出したのか、作戦はこうだった。


 まず出来(でき)るだけ人質まで近づけるように、大人しくナビール軍の言うことを聴いた()りをして伝令さんの後ろについて行った。


 そのタイミングで、ザアフィエルさんに広範囲(こうはんい)の嵐を起こして(もら)い、砂埃(すなぼこり)で彼らの視界(しかい)(うば)ったのだ。


 暴風の中でも普通に飛べるサマエルさんが敵陣(てきじん)の中央へ一気に近づき、敵将(てきしょう)落馬(らくば)……じゃなくて落竜(らくりゅう)させ、人質(ひとじち)救出(きゅうしゅつ)したというわけだ。その後は〈閃光弾〉でザアフィエルさんに合図を出し、風を止めて(もら)った、と。



「ふむ、人質が居なくなったことに気付(きづ)いてマスティマが怒り(くる)っているようだな」


 うん、少し距離(きょり)があるものの、アザゼルじゃなくても見える。何やら(わめ)いている声は聞こえないけど。


「さて、次も上手くいけば良いが」

「そうですね……。では、作戦通りに(まい)りますか」


 アザゼルと二人で呑気(のんき)にそんなことをのたまってから、私は再び彼にお姫様()っこされた。……この格好(かっこう)不本意(ふほんい)だけれども、詠唱(えいしょう)のタイミングで息が上がっている訳にもいかないので仕方(しかた)ない。


「では、行くぞ」


 短い言葉と(とも)に、アザゼルは私を抱えたまま敵から方向転換(てんかん)して自軍へと()けだした。アザゼルは後ろを向いているため見えないだろうけど、抱えられている私は彼の後方が見える。アザゼルと私を逃がすまいと(あわ)てて両翼(りょうよく)から地竜を()竜騎士(りゅうきし)(ふく)騎兵(きへい)たちが出てきたところが。


「アザゼル、一〇秒後に下ろしてください。そこで詠唱を始めます」

承知(しょうち)した」


 このままの速度であれば、三〇秒くらいでアザゼルは追いつかれるだろう、たぶん。


 だがそもそも、アザゼルは飛べる。敵側は飛べないので、逃げるのであれば私を抱えたまま飛べばいいだけだ。


 つまりこれは逃走ではない。()りなのだ。


「……今です、下ろしてください」


 走り続けてきっかり一〇秒後にそう()げられ、急停止したアザゼルはその場に私を下ろしてくれた。私は急いで敵側に向き直り、長杖(ちょうじょう)(かま)える。


 見た感じ、順調(じゅんちょう)に敵の両翼から地竜八頭を含めた騎兵たちが集まってきている。ここで使う奇跡は勿論(もちろん)、アレだ。


「主よ、(あわ)れな贖罪(しょくざい)山羊(やぎ)(すく)(たま)え――〈祝福があるように(ベネディクトゥス)〉!」


 少し範囲を広げた解呪(かいじゅ)の奇跡が、隷属(れいぞく)(のろ)いを受けた地竜たちを(つつ)()んだ。地竜たちは強制的(きょうせいてき)契約(けいやく)()がされる時の苦痛(くつう)(あば)れ、騎乗(きじょう)している騎兵たちを振り落としていく。


 そうして前線での仕事を終えた私たちは、残りの戦いを一旦(いったん)兵士さんたちに(まか)せることにして、後方へ下がる事にしたのだった。


◆ひとことふたことみこと


〈閃光弾〉はサマエルが独自に編み出した魔術、いわゆるフラッシュボムという奴です。

砂埃であまり見えませんでしたが、光も発していました。


鶴翼の陣は中央に突撃した敵を包囲出来るという利点がある訳ですが、ザアフィエルはそれを逆手に取って、逆にリーファちゃんが地竜を迎撃する作戦を立案したのです。

ナビール軍は思いっきり釣られクマー。


すっかりアザゼルとのコンビに慣れてしまったリーファちゃん。

嫁だな(笑)


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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