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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一〇二話「疑念が私の中で渦を巻く」

 兵士さんたちが(ねむ)っている間に、私はミスティさんから事情を(うかが)うことにした。陛下(へいか)からは兵に(まか)せよと言われているけれども、また同じことになってしまっては(かな)わない。


 私たちは(かり)教会の中に場所を変え、二人で向かい合って(すわ)っていた。シスターミスティはと言うと、先程からずっと(うつむ)いたままだ。


単刀直入(たんとうちょくにゅう)に伺います。あの兵士の皆様(みなさま)(あば)れていた事には、シスターミスティ、貴女(あなた)が関係していますね?」

「…………はい」


 彼女は(おどろ)くほど簡単(かんたん)に関係を(みと)めた。やっぱり、この騒動(そうどう)を起こした何者かとの因縁(いんねん)があるのだろう。


「一体、何故(なぜ)あのような事になっていたのか、理由についてお話を(いただ)けますでしょうか?」

「それは…………」


 ミスティさんは答えるべきかどうか(まよ)っているようだった。でも、私も村の安全の(ため)にここでは(きび)しく行かなければならないので、詰問(きつもん)しておく。


「……わたくしは、(ねら)われているのです」

「………………」


 狙われている、か。


「貴女を狙っているのは誰か、心当たりはありますか?」

「……はい、悪魔です。一度遭遇(そうぐう)した時、アザゼルと名乗(なの)っておりました」


 やはりそうか。あの悪魔とこのシスターがここで(つな)がった。


 しかし、この神術(しんじゅつ)も使えなさそうなシスターがアザゼルと対峙(たいじ)してよく無事(ぶじ)だったものだ。その時は誰かが一緒(いっしょ)だったのだろうか? 私がそう思っているだけで、何かしらの力を持っているのかも知れないけれども。


「そのアザゼルという悪魔は、何故貴女を狙っているのでしょう?」

「それは…………」


 口ごもり一〇秒ほど躊躇(ためら)っていたミスティさんだったけど、ふいっと私から瞳をそらした。


「……あの悪魔との関係について、これ以上のことは(もう)し上げられません」

「そうですか……」


 うーむ、(かたく)なな姿勢(しせい)を見せ始めた。こちらに情報を(わた)すつもりは無いらしい。


 ならば話題を変えて、昨日(きのう)アザゼルが言っていたことについても聞いてみようかな。あの悪魔は試練(しれん)と言っていたから、そこに何か――



 ……あの女には気をつけろ。私から言えるのはこれだけだ。



「………………」

「あの……、聖女リーファ? どうかなさったのですか?」

「あ、いえ、申し(わけ)御座(ござ)いません。少し考え事をしておりました」


 首を(かし)げるシスターに、私は作り笑いを返して誤魔化(ごまか)す。まだこちらの手の(うち)を明かすタイミングではないだろう。


 一体、シャムシエルは何に気をつけろと言ったのだろう?


 まさか、この人があの三人を(あやつ)っていたのだろうか? この神に対して()()ぐな信仰(しんこう)を向ける彼女が? あり()ない。


 けれども……シャムシエルの言う通りに怪しいのには間違(まちが)い無い。偶然(ぐうぜん)彼女に対して事情聴取(ちょうしゅ)をする(はず)だった兵士の皆さんが(あやつ)られたとしたのだったら、出来すぎている。いや、逆に、そう思い込ませることも(ねら)いなのか?


「……うーん」


 一体、彼女は白なのか、黒なのか。分からなくなってきた。


 しかし、彼女の(まわ)りで騒動(そうどう)が起きるならば、今回のように誰かが巻き込まれる可能性だってある。何らかの対処(たいしょ)は必要だろう。


 仕方ない、ここは一肌(ひとはだ)()ぐしか無いか。


「あの、シスターミスティに一つ提案(ていあん)が御座います」

「何でしょう?」


 手を合わせて私の言葉を待つミスティさん。私は一旦(いったん)息を()き、彼女を見据(みす)える。


「この先、再び貴女を(おそ)う何者かが(あらわ)れないとも(かぎ)りません。いえ、必ず現れるでしょう。その時にこの村が(おびや)かされるのは、わたくしとしては看過(かんか)できません」

「……はい」


 ミスティさんはばつが悪そうに俯く。そりゃね、悪魔に狙われているのはお気の毒だけれども、それで周りが()()まれるのは問題だ。


 だったら、監視下(かんしか)()いてしまえばいい。


「これからシスターミスティには、わたくしの自宅で寝泊(ねと)まりをして頂こうと思います」

「え、ですが、それはそれで聖女リーファ、貴女に迷惑(めいわく)が……」

「いえ、先日(せんじつ)申し上げました通り、自宅には結界(けっかい)()られております。その上こちらには能天使(パワーズ)が一人、元御前(ごぜん)の天使である堕天使(だてんし)が一人()ります。貴女を守るには十分な戦力ではないかと」


 最近のシャムシエルの態度(たいど)にはちょっと心配だけど、まあ家族を守る為にはちゃんと行動してくれる筈だ。


「そして、シスターミスティの活動には、わたくしもご一緒(いっしょ)させて頂きます。勿論(もちろん)、わたくしも普段(ふだん)の仕事が御座いますのでそちらも行動を(とも)にして頂きますが、その程度(ていど)拘束(こうそく)は仕方ないと思ってください」


 ぽかんと口を開けて私を見つめるミスティさん。まぁそうなるよね。つまり四六時中(しろくじちゅう)護衛(ごえい)します、と言っているようなものなのだから。


「……宜しいのですか? 貴女はその、神に(つか)えている訳ではないのでしょう?」

「神に仕えてはおりませんが、この村には(おん)が御座いますし、貴女の信念(しんねん)理解(りかい)出来(でき)ない訳では無いのです。それに――」


 私は小さく(かた)(すく)める。


「これも、神のお(みちび)きなのでしょう」


◆ひとこと


気を付けろ、と言われた人と一緒に行動するリーファちゃんはお人好しですね~(笑)


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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