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 幼い優とくれは。

 書いてて楽しいです。

 次回も優視点です。

 



 私達と神様の交流はこうして始まった。

 

 「くれはと会いたいって人(?)がいるんだけど」

 「優くんのお友達?」

 「友……うん、まあ友達」

 神様なんだけど……いきなり神様と言われても普通の人は信じないだろうし。

 「いいよ!優くんの友達会いたい!どんな子だろう!」

 えっ、くれはの中で神様が子供になっちゃった。

 「ねえ、男の子?女の子?」

 「えっと男……」

 「そうなんだ!優くんみたいに綺麗なのかなぁ。早く会いに行こう!」

 興奮して矢継ぎ早に質問するくれはに上手く説明出来ない私は内心頭を抱える。どうしよう。

 『ふふっ、くれはは慌てん坊さんですね。大丈夫ですから連れて来て下さい』

 流石神様。全てお見通しだ。

 「社にいるんだけど、くれは社は初めてだよね?」


 神社の最奥にある小さな社は本来神田一族の者しか入る事が許されない。そう、物理的に入る事が出来ない。どういう原理なのかはわからないけれど結界の様なものがあるらしく、見ることすら出来ないのだ。神田一族でも入れる者は限られている為、神田一族の中では聖域と化している。だから会う場所を社に指定された時拒んだ。一族に見つかれば、どんな処罰があるかわからないし、くれはの存在を知られてしまうから。


 でも神様はいとも容易くこう言った。

 『大丈夫ですよ。誰にも知られたりしません。この結界を作り変えましたから。それに優とくれはに加護を与えましたから心配しなくて良いのですよ。本当に優は賢い子ですね』

 この、いつからあるのかわからない、しかも誰も手出しの出来ない結界を作り変えた?もしかしたら、この神様はとんでもなく高位の神様なんじゃ……。

 『はい、そこまで。私のことはいずれわかります。でもそれは今ではありません』

 有無を言わさない神の言葉には力があり、その神威に身体が震える。

 『ああ、申し訳ありません。人と交流するのは初めてで加減を間違えてしまいました』

 怒って……ないのかな?

 『勿論です。この場合優が怒るのでは?』

 ……考えるだけでも恐ろしい事を言う神様である。たかが人間が神様に対して怒るなんて事出来る訳がない。

 『ふぅ、困りましたね。私はただ、優やくれはと仲良くなりたいだけですのに。力とは不便なものですね』

 仲良く……友達みたいにかな。

 『ええ、そうです。友達……ですか。なんとも好ましい響きですね。お願いします、優。私と友達になりましょう』


 本当にとんでもない神様である。


 

 ◇◇◇◇◇◇


 「君がくれはちゃんだね?」

 清々しい空気に満たされた社に入るなりかかった声は神様の声と似てるけれど、いつもと違う。頭の中に響くように聞こえるものではなく、現実に耳から聞こえてきたのだ。しかも少し幼いような?

 声が聞こえた方を反射的に見た私達の目には白い髪に銀色の瞳をした見た事のない色彩の男の子が居た。しかも、途轍もなく美しい。子供なのに『美しい』という形容詞しか出て来ない程なのだ。それなりに言葉を知った今の私でも『美しい』としか言い表すことが出来ない。

 これは神様?

 『そうです。ですが今からは念話ではなく話します。私の事は一、はじめと呼んで下さい』

 

 「はじめまして、私は一。優君の友達です」

 「はじみぇ、はじ、めまして、私はくれはです!」

 噛んだ、くれは可愛いすぎる。

 「くすくす、丁寧な挨拶をありがとう。くれはちゃんは可愛いね。ね、優君?」

 「っっ、うん。くれはは可愛い……じゃなくて!」

 「まあまあ、疑問は後で聞きますから。今はくれはちゃんとお話させて?」

 っとうに、この神様は!

 「ふわぁ、私、優くんよりきれいな人初めて見た」

 くれはの中で神様もとい、一が急上昇したらしい。くれはは綺麗なもの、可愛いものに目がないから。

 ……若干悔しいけれども相手は神様。敵う訳が無い。そんな風にいじけてる私を放置し、二人は楽しそうに話している。


 「そう。くれはちゃんは綺麗なものや可愛いものが好きなんだね」

 「うん!それにね、あまいお菓子も好き!」

 「ふふっ、そうなんだ」

 「一番好きなお菓子はね、デパートで売ってるプリン!すごーく頑張った時とか良いことした時に買ってもらえるの!今度持ってくるね!」

 「でもご褒美ならくれはちゃんが食べるべきなんじゃない?」

 「うん。でも美味しいものを皆で食べると、もっと美味しくなるんだよ。優くん、優くんにも持ってくるからね!」

 「うん。ありがとう、くれは」

 ああ、やっぱりくれはは可愛い。この可愛い生き物は絶対に守らなきゃ。

 「そうなんですね、わかりました。ありがとう、くれはちゃん。私も楽しみにしてるね」

 美しい顔に柔らかな笑みをたたえた神様は、容姿は子供なのに慈悲に溢れている。どうやら、くれはをかなり気に入ったらしい。くれはの方も綺麗で優しい神様に懐いた。さよならしたくないと愚図るくれはを宥めて送った後で、社に戻ると子供の姿のままの神様が居た。


 「くれはは素直な良い子ですね」

 「はい!私の自慢の友達です!」

 「ですが危うい。優の懸念の通り、神田の一族に知られない方が良いでしょう」

 「やっぱり……。他の神様達もくれはを此処に連れて来なさいって……。私はどうしたらくれはを守れるんだろう」

 「私の力はこの世界には強過ぎます。出来ることはしますが限られています。それでは足りないかもしれません。それ程、あの子は神々の興味を引く存在です」

 そんな!私はいい、でもくれはは駄目だ!

 「……前に神様言ってましたよね?力を与えてくれるって」

 「ええ、確かに言いました。でもそれは優自身を守る為の力です」

 「畏れ多い願いだとわかっていますが、それ以上の力を与えてもらえませんか?」

 「くれはを守れる位の力、ということですか?」

 流石神様、話が早い。

 「駄目、ですか?」

 「駄目なのではなく、大きい力は自身をも傷付けるのです。優、貴方もくれは同様守られるべき存在なのですよ?それなのに……」

 「私はっ!私はどうなっても構いません!それに力を使いこなせれば問題無いはずです。一生懸命努力します、約束します。だからお願いします!」

 「何故そこまでくれはを守りたいのですか?」

 「……くれはは私なのです。こうなりたい私なのです。くれはを守ることは私を、私の心を守ることです。善い心でしている訳ではないのです。私は、私を守りたいだけなのです」

 

 くれはに自分の理想を希望を重ねて背負わせている自分は、なんと醜いことか。

 それでも、くれはをこのまま神々や神田一族に関わらせたくない。


 「……良いでしょう、貴方に力を与えます。貴方の持てる最大限の力を。ですが、それを使いこなすのは容易ではありません。我慢や苦痛は今とは比べものにならない。それでも……」

 「お願いします!」


 こうして私と神様は強く、切っても切れない絆を結ぶ事になる。そうして、それは此処に来ても尚、切れない絆だった。


 





 


 



 次回の投稿は4/3(土)です。

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