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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一〇五話「アザゼルへの事情聴取開始(買い物袋つき)」

「さて、何故(なぜ)村を(ねら)っていた俺がここで買い物をしているのか、だったな」


 会計を終えて店の外に出てきたアザゼルが、待っていた私とミスティさんの元にやって来てそう切り出した。しかし左(うで)洗剤(せんざい)やらたわしやら入った布袋(ぬのぶくろ)がぶら下がっていて、何とも緊張感(きんちょうかん)()ける。


「まず、お前は勘違(かんちが)いをしている。俺は村を狙ってなどいない」


 (くせ)なのか(あご)をさすりながらそう答えるアザゼル。村を狙っていない?


「いえ、アザゼルよ。貴方(あなた)は村へ向かう巨人の死霊(しりょう)たちを守っていたではありませんか」

「それは、そういう仕事だったから、だな」


 なんだと?


 仕事、と言ったか。ということは、誰かがアザゼルに命令したということだ。確かに、死霊たちを呼び出したのが他の誰かならばその可能性はあったな。


「……ということは、シスターミスティを狙っているというのも、あなたの任務(にんむ)だから、ですか?」


 そう(たず)ねたら、アザゼルは「大きなヒントを(あた)えてしまったな」と苦笑(くしょう)した。やはりこれは何かしらの手掛(てが)かりとなりそうだ。


 と、くいくいっと私の修道服(しゅうどうふく)が引っ()られた。ミスティさんだ。


「あの、聖女リーファよ。先程から気になっては居たのですが……貴女(あなた)はアザゼルと初対面(しょたいめん)ではないように見えますが、どちらで知り合われたのでしょうか?」

「え、あ……」


 しまった、ミスティさんには()せていたのにバレてしまった。


 まぁ仕方ない、説明するか。


「先日、巨人が(あらわ)れたとシャムシエルが教会へ飛び()んできたことがあったでしょう。その時に現地(げんち)遭遇(そうぐう)しました。彼が村へ向かう巨人の死霊たちを守っていたのです」

「なんと、そうでしたか」


 私の説明に納得(なっとく)したように(うなず)き、そしてキッとアザゼルを見据(みす)えるミスティさん。この人がこんな態度(たいど)を見せるのも(めずら)しい。


「悪魔アザゼルよ、一体何処(どこ)何方(どなた)が何のためにわたくしを狙っているのか、教えて(いただ)けますか?」

「………………」


 ミスティさんの言葉に、アザゼルは苦笑したまま無言で(かた)(すく)めるだけだった。やっぱり答えるつもりは無いらしい。


「ま、今は俺も仕事ではないので、ここで何かを起こそうというつもりは無い。やると言われれば抵抗(ていこう)するが」

「……いえ、それは好都合(こうつごう)です」

「だろうな」


 こんな村のど真ん中で事を起こされてはたまったものではない。ここは大人しく帰って(もら)おう。


「では、俺は()へ帰ることにする。では聖女リーファ、また――」

「あれ、アザゼルがいるー」


 アザゼルが飛び立とうと一二枚の黒い(つばさ)を広げた瞬間(しゅんかん)、のんびりした声がやや遠間(とおま)から聞こえた。これは間違(まちが)いなくサマエルさんだな。ちょうど今日の()りから(もど)ってきたところなのだろう。


「……サマエルか」

「なんでここにいんの?」

「また(いち)から説明するのか?」


 サマエルさんに質問され、不満そうに私を見るアザゼル。いや私に振られても。


 そんなアザゼルと私のことを交互(こうご)に見るサマエルさんが、何やら面白(おもしろ)いことを思いついたようににんまりと笑った。あ、(いや)予感(よかん)がする。


丁度(ちょうど)良いや、アザゼル。アンタちょっとウチまで来なさい」

「は? いや、俺は帰って家事(かじ)が――」

「いいから、ほら!」


 強引(ごういん)にアザゼルの右手を引っ()り、森の方へと歩き出したサマエルさん。アザゼルも観念(かんねん)したようで、翼を引っ込めてしまった。


 残された私とミスティさんは、どうしたものかと顔を見合(みあ)わせるだけだった。


◆ひとこと


アザゼルは押しに弱いらしく、サマエルの強引さに負けてしまいましたね。

敵対している同士とは思えません(笑)


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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