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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一二五話「だって地竜がかわいそうなんだもん」

 結界(けっかい)内で地竜(ドラゴス)たちを(したが)えていた竜騎士(りゅうきし)(ふく)む敵兵をテオドールさんが直々(じきじき)(ひき)いる第一隊で(とら)えた後、私たちは地竜たちと(とも)(おか)の方へと下がった。「地竜を()れて陣地(じんち)へ下がるのは危険ではないのか?」という意見もあったけれども、あのままの状態(じょうたい)でサマエルさんの結界が()かれると私たちは敵の()只中(ただなか)になってしまうし、地竜たちにとって私は「(かみなり)を落とす(こわ)(やつ)」というイメージになっているようなので、まぁ大丈夫(だいじょうぶ)でしょう。


「地竜を大人しくさせ、敵兵も捕えられたとは……。感服(かんぷく)いたしました、聖女様」

「いえ、万事(ばんじ)上手く行き良かったです。わたくしはこのまま地竜たちにお話しを(うかが)おうと思いますが……」

「なるほど、承知(しょうち)しました。私は残った敵に対しての指揮(しき)があります(ゆえ)、何かありましたら伝令(でんれい)寄越(よこ)してください」


 テオドールさんはそう言って近くの兵士さんに呼びかけた後、副官(ふくかん)さんを連れて前線へと(もど)って行ってしまった。呼びかけられた兵士さんは残っているので、この人を伝令として寄越せという事なんだろう。


「さて、ダダさんと(おっしゃ)いましたか? わたくしの名前はリーファです。色々とお話を伺いたいのですが、(よろ)しいですか?」

「アア、分カッタ。俺ニ分カル事ナラ答エヨウ」


 三頭のリーダーらしきダダくんに問いかけると、契約(けいやく)を解いてあげたお(かげ)(わり)好意的(こういてき)な答えが返ってきた。俺……ってことはオスなのかな? いや、まぁいいんだけど。


 何故(なぜ)地竜たちがナビール王国に従わされているのかダダくんにお話を伺ってみると、ナビールが色々と人道に反したことをやらかしていることが分かった。


「つまり、元々ナビール王国には不干渉(ふかんしょう)だった貴方(あなた)がたの王のご息女(そくじょ)が、ナビール軍に人質(ひとじち)……ならぬ竜質(りゅうじち)として(とら)われている、ということですか?」

「ソウダ、誘拐(ユウカイ)サレタペル様ノ身ヲ(アン)ズルナラバ、忠実(チュウジツ)(シモベ)トナルヨウ魔術ヲ(ホドコ)サレタノダ」

「そうですか……」


 私が古竜(こりゅう)語を知らない他のみんなに通訳(つうやく)をしてあげると、サマエルさんとアザゼルが何とも言えない表情で同時に溜息(ためいき)()いた。


「そりゃー……何というか、やってることが下衆(げす)だねぇ、ナビール軍」

「まさに悪魔の所業(しょぎょう)、だな」


 こういった下衆の(おこな)いを昔は「悪魔の所業」などと言ったのだけれども、悪魔本人に言われてしまうナビール軍よ。ちなみにこの言葉、今は悪魔に対する差別語なのでエーデルブルート王国ではあまり使われていない。今の話には関係無いけど。


「聖女リーファ、今そのペルという地竜の王女が何時(いつ)囚われたのかなど(いく)つか(たず)ねて(もら)っても良いか?」

「はい、分かりました」


 アザゼルはダダくんが分かる情報は全部集めておきたいらしい。そのペル様が連れ()られたのはいつだったか、何故連れ去られたのか、地竜側は警戒(けいかい)していなかったのか、等このダダくんでも分かりそうな質問を次々()り出してみる。


「……なるほどな。元々は不干渉とは言え友好的な関係だったナビール王国にペルという地竜の王女が連れ去られたのは最近。つまり、エーデルブルート攻略(こうりゃく)翼竜(ワイバーン)が使えなくなったタイミングで()わりに地竜を使おうと考えてそういった行動に出たのだな」

「……そういうことですか」


 翼竜が戦力の中心であるナビール王国の軍は、エーデルブルート王国の対空魔術機雷(きらい)によってほぼ無力化されてしまっている。そこで、地上戦でも使えそうな地竜を有効活用しようとそんな所業に手を()めたという(わけ)か。


「でもさー、アタシがナビール軍のエラい人だったら、一度手に入れた地竜の戦力は手放(てばな)さないと思う。(やつ)ら、王女様を解放(かいほう)する気は無いだろうねー」

「同感だな。第一、解放した瞬間(しゅんかん)に地竜が敵対関係となるだろうしな」


 でしょうね。それでも王女様に危害(きがい)(およ)ばないように、地竜たちは彼らナビール軍の言いなりとなっていたのだろう。


 そこまで考えて、私はテオドールさんが伝令として(そば)()いてくれた兵士さんの方に向き直った。


「ライナー様、この陣地(じんち)に王都への通信用魔道具(まどうぐ)は用意されているのでしょうか?」

「通信用魔道具ですか? はい、御座(ござ)います」


 やっぱりあるか。だったらやることは一つだ。地竜たちの事情(じじょう)について王都に連絡を入れなければ。


 私は地竜から()いた情報と、それを王都へ連絡したいという(むね)、あともう一つ大事なことを急いで(ふみ)として(したた)めてから、テオドールさんに送って貰うよう伝令のライナーさんに手渡(てわた)した。私は中佐(ちゅうさ)よりも(えら)特務(とくむ)少将(しょうしょう)とは言え、ここでの責任(せきにん)者はテオドールさんだからね。勝手に王都へ連絡は出来(でき)ない。


 伝令のライナーさんは敬礼(けいれい)した後、前線の方へと走って行った。見た感じテオドールさんは情報のやりとりについて非常に(きび)しいようなので、すぐに返信をくれるだろう。


「リーファちゃん、部隊長さんに何送ったの?」

「先程伺った内容と、それを王都へ報告(ほうこく)して()しいという旨の連絡です。あとは――地竜の王女様を救い出すことを、王都へ進言(しんげん)することについて、ですね」


 私が文に認めた内容をサマエルさんとアザゼルに説明すると、二人は「やっぱりそうか」といった調子(ちょうし)(かた)(すく)めた。


「やれやれ、ウチの姫様も大概(たいがい)人好(ひとよ)しだな」

「ホントにねー」


 な、なんだよう、二人とも……。


◆ひとこと


「悪魔の所業」という言葉はリーファちゃん(?)が一度使ってたり。

第八二話のサブタイですね。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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