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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一〇四話「汚れがよく落ちて手荒れもしにくく環境に優しい食器用洗剤、好評発売中です」

 それから数日何が起きるともなく、私はミスティさんと帯同(たいどう)する生活を続けていた。


 とは言え私は大々的(だいだいてき)寄付(きふ)(つの)ることには相変(あいか)わらず反対なので、地道(じみち)布教(ふきょう)活動のお手伝(てつだ)いになる(わけ)なのだけれども、そもそも私は魔術師なので彼女ほど信心(しんじん)深い訳でも無い。そのため、普段(ふだん)(かり)教会における掃除(そうじ)や料理などの雑務(ざつむ)(てっ)しているのだった。


「リーファ、そろそろ時間だからシスターミスティと上がって良いよ。今日もお(つか)れ様」


 相変わらず仮教会内で聖書を読み(ふけ)っていた私に、デニス神父(しんぷ)(ねぎら)いの言葉を()けてくれた。もうそんな時間か。これから帰って魔術師(がわ)の仕事をしなければ。


「神父様。はい、分かりました。まだまだお手伝いが出来(でき)(もう)し訳御座(ござ)いません」


 私はまだ聖書の内容を半分も(おぼ)えられていない。普段(ふだん)から読んでいる訳ではないからなぁ。普段読んでるのは魔術書だし。


「良いのだよ、リーファ。君はシスターでも無いというのに君なりのやり方でこの教会に貢献(こうけん)してくれているのだし、気にすることはない。感謝(かんしゃ)するのは私の方だよ」

「はい、ありがとうございます」


 うーん、流石(さすが)デニス神父。この心の広さは見習いたい。


 神父様に挨拶(あいさつ)をしてからミスティさんと仮教会を出る。さて、帰ったら薬の調合(ちょうごう)のお仕事だ。あー(いそが)しい。


「……ん?」


 広場の向かい、リリの自宅でもある雑貨屋(ざっかや)に入って行く人物を見つけ、私は目を(うたが)った。いや、それは人ではない。


「ア、アザゼル……!?」


 まさかのアザゼルが、村に侵入(しんにゅう)、しかも雑貨屋へ入って行った? 何をするつもりだ、あの悪魔!


「どうかなさったのですか、聖女リーファ?」

「いえ、悪魔アザゼルが、雑貨屋に入っていく所を確認しました。シスターミスティも一緒(いっしょ)に来て下さい」


 ミスティさんも(ねら)われているのならば、私の(そば)から(はな)れない方が良い。


「え、えぇ? 雑貨屋に、あの悪魔が……?」


 私たちは雑貨屋へ急ぎ足で向かう。この時間はリリが店番をしている(はず)だ。彼女が危ない。




「ほう……、これは食器用洗剤(せんざい)なのか。(よご)れが良く落ち、しかも環境(かんきょう)に優しい……?」

「はい、手荒(てあ)れもしにくくて王都でも人気なんですよ。近くの森に住んでるアナスタシアさんという魔術師の方が作っています。私の幼馴染(おさななじみ)のお母さんなんです」

「なるほど、これは買いだな」


 雑貨屋では、側でリリの説明を受けながら、ぶつぶつ(つぶや)きつつお店のカゴに洗剤の(びん)(ほう)()むアザゼルが居た。


「………………」


 え、何この光景。予想してなかったんだけど。


「あの……アザゼル……ですか?」

「む、聖女リーファか。こんにちは」

「こ、こんにちは」


 なんか先日(せんじつ)やり合った悪魔に、ふつーに挨拶をされた。多分(たぶん)今の私、(はた)から見ると目が点になっていると思う。


「ええと……お(うかが)いしたいのですが、何をされているのですか……?」

「いや、買い物だが」


 買い物だが、とか言われても(こま)るんだけど。なんで普通に買い物してるか聞いてるんだけど。


「あ、お客様、この子がその幼馴染なんです! 彼女もこの洗剤を作ってくれているんですよ!」

「ほう、そうだったのか。なかなかやるではないか、聖女リーファよ」

「え、あ、はい、ありがとうございます」


 ()められたので思わず()れてしまい、しどろもどろに頭を下げる私……じゃなくて!


「あの、アザゼル。何故(なぜ)この村を(ねら)っていた貴方(あなた)がここで買い物をしているのか、と聞いているのですが」


 なんで私が申し訳ない思いでこの悪魔にこんな説明をしているのか。ちょっと涙が出てきそう。


「ん? あぁ、まずは勘定(かんじょう)支払(しはら)うから外で待っていろ」

「お会計ですね、(うけたまわ)ります」


 私を放置(ほうち)して、さっさとリリのところへ商品を持って行くアザゼル。取り残される私とミスティさん。


「……一旦(いったん)、外に出ましょうか」

(よろ)しいのですか? あれを放置して?」

「はい……、大丈夫(だいじょうぶ)でしょう……」


 頭痛を(こら)えつつ、私はミスティさんの背中(せなか)を押しながら店の外へ出た。


◆ひとこと


まさか当作とは思えぬサブタイトル。

アザゼルの素はこんな感じでした(笑)


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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