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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第一〇一話「傷つけずに戦うのは難しいのです」

 私とリリがシュパン村に到着(とうちゃく)すると、広場近くにある(かり)教会の前では、リリの言った通り兵士さんたちが三人、剣を振り回して(あば)れていた。見た感じ確かに正気(しょうき)を失っているようで、口からよだれを()らしている。これは危険だな、怪我(けが)人が増えていなければいいけど……。


「リリは安全な所に(かく)れていてください」

「う、うん! リーファく……リーファちゃんも気をつけて!」


 人前なので聖女モードな私に対して呼び方を直したリリが、急いで近くの建物へと()けていく。


 さて、まずは兵士さんたちが正気を失っている原因を(さぐ)らなくては。


「その流れを我に(うつ)せ、〈魔力探知(マナサーチ)〉」


 私は気取(けど)られぬように遠間(とおま)から、ベリアルがそうしていたように魔力片(まりょくへん)を植え付けられていないか確認する。


 でも、魔力片のようなものは感じられない。となれば……


「もしや……薬物(やくぶつ)……ですか? しかし一体、何故(なぜ)?」


 事情聴取(ちょうしゅ)の時に無理矢理(むりやり)自白(じはく)させるために薬物を投与(とうよ)することがあるとは聞くけど、まさか使用の(さい)に自分たちが中毒症状(しょうじょう)を起こしてしまった? ……いやいや、それは()()みどころが多すぎる。


 だったらミスティさんも一緒(いっしょ)錯乱(さくらん)状態になっている(はず)。でもそうでないということは別の理由があるのだろう。


 まぁ、今のところは原因を推測(すいそく)しても仕方が無い。とは言え、魔力片じゃなくて薬物となると、混乱(こんらん)状態を沈静化(ちんせいか)させる神術(しんじゅつ)なり魔術、もしくは薬が必要だ。生憎(あいにく)私は対応する神術も魔術も(おぼ)えていなければ薬も持ち合わせていないので、一時(いちじ)眠らせて、後で師匠を呼んで対応して(もら)うしか無いか。


「こんな事ならラグエル様に教えて(いただ)いておくのでした……って……」


 私が神術()長けた御前(ごぜん)の天使の一人を思い浮かべていると、三人の兵士さんたちが一斉(いっせい)にこちらを向いた。気づかれた! しかも三人同時に!?


 三人はおぼつかない足取(あしど)りで私の方へと近づいてくる。はっきり言って脅威(きょうい)ではないけれども、なんかコワイ。不死者(アンデッド)のゾンビとかこんな感じなんだろうか。


「まあ、昨日(きのう)の巨人みたいに逃げ回りながら対応しなくても良いので、楽ではありますが……。安らかなる(ねむ)りを与えよ、〈誘眠(スリープ)〉」


 私の手にしている長杖(ちょうじょう)から魔力の糸が()びて、三人の兵士さんたちの頭に(から)みつく。三人とも眠って――


「ない……? え、()いてない?」


 そんな馬鹿な! 三人ともに抵抗(レジスト)された!? ばっちり決まった筈なのに!


「……ん?」


 私は〈誘眠〉を()けてからの三人の表情に違和感(いわかん)を覚え、よく目を()らして見る。


 ……白目(しろめ)()いてる? なのに私の方へ向かってきている? ということは――


「直接操っているのですか!」


 ベリアルは遠隔(えんかく)だったから魔力片のような媒介(ばいかい)(よう)したけど、近くで(あやつ)るならばそれは必要無いのだ。気づかなかった!


 咄嗟(とっさ)に私は(あた)りを見回し、彼らを操る何者かの存在(そんざい)(さが)す。が、そんなに分かりやすい場所に居る(わけ)も無いので見つかる筈も無い。


 ならば、無理矢理にでも術者(じゅつしゃ)辿(たど)ってやる。


「ふっ――」


 私は右手で(つえ)(かざ)し、近づいてきた兵士さんたちの一人が振るった剣を受け止める。へろへろな太刀筋(たちすじ)なので受けるのは容易(たやす)い。


 とは言え三人も居るので、()けきるのは(むずか)しい。一人の剣が右(かた)(かす)めた。痛いけど我慢(がまん)だ我慢!


 私は肩の痛みに(かま)わず、()いている方の左手で相手の頭を(つか)んだ。このまま術を解析(かいせき)してやる! ……って、あら?


「……術を切りましたか」


 私が解析しようとした瞬間(しゅんかん)、術者は兵士さんたちへのパスを切ったらしい。三人はバタバタとその場に(くずお)れた。


単純(たんじゅん)ですが、(おそ)ろしい手でした。しかし――」


 この村に、人を操る何者かが(もぐ)り込んでいるということか。


「お怪我をされているようですね」

「……え? あ、シスターミスティ……」


 終わったと思ったら、すぐにミスティさんが布を片手にやってきた。タイミングが良すぎるし、ずっと見ていたのだろうか。


 それとも、このシスターが……?


「動かないで下さい。今手当てをいたしますわ」

「……大丈夫(だいじょうぶ)です、それより神父(しんぷ)様は……?」

大事(だいじ)ありません。軽傷(けいしょう)ですわ。(すで)に手当てを()ませております。他に怪我をされた方もいらっしゃいません」

「そうですか……、良かったです。しかし、一体これは誰が何のために……?」

「………………」


 ミスティさんは私の言葉に対して、何処(どこ)(もう)(わけ)なさそうに(うつむ)いてしまった。やはり、このシスターには何かの事情があるようだ。


「シスターミスティ、ひとまずこのお三方(さんかた)介抱(かいほう)してから、貴女(あなた)にお話を(うかが)っても(よろ)しいでしょうか?」


 彼女は何を言うこともなく、(つら)そうに(うなず)いただけだった。


◆ひとことふたこと


直接操作と遠隔操作とでは、方式が異なります。

直接だとコードが付いている状態、遠隔だと無線デバイスがついているような状態でしょうか。


流石にリーファちゃんもミスティに疑いを持った模様。

果たして真相は?


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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