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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一二三話「古竜も神の奇跡の前では無力なのだ」

※リーファちゃんの一人称に戻ります。

「部隊長、緊急(きんきゅう)報告(ほうこく)です。(やつ)らが動き出しました」


 アイマー村から東にある(おか)拠点(きょてん)で私たちが今後の動きについて会議をしているところに、(あわ)てた様子(ようす)の兵士さんが飛び()んできた。動き出したって……ナビール軍が? 丁度(ちょうど)今、「向こうも援軍(えんぐん)(とど)くまでは行動すまい」という予測(よそく)を立てていたところなんだけれど……。


「動き出した、とは? 報告は正確にしろ」


 強面(こわもて)のテオドールさんがギロリと兵士さんを(にら)むと、彼は「(もう)(わけ)ありません!」と慌てて直立(ちょくりつ)し、詳細(しょうさい)(かた)った。はっきり言ってコワイ。


 まぁ、詳細は簡単(かんたん)だ。アイマー村を()め落としたナビール軍が東、つまり我々の居る方向へと進軍を始めたということ。


 けれども、その兵数は初戦の先鋒(せんぽう)隊だけ。つまり援軍が到着(とうちゃく)してから動き出したという訳ではないらしい。


「これは……予想の(なな)め上を行ってくれたな。いくら地竜(ドラゴス)()っているとは言え、あの兵数でなんとかなると思っているのか? こちらには魔術師隊が居るのだぞ。それに……」


 テオドールさんはちらりと私の方を見る。うん、分かっております。被害(ひがい)極小(ごくしょう)にするには私が出張(でば)らないといけない。


「聖女様、早速(さっそく)先程打ち合わせた通りに兵を展開(てんかい)したいと思いますが」

「はい、そのようにお願いいたします」

承知(しょうち)しました。では各隊の隊長は予定通りに動け。我々第一隊も聖女様を守りながら行動する」


 テオドールさんの号令(ごうれい)で、各隊の隊長さんたちが()っていく。


「サマエルさん、アザゼルも、打ち合わせ通りにお願いします」

「あいよー」

「承知した」


 私が頭を下げると、サマエルさんはいつも通り緊張感(きんちょうかん)の無い返事、アザゼルは……だから頭をポンポンするのはやめい。


 ……さて、ここからが正念場(しょうねんば)だ。上手くやらないと。




 護衛(ごえい)のアザゼルと二人で丘の上から見下(みお)ろすと、敵部隊は先頭の地竜隊を頂点とする三角形の陣形(じんけい)()り、結構(けっこう)なスピードでこちらへ進軍していた。あれは魚鱗(ぎょりん)の陣形って言うんだっけ? 確か完全に前方を意識(いしき)した陣形だったと思う。


「先頭は地竜か。まぁ、堅固(けんご)な地竜を後ろへ下げても仕方ないだろうしな。予想通りといったところか」

「はい、これで作戦通りにいけそうです」


 アザゼルにそう返してから、私はゆっくりと長杖(ちょうじょう)を持ち上げ、詠唱(えいしょう)に入る。と言っても、テオドールさんたちに話した広範囲(こうはんい)殲滅(せんめつ)の奇跡を使う訳ではない。あんなものを使って多くの命を(うば)ったら私の寝覚(ねざ)めが悪くなる。


「主よ、迷える子羊に聖なる(しめ)しを(あた)(たま)え――〈神の雷(ラミエル)〉!」


 奇跡の術式(じゅつしき)が完成すると、その瞬間(しゅんかん)轟音(ごうおん)(とも)に先頭の地竜から十数メートルの地点で巨大な(いかずち)が落ちた。


 予想通り先頭の地竜隊がたたらを()んで止まり、彼らの後ろの兵たちが混乱(こんらん)して陣形が(みだ)れた。よしよし。


 私が合図(あいず)()わりに天を(あお)ぐと、上空のサマエルさんが心得(こころえ)たとばかりに(うなず)き、術式の展開を始めた。


「さあさ小鳥さんたち、鳥籠(とりかご)にお入んなさい、〈閉鎖空間(シュロス)〉!」


 サマエルさんの結界(けっかい)魔術が発動(はつどう)し、敵側先頭の地竜隊三()と数名の兵士、そして私たちと十数名の兵士が閉鎖(へいさ)環境(かんきょう)に閉じ()められた。おー、突如(とつじょ)出来(でき)た見えない(かべ)(はば)まれて相手さん方が滅茶苦茶(めちゃくちゃ)混乱している。いいね。


「さて、アザゼル。地竜の所へ向かいますので、引き続き護衛をお願いいたします」

無論(むろん)だ。お前は命に代えても守ってやる」


 真顔(まがお)で返すアザゼル。うーん格好(かっこう)良い。私が本当に女の子だったら()れている。女の子じゃないからそれは無いんだけど。


「では、第一隊の皆様(みなさま)手筈(てはず)通りにお願いいたします。どうか油断(ゆだん)無きよう」


 私は後ろに(ひか)える弓兵(きゅうへい)の皆さんにそう(つた)えると、アザゼルと共に丘の下側へと向かったのだった。


◆ひとこと


いくら堅固な地竜とはいえ、雷を食らったら真っ黒焦げなのです。

防御に自信があるからこそ強大な力に恐怖することを見越して、リーファちゃんは〈神の雷〉を使ったのですね。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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