~第9幕~
そして夜になる。夕食会は特に何事もなく終わったが、羽田と長門の姿は未だ見えないままだ。笠松はそれを気にしていたが、摩耶子は「どこかにいるでしょ」と宥めるだけにした。摩耶子はそれから金尾に呼び出され、とある会議室に来た。
会議室には丸谷の親子に鞠句、小森と言うスキンヘッドの男もいる。どうやらこの祭りの核になる人間が集まっているようだ。入室してすぐに摩耶子は長門の事を尋ねられた。しかし当然何も知らないので「知らない」と答えた。
「そうか……銃が十丁も盗まれたからな。妙な不安しかないのだが……」
小森は長門が銃を盗み、鞠句会を襲撃するのではと危惧しているらしい。
「あの、羽田さんって女の子も行方不明なのです?」
摩耶子は切りだした。別に心配でも何でもないが、ここで尋ねるべきだと確信したからだ。
「彼女はいま、檻の中にいるわ。ある“重大な罪”を犯した疑いがあってね」
「重大な罪?」
「ええ、明日の儀式で明らかになる。それはそうと高橋さん、もっと綺麗な服を着てみないかしら?」
金尾が返事を返しながらも、突然提案しだした。
明日行われる儀式の舞踊を一緒にやってみないかという誘いだ。断ろうと一瞬躊躇した摩耶子だったが、何かこの空気に飲まれた彼女は絞り出すように自然と応えた。
「はい、やってみようとは思います」
「嬉しい! 断られると思ったわ!」
摩耶子は金尾とハグを交わした。心を開いているつもりなどなかった。しかし何かが彼女を動かしていた。それは何かに引きずられるかのように。ずるずると。
翌日の3日目、摩耶子は朝から金尾より舞踊の特訓を受けた。事細かに教える彼女の熱意は本物だ。いつしか彼女は彼女と笑顔で会話を交わすようになる――
そして夜になる。夕食を終えると雪が深々と降る中で鞠句会の面々は外へ出る。そして大きな焚火を始めた。焚火の後ろにステージがあり、炎が登壇者を照らす。そこに現れたのは縄で拘束された羽田と彼女を引き連れた丸谷親子、そして鞠句会長の4人だ。
「皆さん! これより審議を始めます! この者は人の愛する者を奪い、淫らな行為に及ぼうとした! それも本日姫君を担う高橋摩耶子殿の心を傷つける目的を以て!」
ステージ裏で摩耶子はその光景を唖然として見ていた。
「どういうことです!? これは!?」
「最後まで見なさい」
金尾の言葉のままに彼女はステージを見続ける。羽田の顏は痣だらけになっている。ここに来るまで拷問を受け続けていたのだろうか。色々思い耽るうちに壇上では映像が流れ始めた。
その映像に映ったのは車内にて拓哉と熱い抱擁を交わす羽田の姿だった――
「さぁ! 姫君よ! 壇上に!!」
金尾に背中を押されて摩耶子は壇上に上がる。そして羽田を睨み付けた。
「姫君、この者を断罪しますか? それとも慈悲を以て許しますか?」
「断罪します」
摩耶子の返事は即答だった。
「や、やめてよ! 何するのよ! 私が悪いワケじゃない!! 野坂君から求められたから、応じただけよ! こんなのが罪になる法律なんて可笑しいよ!? やだ! やだ! ギャメテエエエエエエエエ!!」
羽田の顏は役員が持ってきた桶の中に突っ込まれた。そして見るも無残にその顔は硫酸のような液体に溶かされていき、やがて彼女は絶命した――
「さぁ! 生贄は揃った! これよりユバ様を召喚しようではありませんか! 皆さん、唱えるのです! ユバ様を崇め奉る唄を!」
鞠句が指揮を執り始めると、徐々に鞠句会の合唱が始まった。
そしてその時に鞠句真澄の頭が銃弾で撃ち抜かれた――
∀・)さぁ!いよいよ!鮮血のフェスティバルスリラーが始まります!!心して次号を!!




