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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一二七話「アザゼル、お仕置き確定ね」

「つまり、リーファちゃんはこの拠点(きょてん)待機(たいき)、ってこと?」


 ()し肉をがじがじ(かじ)りながら、サマエルさんが私に(たず)ねる。戦場だしおやつも食べられないのでストレスになっているのだ。私も早く帰りたい。


「はい。そしてわたくしがこの(おか)に居ることは、公式な発表としてナビール王国に(つた)えられるそうです」

「なるほど、()()か」


 その言葉は使わないようにしていたのに、アザゼルがぶっちゃけてしまった。まぁその通りなんだけど……。


本音(ほんね)はどうだろうと、ナビール王国の宣戦(せんせん)布告(ふこく)理由はリーファちゃんに起因(きいん)しているからね。あちらさんとしてはこの情報を無視(むし)して他を()める(わけ)にもいかないし、作戦としては上々(じょうじょう)なんじゃない? 問題があるとすると……ここに敵の戦力が集中して激戦(げきせん)区になる(おそ)れがあるってことかな」

「そうなのですよね……」


 あれよあれよと最前線でお仕事をすることになってしまったなぁ。どうしてこうなった。……いや、私が(のぞ)んで異動(いどう)したんだけど……。


「ダダさん、ナビール王国に(したが)わされている地竜(ドラゴス)はどの程度(ていど)居そうですか?」


 私はすっかり打ち()けた地竜のオスにそう尋ねてみた。もしかしたらそれで今後の展開(てんかい)が分かるかも知れない。


「ドノクライ同胞(ドウホウ)ガ利用サレテイルノカハ、俺ニモ分カラン。タダ、我()ガ同胞タチハ幼子(オサナゴ)マデ(フク)メレバ一〇〇程度ハ居ル(ハズ)ダ」

「ひゃ、一〇〇ですか……」


 うええ、それを全部奇跡で解放(かいほう)するとかやりたくないんだけど……。何時(いつ)になったら終わるのか先が見えないよう。




 さて、丘の第一回防衛(ぼうえい)戦から(はや)二〇日後の夕方。私は大型テントの中でサマエルさんと二人、お風呂(ふろ)()わりに身体を()いていた。


「家の温泉が恋しい……」

「言わないでよリーファちゃん……。余計(よけい)に恋しくなっちゃうじゃん……」


 私の(つぶや)きに、サマエルさんが口を(とが)らせてそう文句(もんく)()れる。戦場の兵士というのはこうして心が(すさ)んでいくものなのだなぁ。


「なんかテントの外が(さわ)がしいね」

「え? あ、ホントだ」


 狩人(かりゅうど)であるサマエルさんのように耳が良い訳ではない私でも、外で何やら悶着(もんちゃく)していることに気付(きづ)いた。これは……アザゼルの声?


「聖女リーファとサマエルは居るか?」

「い、いけません、アザゼル様!」


 え、ちょ、外の女性兵士さんの制止(せいし)()り切ってアザゼルが飛び()んできたんですけど!


「ひゃあああああ!」

「お、いい悲鳴だねぇリーファちゃん」


 (あわ)てて身体を(かく)す私と、堂々(どうどう)としながらケラケラ笑うサマエルさん……ってちょっと、それどころじゃ無いでしょ! 私たち(はだか)なんだから!


「で、アザゼル。乙女が裸でイチャイチャしているところに()ぜて(もら)いに来たん? シャムシエルが聞いたら()()()()ねられるよ?」


 い、イチャイチャしてた訳じゃないんですけど……。というか何故(なにゆえ)にそこでシャムシエル?


「す、すまん二人とも! だが緊急(きんきゅう)連絡(れんらく)だったのだ!」

「だったら外のフィーネさんに(つた)えればいいでしょう! 早く出て行ってください! (いかずち)を落としますよ!」


 そう(わめ)くと、アザゼルは慌てて外に退散(たいさん)して行った。ま、まったく、後でデリカシーという言葉を一〇〇回清書して貰おうかな……。


「それにしてもリーファちゃん、男に裸を見られて悲鳴を上げるなんて、内面(ないめん)の女性化も進んじゃってるんじゃないの?」

「う、うぅ……、否定(ひてい)できない……」


 精神と肉体とは基本的に切り(はな)せないものだからなぁ。女性の身体に精神が引っ()られ始めているのかも知れない……。


「聖女様、サマエル様、失礼いたします。……まったく、アザゼル様にも(こま)ったものですね。不埒(ふらち)にも程があります」


 テントの外で見張(みは)っていた女性兵士のフィーネさんが、まだテントの(そば)に居るであろうアザゼルの方を(にら)みつけながら入ってきた。不埒、かぁ。元々男性でありながら女性として()らしている身としては耳が痛い。


「あの、フィーネさん……。アザゼルは何と言っていましたか?」


 アザゼルも制止を振り切って飛び込むくらいだから、相当(そうとう)緊急の用事だったのだろう。まぁ許可(きょか)無く女性のテントに入ってきたのはお仕置(しお)き確定だけど。


「『アイマー村の敵兵が進軍を始めた。見える(かぎ)りでその数は五〇〇、地竜は一〇頭以上』……とのことです」


 ……なるほど、確かに緊急の用事だった。平手(ひらて)は一回で(ゆる)してあげるか。


◆ひとことふたこと


いわゆるラッキースケベ。

ただし主人公がされる側という(笑)


サマエルが語っている通り、リーファちゃんは内面が女の子に近づいてしまっているようですね。

まあ外面を女の子として一年を過ごしているのでそれも原因の一つなのでしょう。


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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[良い点] 内面の女性化……いいぞもっと進め!
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