表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒットマンオブヒットマン  作者: あらる
1/1

準備運動

スーパーにて


俺は今、緊迫した状況の中、近所のスーパーでカートを押している。

キャラクターがデザインされたTシャツにジャージの半ズボンという物凄く間抜けな服装をしているが、これでも俺は殺し屋だ。

と言っても、対殺し屋専用の小さな組織だが。殺し屋を恨んでる奴らの集まりだ。

ただ、ちょっと不思議な力を持ってるだけのな。

「おい。おいコラ」

俺は、イヤホンの先の通話相手に話しかけた。

「何よ、まだ見つからないの?」

俺達の中の自称オペレーター、ミカンが、呆れたように言ってくる。

「ったりめェだろぶっ飛ばすぞ。なんだよ『黒い長袖を着た奴』って……んなもん腐る程歩いてんだよォ!!」

ミカンによれば俺は今、殺し屋に命を狙われているらしい。自称オペレーターがそんなことを言ってきたのは、たったの昨日。

なんでも、対殺し屋という組織を作り上げた俺を殺したいらしい。そんな輩、俺達は今まで何人も見てきた。毒殺やら暗殺やらを目論んだり、白昼堂々殴ってきた奴もいる。

今回の奴らは、何と贅沢に、スーパーに立て篭りを起こして俺を殺そうとしているという。

自称オペレーターであるミカンによれば、今日の午後、このスーパーで、黒い長袖を着た野郎が、立て篭り事件を起こすのだとか。お得意の潜入やハッキングを使って調べたのだろう。ミカンは体の色を自由自在に操れる『色彩変化』という特殊能力を持っており、透明にもなれるので、潜入なんてお手の物。ハッキングはただの趣味らしい。

そういった経緯で俺は今、緊迫した状況の中、近所のスーパーでカートを押しながら『黒い長袖を着た奴』を探しているのだが、肌寒くなってきたこの季節、黒い長袖を着た奴なんて、本当に腐る程歩いているのだ。その中から殺し屋を見つけろ、なんて……。

「まァ、目付きでわかるけどなァ」




一日前 自室にて


「ちょっと、ちょっとルア!!」

「んっ……んー?」

耳元から急にハンドルネームを叫ばれ、寝ぼけ眼を擦る。ミカンからはいつ連絡が来るかわからないので、耳にはイヤホンを付けっぱなしだ。ちなみに、ミカンもハンドルネームらしい。

「寝ぼけた声出してんじゃないわよ!良い?良く聞きなさいよ?」

『仕事中』の声色になるミカンに釣られて、俺の頭も一気に冴える。

「あんた、明日殺されるわ」

…………ん?き、聞き間違いかァ?

「な、なんだってェ?」

「良く聞きなさいって言ったでしょ!?あんた!明日!殺し屋に命狙われるの!」

「はっ……」

「残念ながら大マジよ」

「はあァァァ!?!?」




次の日 スーパーにて


「当たり前でしょ、あんた今までに何回命狙われてると思ってんのよ」

自慢じゃないが、本当に何回も何回も命は狙われてきた。もうそういう奴らの目付きなんて、気付かない方が難しい。

「でもよォ、スーパー貸切だろォ?一人でんなこと出来るわけねェだろォ……」

「当たり前でしょ。もちろんいっぱい仲間もいるわよ。首謀者が今日黒い長袖を着てるってだけ。どうせ見つけた奴集団でしょ?」

「まァなァ。んで、こんな近所で殺し合いする訳にはァいかねェぞォ。サッと絞めちまっていいかァ?」

俺が小声でそう言うと、

「好きにしなさいよ、私はまだ仕事があるの」

なんて言葉が返ってきた。

なんだァ、今日は殺しの仕事はねェはずだがァ……。

「んだよォ、仕事って」

「ココロが狙われてるっぽいのよ。変態高校生殺し屋にね」

ココロとは、ミカンと同じく俺の同僚。体の大きさをを自由自在に操れる『急退成』という特殊能力を持っており、もう成人はしているのだが、高校生の殺し屋を目立たずに殺るために高校生になってもらっている。ちなみに、ココロは本名らしい。

てか、なんだ変態高校生殺し屋ってェ。

「……ココロがァ?んなもんダースが助けにくんだろォ」

ダースというのも、ミカン、ココロと同じく俺の同僚に当たる人物だ。俺が対殺し屋という組織を作ってからの初めての仲間であるダースは、体の形を自由自在に操れる『自由形成』という特殊能力を持っており、大きさは多少しか変えられないものの、腕を箱の形にしたり下半身を車椅子にしたりと、死体を運ぶのに凄く便利なのだ。まあ、見られてしまえば車椅子に乗った馬鹿でけェ箱を運ぶ変人だと思われるが。そこら辺は、ギターケースの形にしたり、と色々と工夫をしているらしい。

指を鍵の形にして、ミカンの潜入に手を貸しているのも良く目にする。

そしてダースは、ココロを助けるためなら何でもやる、ココロ命のショタコンである。

「一応調べとくだけよ、一応。ダースも、あれ疲れるから嫌だとか言ってんのよ」

「まァ、そうだろうなァ」

特殊能力を使うには、絶対に何か代償を払う必要がある。別に、好きで特殊能力を使っているわけでは無いが。

「じゃ、目立たないように絞めちゃって、死体処理はいつも任される人に任せといて」

「おぅ……ってそれ俺なんだよォ!!」




一時間後 スーパーにて


つってもなァ……どうやって殺ってやろうかァ……。

最近は殺し屋という組織その物が減ってきているため、こういうガッツリ殺せる系の仕事は少し久しぶり。どうせなら楽しみたいので、午後ギリギリの所で、あいつらに声をかけようかと思っていた。ああいう奴らはアドレナリンが出まくっているため、ちょこっと挑発するだけで簡単に乗っかってくれるのだ。

「……後一時間かァ……」

そろそろ声をかけても良い頃かな、なんて思っていると、

「きゃぁァァァァァァっ!!!」

野菜売り場の方面から、女性の悲鳴が聞こえてきた。

「なんだなんだァ……?」

野菜売り場に目をやると、そこには。

「今すぐ全員座れェ!!この人質が見えるかァ!!」

俺を狙っている殺し屋、ではなく、全くの無関係の人間が人質の首にナイフを当てていた。

クッソ……殺し屋の方しか注意してなかったぞォ……!?流石にこんな急に強盗?か知らねぇけどあんな一般人にこんなことされるなんて予想しちゃいねェ……!!

だが、対殺し屋として一応腕はある俺だ。俺の身も守りながら、人質も助けよう。一対一の対戦は、得意中の得意、俺の大っ好きな戦い方。面と向かっての殺し合いなら、相手が何人だろうと大歓迎である。

「ひっさしぶりにワクワクさせてくれるじゃァねェかァ……!!」




同時刻 赤宮高校にて


どうしよう。どうしようどうしよう。

僕は今、物凄く焦っている。

先程、常時耳にしているイヤホンから急にミカンさんから連絡が来て、『僕が殺し屋に狙われている』との情報が入った。

なんで僕……!?い、いや、ルア君とかならまだしも僕!?駄目だよ今は……授業中だよぉ……。

少し警戒して辺りを見渡してみると、少し先の席に、僕がこの高校に入学させられた原因の殺し屋では無かったが、殺気立っているクラスメイトがいるではないか。

ガチなの?ねぇマジなの?勘弁してよほんっと。

僕は一対一の対戦があまり好きではなく、一番得意なのは毒殺というかなり陰湿な殺し方をする感じの殺し屋なのだ。

別に一対一の対戦が苦手という訳では無いが、なんというか、相手のテンションに着いて行けなくて面倒臭いというか。

とにかく好きじゃないのだ。特に、相手が僕の方よりも多い場合、時間が長引くことになる。疲れず目立たずじわじわと殺したい僕にとったら、最悪的な戦い方なのだ。

それに、今は授業中。いつ襲ってきてもおかしくない程に殺気立っているが、流石に休み時間か放課後だろう。そうだと信じたい。そうだと信じるしかない。

「はぁ……」

ため息をつくと、逆側のイヤホンから声が聞こえてきた。右側はミカンさんから、左側は仕事仲間誰とでも繋がるようになっている。

「……い、おい、……こえ……か?」

少し電波が悪いようだが、声的にこれはダース君だと予想する。

〈ちょっと電波悪いけど、聞こえます〉

流石に声を出す訳にも行かないので、ダース君宛にメールで返信をする。

少し遅れて、声が返ってきた。

「そ……か、良いか、よく聞けよ?」

ダース君で間違いないみたいだ。電波も戻ってきたらしく、聞き取りやすくなる。

「今狙われてるらしいな、授業中か?やべぇじゃねぇか。とりあえず、殺ったら俺に連絡しろ。ミカンによるとなんかあの短気野郎も狙われてるっぽい。多分あっちを本命だと思わせて、体がちっせぇ奴から狙おうとか考えてんだろ」

短気野郎とは、ルア君のことである。

というか、体がちっせぇ奴から、なんて、なんて失礼な。確かに小さいけれども。これでも殺し屋十年以上やってんだぞ。

「馬鹿野郎共、一番殺し屋歴の長いお前を狙ったのが運の尽きだな。とりあえず殺ったら報告しろ。死体運びは俺が、処理はアイツがやるいつもの流れで行くぞ。とりあえず死ぬな」

そこまで言うとダースは、一方的に通話を切った。最初の方は電波が悪かったことも考えると、きっといつもの地下のデパートに居るのだろう。甘い物を食べる為ならダースは何でもするのだ。僕達の命が狙われてるって言うのに、なんて呑気な人だ。

「おーい心、話聞けよー」

そう僕よりも年下なんじゃないかと思われる先生に言われ、イヤホンが驚く程に小さく誰にもバレないということに感謝しながら、声を出した。

「す、すみません……」




同時刻 スーパーにて


とは言っても、いきなり殺し屋です覚悟しろぉなんてことをする程馬鹿ではない。

まずは人質の確保からだ。

「金だ!!」

首は動かさず、さっと辺りを見回す。商品棚が整列している室内の、だいたい二、三十メートル先に犯人と人質。俺が警戒しなければならない殺し屋は、俺の右後ろ約五メートル程離れたところに居る。

「レジの金を寄越せ!!人質がどうなってもいいのか!!」

犯人と人質と、俺との間には惣菜コーナーが並んでいる。まぁ、ジャンプしながら走り抜ければ二、三秒で着くだろう。幸運なことに、まだスーパーの中はシャッターすら閉まっておらず、ただただ犯人が叫んでいるという状態だ。

「……ふっっ」

短く息を吐いて、一瞬で能力を解放する。俺の持っている能力は、『筋肉強化』。体中の筋肉を操ることができ、それでいて人間の持つ最大限の能力を十分に引き出す事が出来る。

俺は走り出し、惣菜コーナーの棚に手を付けては飛び越え、走り、を何度か繰り返し、犯人の前に立つ。と同時に犯人の持つナイフを左手で軽く弾き、犯人の手首を折った。

『金だ!!』の声を聞いてから、僅か四秒。しかも、早めに数えて四秒だ。

人質を担ぎ一瞬でUターンしたら、後は殺し屋の方へ向かうだけ。人質を上空に高々と投げ上げ、殺し屋達に「殺したかったら着いてこいよォ」と挑発をかける。

人質をキャッチし、人質の子供であろう男の子の隣に立たせる。

「悪かったな、母さん投げちまって。これでもやるよ」

男の子にこの前ミカンに貰った棒キャンディーを渡し、筋肉強化を解く。

未だ手首を抑え混乱している犯人に走り、耳元で「残念だったなァクソジジイ」とただ俺が言いたいだけの意味の無い言葉を吐き、顎を軽く叩いて気絶させた。

その場でジャンプし、商品棚の上に乗る。殺し屋の方を向き、クイクイっと手で合図をした。スーパーを出て、人通りの少ない駐輪場へと続く薄暗い通路に滑り込んだ。

犯人が人質を取ってから、三十秒も経っていない。

「まァ、ゆっくり動いた方かァ」

なんて言って準備運動していると、殺し屋達が走ってきた。プロの殺し屋であれば、もう俺はとっくに殺されていることだろう。タイミングは沢山あった。

カートを押している時に素早く殺して持っていくことも出来ただろうし。辺りを見回している時にもやれたはずだ。

プロの殺し屋は、俺も本気を出さないと相手に出来ない。一度だけ、プロの殺し屋に襲われて、一人仲間を失ったこともある。その時の教訓から、ペアになって一緒に行動することは辞めた。

……ほら、こんなに色んなこと考えてる暇があるんだぜェ……?何をグダグダとしてやがんだァ?

「どうしたよォ。もう準備運動は十分なんだけどなァ」

「……ぅ……うおおおおぉぉぉおお!!!!」

一人が声を出し、俺に殴りかかってきた。

まともな武器持ってねェなこいつらァ。まぁ、組織に金目的で雇われた一般人かねェ。

「雑魚の殺し屋でもっ、もっとっ、上手くっ、やらァッ」

言いながら、顔を殴り、腹に膝蹴りをし、もう片方の足で腰を蹴り、アッパーをして、四人を絞める。一瞬で後一人になった。

「ひっ……ぃあ」

「悪かったな。俺も伊達に殺し屋やってねェんだわッ」

五人目も、踵で脳天を突き息の根を止め、五つの死体に囲まれる形となった。ここまで手応えの無い殺し屋も、珍しいものだ。

最近は殺し屋自体も減り、こんな殺し屋ばかりになってしまった。

「……ココロんとこでも行くかァ」




放課後 赤宮高校


「はい、さようなら」

担任の先生が、僕達生徒の後に続いて礼をした。いつもならここで直ぐにでも帰路に着く僕だが、今日はそういう訳にも行かない。

なんたって、そこに僕の命を狙っているクラスメイトが居るんだから。

なんて思って黒板を消していると、

「あ、心君」

そのクラスメイト話しかけられた。

凄いナチュラルに来るじゃないか、完全に舐められている。

「な、なんですか……?」

「黒板消し終わったらで良いからさ、一緒に帰らない?」

下校中に、か。安直だな。

「ぁ、はい、分かりました」

笑顔で返事をしておいて、黒板消しも良いところに、二人で帰路に着いた。


「……でさぁ、そこでお父さんがさぁ、」

殺し屋クラスメイトの話を聞きながら、通学路を歩いて十分が経過した。嘘だとバレバレの話、つまらない話し方。緊張し過ぎだろう。

「……でさ。突然なんだけど」

急に少し早歩きになり、僕と面と向かう形で立ち止まった。

すると、そのクラスメイトの横の通路から、沢山の人がでてきた。皆、どこかしらに緑のアクセサリーをつけている。

「死んでくれないかな」

ニヤッと、決まった、とでも言うような顔をして、自分の後ろに立つ大勢の仲間らしき人物達を見回した。

うわ〜……厨二病かぁ〜……。

「俺はさ、気絶させて監禁して、じわじわ拷問で殺すのが好きなんだ。こんなに大勢いれば、君みたいな小さな子供、拉致監禁なんて一瞬さ」

「そ、そっか……こ、困ったなぁ……」

いつもの笑顔で言いながら、一瞬で目と鼻の先まで距離を詰める。

「ぅおっ」

相手が少しよろけたところで足を引っ掛けて転ばせ、後ろの数人を下敷きにする。事態をいち早く察知し、殴りかかってくる奴らを横目で殴り気絶させながら、口を開いた。

「僕も……結構拉致監禁タイプで……へへ、同じですね……君と同じなんて虫唾が走りますけど……ま、まぁ、人の好き嫌いを邪魔するのは嫌かなぁ……なんて……あはは……」

殴りかかってくる奴らが居なくなったことを確認して、足で踏んでいた相手の足を離す。

「こ、こんなに一方的じゃあ、君達もつまらない……ですよね……。ハンデ、あげます。」

「んだとぉ……!?舐めてんのかてめぇ!!」

殴りかかってきた相手の攻撃を避けて後ろに周り、先程まで下敷きになっていた奴らも適当に蹴っておいて、ついでに気絶させた。三十人前後といったところだろうか。

カラーギャングの卵かな。

「なっ……」

自分が一人になった事実を受け入れられないとでも言うように、相手は顔を赤くして殴りかかってくる。

「そ、そんなんで殺せるなんて思われちゃうんですか……舐めてるのはそっちじゃないですか……?」

「くっ……死ね!!死ねぇ!!」

「お金が欲しいんですか?そんなに君に恨まれるようなことをした覚えもないですし……」

「なんなんだ……簡単に殺せるとか嘘つきやがって……!!」

永遠と同じようなへなちょこパンチを繰り返してくる相手に、僕は眠くなってきていた。

もう面倒臭いや。殺っちゃお〜。

「どこに十年以上殺し屋やってる奴を簡単に殺せる一般人が居るんだよ。ちょっとは頭使え馬鹿が」

蹴りを顔面にヒットさせて、大将も気絶させたところで……。

「……え、えへへ……僕の勝ち……ですね」

そう呟いて、とりあえず気絶させたので、ダース君へ連絡をしようとした時。

「おう、見事だな」

後ろからダース君の声がした。見ると、ルア君も一緒だ。腕が大きめの袋に変わっているのを見ると、あそこにルア君の御手柄(バラバラ死体)が入っているのだろう。

普段は一人一人で死体運びも処理もやるのだが、最近平和になってきているので、こうして手分けして処理することも増えてきた。こちらの方がお喋りもできて楽しいし楽なので、僕的には嬉しい。

まだ殺し屋が普通だった昔は、少しでも仲間に会うなんてことすれば直ぐにバレて、話し合いでもしようものなら全員生き残れるか怪しいぐらいだったので、本当、平和になったと思う。現役の殺し屋に会うのすら、一年ぶりレベル。

そんなことを、高校の制服を着て思った。

「そいつら気絶かァ?ほんとに拷問好きだなァ……」

「やっぱ……そっちの方が楽しいですから……」

えへへ、と笑ってみせて、ダース君に死体を任せる。いつもの拷問部屋に届けてもらうように言っておいた。

「じゃ、俺は帰るなァ」

「はい、またどこかで」

「ったく……死体運びも大変なんだぞ」




同時刻 ミカンの部屋


ルアもココロも無事だったようで、ふぅ、と息を着く。本当に久しぶりの殺し屋としての仕事だったので少し不安だったが、流石に対殺し屋として何年も活動しているだけあり、今回は簡単すぎたみたいだった。

「平和ボケも良いところよね〜……。……全く殺し屋も動かないもの。依頼が来ないのかしら」

そんなことを、様々な種類のPCに囲まれた薄暗い部屋で呟く。殺し屋の資料、依頼や報酬などが載った紙の束などが散乱している床には足場は無く、私が座っているゲームチェアもほぼ動かせない状態だ。

私達の対殺し屋の組織も、もちろん依頼で動いている。一般人の殺しの依頼ではなく、殺し屋の殺しの依頼しか受けないというだけで、自ら殺し屋へ乗り込んでいる訳では無い。殺したかった殺し屋は、皆、対殺し屋をする前の殺し屋だった頃にもう殺してしまっているのだから。つまり、仲間割れだ。そんな殺し屋に恨みを持った人達が集まった、私達の対殺し屋の組織には『HITMAN OF HITMAN』という名前がついており、通称『ヒットヒット』と言われている。あまり格好の良い名前ではないが、覚えやすいのでありだと思う。

動かせないルームチェアから唸り声を上げながらよいしょよいしょと降り、食べていたカップラーメンのゴミをリビングに捨てに行く。

こんな有様なのはこの部屋だけで、リビングやキッチンなどはかなり綺麗だ。自炊はしないが、ちゃんとゴミは毎週出しているので、ゴミ屋敷ではない。実際、私室に散乱しているものもゴミではないし。

再び自室に戻り、色々な殺し屋のサイトやヒットヒットへの依頼が無いかなどをチェックし、殺し屋の組織に潜入した時に絶対に付ける監視カメラの映像を視聴する。

特に面白い会話は無いかと思い、そろそろ寝ようかと思った。

その時、イヤホンの向こうから、「ヒットヒット」という単語が出てきた。耳を済ませ、殺し屋達の会話を聞く。

「最近、殺し屋も少なくなってきてるなぁ」

「ま、当たりめぇだろ。そもそも人殺しなんだからな」

「そういや、対殺し屋のあそこも暇してんじゃねぇか?」

「あぁ、ヒットヒットだっけ?ちっせぇ組織で訓練もろくにしてねぇだろ。腕も落ちてるかもなぁ」

なんて言う会話と共に、笑い声も混じって聞こえる。監視カメラの映像を盗み聞きしている部屋の映像に切り替える。やはり、大柄な男二人の会話の周りに、部下のような人が数名立っていた。笑い声はこの部下達のものだろう。

「今なら狙えるかもなぁ……。殺し屋が減ったのは、対殺し屋の組織が増えたからってのもあるだろう」

「初代の対殺し屋組織を殺してしまえば、殺し屋の再発、来るかもしれませんねぇ」

「だなぁ……。他の残っている殺し屋とも話し合いだ。ヒットヒットを潰すぞ」

「了解です」

私は思った。

この殺し屋達は、話し合いなんてしようとしている当たり、かなり小さな組織だと。

そして、これからはまた、昔のように切羽詰まった生活が続くのではないか、と。

「殺し屋全滅の良い機会ね……!!望むところよ……!!」

読んで頂きありがとうございます。あらるです。初投稿です。

誤字脱字やアドバイスなどありましたら、沢山言って頂けると嬉しいです。

少しでも楽しんで頂けましたら、まだまだ準備運動ですので、次回も読んで頂けたらと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ