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今回少し短いです。
次回から新たな人物が登場します。
それからアノ人も……。
思う存分恋をしようと決心したけれど。
何をすればいいのか、さっぱりわからないのは女として如何なものだろう。
悩んでもわからないものはわからない。聞くのは負けみたいで嫌なんだけど、余り多くは無い時間を無駄にしたくはない。
……仕方ない、背に腹は代えられない。
「あのさ、つかぬ事をお伺いしますが……」
「何、その言葉遣い。くれは、何か俺にやましい事でもあるのか?」
っっ、こいつ〜!だから嫌だったんだ。やましい事では無いけれど、何かあるってすぐばれちゃうのも腹立たしい。幼馴染あるあるだよね。でも、ここで喧嘩して時間を浪費するのは本末転倒。我慢、我慢よ、くれは!
「やましい事なんて無いよ!そうじゃなくて……あのさ、恋をするって何をするの?」
「っっ、いきなり爆弾を投下するのは止めてくれ!」
「はっ?」
「いや、悪い。……だよな、くれははこういう奴だ。言ってる意味全く理解してない天然を通り越したド天然だった。俺、いつまで理性もつんだろう……」
ブツブツ小声で言ってる言葉はよく聞こえない。
「……何よ、恋愛経験が無いって馬鹿にしてるの?私だって恥を忍んで聞いたのに、酷い!」
「違っ、違う!馬鹿になんてしてないから。それにくれはが恋愛経験が乏しいのはわかってる。ってか恋愛経験豊富だったらブチ切れるわ」
「?」
光輝の言ってる意味を考える事数秒。
……嫉妬するって事?
ボンッと音が鳴りそうな勢いで顔が熱くなる。
「っっ、それって、えっと、あの……」
「ああ、くれはが想像したので合ってる。俺は他はそうでも無いんだが、くれはに関しては許容範囲が狭い。つまり、嫉妬深い」
それ、ドヤ顔で言うことなの?
でも『嫉妬』って、小説やドラマではどろどろした鬱屈した負の感情のイメージだったんだけど、光輝の嫉妬はむしろ清々しいくらいだ。
「あははは!そっか、嫉妬深いんだ。じゃあ、恋愛経験乏しくて良かったんだね。はははっ!」
何だか、前世のアレコレが馬鹿らしく思えてきて笑いが止まらない。
「嫉妬深い事がそんなに面白いとは思えないけど、くれはが笑うならいいさ。……そんな笑顔いつ振りだろうな。で、何だっけ?」
「ふふっ、そうだね。こんなに笑ったのはすっごく久しぶりかも。ああ、あのね、私達には時間が無いでしょ?だから、出来る事は全部したいなって。でも恋人同士がどんな事するのか、よくわからなくて。光輝はわかる?」
「っっ、俺だって経験は皆無だよ。だけど知識はある。でも……」
明朗快活な光輝が、こんなふうに言い淀む事は少ない。
「何か問題がある?」
「ああ〜!こういうのは俺らしく無い!あのさ、くれははセオリー通りの恋愛がしたい?」
セオリー通りの恋愛?
漫画や小説、それこそこの世界の元である『恋金』のような?
確かに憧れはあった。でも今思えばそれは、現実では無いものだからこそ楽しそうに見えたんだ。
誰かの幸せと誰かの不幸が隣り合わせだったり、現実は綺麗なものだけじゃ成り立たない。何かを誰かを手にするには、恥やプライドをかなぐり捨てて、がむしゃらに努力しないといけない事や、誰かを傷付ける覚悟が必要だったりする。
前世の私にはその覚悟も努力も足りなかった。
でも今、奇跡的に愛しい相手と心を通わせられた。
本当に大事なのは何なんだろう?
私はどうしたいのだろう?
「光輝」
「うん」
「私はセオリー通りの恋はいらない」
「うん」
「私達らしい恋がしたい」
「うん」
私を見る光輝の目が優しい。
「でも何をどうしたらいいのかはわからない」
「……二人で見つければいいんじゃないか?」
私を抱く腕に力がこもる。
「一緒に探してくれる?」
「当然だろう?俺はくれはの恋人なんだ。そうなんだろう?」
くすぐったい響き。『恋人』なんて想像の遇物にすぎなかった。
「……うん、そうだよ。光輝は私の恋人」
私を見る目が、抱く腕が。
光輝の全部が私を好きだって伝えてくれる。
幼い頃から、ずっとずっと好きだった人。
命の灯が消える時まで私を守ろうとしてくれた人。
数奇な運命で此処に来たのに、また出逢った。
だから、前世での何もかもを脱ぎ捨てて、全力で貴方に私の想いを伝えたい。
私らしく。
光輝らしく。
二人で探そう。
何処にもない、誰にも真似出来ない私達らしい恋を。
時間が許す限り……。
次回の投稿は3/2(火)です。