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 くれはの『王子』事情。

 

 



 「致し方ありません。クレハ様の言動や行動が余程でない限りは目を瞑ります」


 あれ?案外あっさり了承するんだ。

 もっと反発があると思ってたんだけど。

 恋金ではクレメンティーヌ至上主義で盲目的に描写されていたけど、本当は違う?


 「……クレハ様はもう少し表情を取繕う練習が必要ですね?心の声がお顔に全部出ています」


 うわっ、可愛い笑顔で冷気を放つとか止めて。

 怖さが割増しになってるから。


 「えっと、私がどういう思考回路してるのかとか聞かずに返事していいの?良かったら説明するけど?」

 「ええ、大丈夫です。先程から観察させて頂いた限りになりますが、クレハ様は隠し事は出来ても嘘はつけないとお見受けします。これからクレメンティーヌ様として過ごすにあたり、嘘はつかない方向に致しましょう。下手をすれば他の事まで露呈しかねませんので」

 

 う〜ん、そこまでわかりやすい方ではないんだけどな。

 でなければ『王子』をやってこれなかったし。

 

 「貴族でないという前提でクレハ様を見れば、上手に気持ちをお隠しになっておられます。ですが、これでも私はクレメンティーヌ様の専属侍女です。いつ如何なる時も側に侍り、対面する方々の事も把握していなければ、いざという時咄嗟に判断が出来ません。クレメンティーヌ様ほどではありませんが、かなりの人間を見てきております私がクレハ様は信頼に値する人物だと判断致しました。ですのでクレハ様が譲れないと仰る事は、それなりの理由があると思いましたので是と申しました。クレハ様には申し訳ないのですが、今の心持ちのまま社交の場に行きましたら、あっと言う間に足元を掬われ餌食となるのは火を見るより明らかです」


 すみません、異世界、恋金、貴族社会なめてました。

 それに私は前世で人間関係に苦労したとはいえ、たかだか15歳の小娘だったのに……反省事案だ。


 「ごめんなさい、この世界のことゲームでやったから知ってるつもりになってた。見るだけと、現実として生きるのは全然違うのに。これからはちゃんとソフィアに聞いてからにする」

 「……本来正直で素直であることは美徳でございます。ですが貴族社会において、クレハ様がその資質がおありなのは弱点にしか成り得ません。私だけの前であれば問題ございませんが、使い分けが出来る程の感情の制御に長けていらっしゃらないようですのでお気を付け下さいませ」


 ……ソフィア、褒めて落として私をどうしたいの。

 とにかく、すぐ非を認めたりとかはNGってことね。

 何だか貴族って思ってたより大変そうだけど『誰か』になるのは慣れてるしね。


 「じゃ私の方は解決ということで。細かいことは追々にしよう。今度はソフィアの番。お願いとやらを教えてもらえる?」

 「……私が側に侍るのにも限界がございます。クレメンティーヌ様は公爵令嬢にして、この国の王太子殿下の婚約者。未来の王妃なのです。足元を掬おうとする者達だけでなく、その権力に擦り寄ろうとする者も少なくごさいません。ですから、私の目が無いところで起こったことは必ずご報告して頂きたいのです。クレメンティーヌ様が注意して下さるとは思いますが、現時点でのクレハ様は余りにも危ういのです」

 「うん、わかった。元からソフィアには全部言うつもりだったし問題ないよ?」


 思ってたお願いとは違って拍子抜けだけど、こっちとしては願ったり叶ったりだ。

 小さな子供みたく、一々聞かないと判断に困りそうなのは何となくわかってきたから。


 って、あれ?

 ソフィアは何で残念な子を見るような顔してるの?


 「そんな簡単に了承なさって……。クレハ様は初対面の人間をこんなすぐに信用なさるのですか?」


 いや、ソフィアもさっき簡単に了承したよね?

 

 「ううん。本来は疑り深い方だと思う。特に女性、同年代の女の子には必要以上に警戒する傾向にあるかな?でも自分の直感は大事にしてるの。滅多にないけど『この子と友達になりたい』と思った人は信用することにしてる。……信用ってさ、して欲しかったらまずこっちからするべきだと思うんだよね。それで裏切られたとしても自分に見る目が無かっただけだしね」


 女の子は可愛い、そして狡い。

 全員がそうではないのはわかっているけれど、私に近付いてきた女の子の多くはそうだった。


 集団で一人を責め立て言い訳なんて出来なくし、例え反論したとしても数でねじ伏せる。

 それでも従わずにいれば、今度は自分達を被害者に相手を加害者に仕立て上げ噂を拡散する。

 気が付けば孤立無援の状態に心が壊れていくのは時間の問題だ。

 その状態に気付く女の子もいるけれど、関わって下手に庇えばその子が二の舞になる。

 それがわかっているから、本人も気付いた子も身動き出来ない。

 そして教師や大人にバレないように用意周到に数々の伏線が引かれていて、訴えなんて意味を為さないのだ。

 それはターゲットが壊れるか、折れるかするまで終わらない。

 そんな事を平気でゲームのようにやってのける。


 男女にかかわらず、そういった類の人種はいるけれど、私の周りは圧倒的に女の子が多かった。


 私の周りはそんな女の子で溢れていた。


 そして、私はそのターゲットだった。



 だから私は『王子』という盾を持つことになったのだから。



 女の子は可愛い。

 だけど……。


 その何倍も恐ろしい生き物だと私は身を持って知っている。


 

 



 次回の投稿は10/18(日)です。

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