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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一一五話「元を正せばベリアルのせいなんだけれども」

連続投稿100日目となりました!

お読み頂いている皆様のお陰でモチベーションが保たれております!

ありがとうございます!

 アロイスさんと一緒に自宅へ(もど)ると、丁度(ちょうど)母さんが陛下(へいか)から連絡(れんらく)を受けていた所だった。


「リーファちゃん……、落ち着いて、聞いて()しいのだけれど……」

「お母様、大丈夫です。アロイス様より(うかが)っております」


 青ざめた顔の母さんが私に説明しようとしたけど、それを(とど)める。母親として『(けもの)』の時のようにまた戦地(せんち)へ送るのが(つら)いのかも知れない。


「すまぬな、リーファよ。本来ならばカナン神国(しんこく)の聖女でもある其方(そなた)を戦地へと送ることは出来ない(はず)なのだが……今回ばかりは()立場(たちば)というものがあってな」


 心底(しんそこ)(もう)(わけ)なさそうに通信()しでそう(おっしゃ)る陛下。ナビールの宣戦(せんせん)布告(ふこく)は元を正せば昨年(さくねん)秋にブルーメの町の小麦が全滅(ぜんめつ)したことにある。その責任(せきにん)(かぶ)った陛下としては私を送り出すことについて(まぬが)()ない状況(じょうきょう)だったのだろう。


「いえ、陛下。ですが、(おそ)れながら一つ確認をさせて(いただ)けますでしょうか。カナン神国は私の参戦(さんせん)について、どのような反応を(しめ)しているのでしょうか」

「……事情を説明したところ、判断(はんだん)(ゆだ)ねる、と返答があった」


 判断は委ねる、か。神国としては私の参戦について止めることはしないけど、責任も持たないよ、と言っているんだな。まぁ、向こうの立場としてはそうなるだろう。


「ナビール王国は『神罰(しんばつ)』と言っているようですが、マスティマも逃亡(とうぼう)(さい)、同じ言葉を使っておりました。彼女も関係があるのではないでしょうか」

「……やはり、其方もそう思うか。だとすれば神国の一天使が戦争に介入(かいにゅう)したことになるが……」


 陛下が言葉を切る。まあ、(かく)たる証拠が無いし、調査しようにも内政(ないせい)干渉(かんしょう)になってしまうからね。


「たっだいまー」

「うむ? 誰か来ているようだな。お客様か?」


 おっと、玄関(げんかん)からサマエルさんとシャムシエルの声。ベストタイミングで帰ってきたな。


「ただいまーママさん……おっと、王様とお話し中か、ごめん」


 空気を読んで(だま)るサマエルさん。そしてシャムシエルが「何かあったのか?」と小声で聞いてきたのできちんと説明すると、二人とも(おどろ)きに瞳を見開(みひら)く。


「戦争かぁ……。『獣』の時と違って相手は人間や亜人(あじん)だよ? リーファちゃん大丈夫なの?」

「わたくしは後方(こうほう)支援(しえん)になると思いますので。……その認識(にんしき)ですが、合っておりますでしょうか?」

「うむ、対人(たいじん)戦闘(せんとう)訓練(くんれん)もしていない兵を最前線に送るようなことは出来(でき)んな」


 一応陛下に確認を取ったけど、やっぱり私は後方支援で合っていたようだ。ああ良かった。(つえ)持って特攻(とっこう)しろって言われたらどうしようかと思ったよ。対人はほとんど経験(けいけん)無いしね。


「だが……こちらが()()らした分が後方に来た場合、リーファを守らねばならぬ。そこで悪魔サマエルよ、(たの)みがある」

「……あー、王様の言いたいこと分かった」


 うん、私も分かった。私の護衛(ごえい)に付いて欲しい、ってことなんだろう。


「……うむ、リーファの護衛を頼まれてくれるか、悪魔サマエルよ」

「ま、可愛い妹分(いもうとぶん)(ため)ならね。気は進まないけど、やってやりましょ」


 そう言って、私に向かってウィンクして見せるサマエルさん。本当に(たよ)りになる姉御だこと。


「そして、能天使(パワーズ)シャムシエルよ。貴女(きじょ)には御前(ごぜん)の天使ラグエルより伝言(でんごん)だ」

「……伺います」


 シャムシエルもこれから伝えられることについてはある程度予想しているのだろう。神妙(しんみょう)な顔つきで通信用魔道具に向き直った。


「『エーデルブルート王国に滞在(たいざい)中の力天使(ヴァーチャーズ)ザアフィエルを監査(かんさ)役として(つか)わせるので、聖女リーファと(とも)に行動し合流せよ。ナビール王国にマスティマの関与(かんよ)(みと)められたならばその真意(しんい)を確認し、聖女リーファの家族に危害(きがい)を加えた(つみ)名目(めいもく)として捕縛(ほばく)せよ。その場合の生死は問わぬ。なお、決して二国間の戦闘には加わらぬように』……だそうだ」


 ああ、やっぱり神国もその可能性に(いた)っていたんだね。


承知(しょうち)いたしました、とお伝え下さい」


 シャムシエルは神国の伝言の意図(いと)を理解したようで、はっきりとした答えを返した。私とは(こと)なり、シャムシエルは完全にカナン神国に(ぞく)する存在だ。だから同盟(どうめい)国でもない他国同士の戦闘行為に加わることは絶対に(ゆる)されないのだろう。


「でもさー、マスティマがナビールの兵に守られてたらどーすんの?」


 サマエルさんの()えた()()みが入った。そのケースは十分にあり()るなぁ。


裁量(さいりょう)は監査役に委ねることになるとは思います。ですがその時はつまり、罪を犯した天使が干渉していたということです。犯罪者を(かくま)っていることになりますので、こちらも遠慮(えんりょ)をする必要は無いでしょう。もっとも、事前に警告(けいこく)は入れますが」

「あー、なるほどね」


 確かに、犯罪者なのだから警告を無視して匿うようならば神国としても容赦(ようしゃ)しないか。まぁ、その後面倒(めんどう)な事になりそうだからそうならないといいけどねぇ。


 さて、いきなり戦争に行くことになった私たち三人は、急いで準備(じゅんび)(ととの)え、リリやシャラたちへ(ろく)挨拶(あいさつ)も出来ぬまま出発することになったのであった。


◆ひとことふたこと


ザアフィエルはエノク書に登場する天使です。

どんな天使なのかは後述しますね!


リーファちゃんは対人について「ほとんど」と言っていますが、盗賊相手などと戦ったことはあります。

後は一章で出てきた獅子の亜人とかですね。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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