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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一一〇話「真の黒幕は、やっぱり……」

 母さんがミスティさんを起こしにかかっている間、私は神術(しんじゅつ)で〈隠された剣(クォデネンツ)〉の加勢(かせい)に入る。(つえ)が無いので術式(じゅつしき)構築(こうちく)手間取(てまど)るけど、まあ問題あるまい。


聖霊(せいれい)よ、異端(いたん)なる存在(そんざい)(つらぬ)く力をここに、〈光槍(ジャベリン)〉!」


 丁寧(ていねい)な術式構築により、光の(やり)はきちんと私の手から生まれ、シェムハザを(おそ)う。


「ぐむぅ!」


 〈隠された剣〉に()かりきりだったシェムハザは、左(かた)へまともに〈光槍〉を受けて苦悶(くもん)の声を上げた。よろめき、(すき)出来(でき)た所に魔剣が襲いかかり、()()いていく。


 だが〈隠された剣〉は、突如(とつじょ)横から飛来(ひらい)した魔力弾(まりょくだん)により吹き飛ばされる。魔剣は吹き飛んだものの、再び()(さき)をシェムハザの方へ向ける。魔剣というだけあって流石(さすが)頑丈(がんじょう)だ。


 魔力弾の発射(はっしゃ)元を見れば、アザゼルが手を前に()き出した状態(じょうたい)で立っていた。コイツも居たか!


「シェムハザ、大丈夫か!」

「ぐっ……、アザゼル様、(もう)(わけ)御座(ござ)いません」


 ……なんだと?


 私は聞き捨てならない言葉を聞き、すぐに「〈隠された剣〉よ、私の手に(もど)りなさい」と魔剣に呼びかけた。


「……聖女リーファよ、いいのか? 絶好(ぜっこう)機会(きかい)だったというのに」


 シェムハザは血塗(ちまみ)れの状態(じょうたい)(ひざ)をつき、私に対してそんなことをのたまった。確かに、〈隠された剣〉に私、そしてもう一人母さんという魔術師が居る状況(じょうきょう)であれば、如何(いか)なアザゼルとシェムハザでも苦戦するだろう。しかし――


「いえ、貴方(あなた)がたにはお(うかが)いしたいことが御座いますので。……どうやらわたくしは勘違(かんちが)いをしていたようですね」

「………………」


 シェムハザは無言(むごん)でその顔に「しまった」という表情を()かべた。先程の自分の言動(げんどう)を思い返したのだろう。


「アザゼルに指示(しじ)を出していたのは、シェムハザ、貴方ではないのですね?」


 シェムハザは先程「アザゼル様」と言っていた。


 ということは、彼はアザゼルに指示を受ける立場(たちば)であっても、指示を出す立場ではない。


 私の問いに、シェムハザは誤魔化(ごまか)すこともせず「……そうだ」と(うなず)いた。


「やはり、そうなのですね。……そしてアザゼル。先程わたくしを(ねら)うことは容易(たやす)かった(はず)。どうして〈隠された剣〉ではなくわたくしを狙わなかったのですか?」

「そ、それは……」


 アザゼルはばつが悪そうに口ごもる。


 たぶん、答えはこうなんだろう。


「貴方がたに指示を出す何者かが、他に居るのですね?」

「………………」

「………………」


 二人は答えなかった。その沈黙(ちんもく)(すで)に答えとなっている。


 アザゼル、シェムハザというこの二人の悪魔を(したが)える何者かが居るということなのだろう。


 そしてその何者かが、私の手でアンナを殺すように仕向(しむ)けたのだ。彼らはただ、その命令に従っただけなのだ。


 アザゼルが私を狙わなかったのは、恐らく私を傷つけるなという命令が(くだ)されているから、なのだろう。何故なのかは分からないけれども。


「教えてください。貴方がたに指示を出しているのは、何者なのですか?」

「………………」

「………………」


 やっぱり二人は答えない。


 そうだな、なら――


「……では言い方を変えましょう。貴方がたは何を(おそ)れているのですか?」


 その質問で、二人の顔色が(あせ)りに変わった。やっぱりそうなのか。


 二人ほどの悪魔ならば、何をも恐れることなど無い筈だ。となれば、先程までの私みたいに人質(ひとじち)を取られているか、もしくは魔術的な契約(けいやく)(しば)られているのだろう。


「せ、聖女リーファよ……」


 それまで沈黙を守っていたシェムハザが、(ふる)えた声を上げた。何か情報を(わた)してくれるのだろう。


「よせ、シェムハザ!」

「聖女リーファよ、私たちに命令を出していたのは……ぐぅっ!?」


 アザゼルが止めに入るのも(かま)わず何かを言いかけた所で、シェムハザが(むね)を押さえて苦しみ始めた。これは――


(のろ)いですか! 主よ、(あわ)れな贖罪(しょくざい)山羊(やぎ)を――」

「そこまでです、聖女リーファ。(じゅつ)中断(ちゅうだん)し、その剣を捨てなさい」


 私が解呪(かいじゅ)の奇跡である〈祝福があるように(ベネディクトゥス)〉を展開(てんかい)しようとしたところで、聞き(おぼ)えのある声が背後(はいご)から()かった。


「……やはり、貴女(あなた)でしたか、シスターミスティ」


 ミスティさん、いや、ミスティは、背後から母さんの首に左(うで)を回し、右手のナイフを押し当てた姿勢(しせい)のまま、私に対してにっこりと微笑(ほほえ)んでいた。


◆ひとこと


はい、というわけで二転三転しましたが、やっぱりこの人はクロでした。

何者なのかは次回にて!


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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