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 恋金の説明……すみません、ご都合主義炸裂です。


 ソフィアVSくれは?



 『恋せよ乙女〜金の娘と守護者たち〜』

 この乙女ゲームは魔法と剣でレベルアップしながら攻略対象のイケメン達と恋をするゲーム。

 ただ一般的な乙女ゲームと違いRPG要素が少々多いのが特徴。

 攻略対象の好感度を上げる為に体力、魔力、剣技、魔法、そして個々が持つ固有スキルを上げてミッションをクリアしなければ、次のイベントは起こらない。


 しかも、そのミッションが曲者で魔法か剣技どちらかだけだとクリアは難しい。

 だから必然的に両方をバランス良くレベルアップしなければならないのだ。


 更に固有スキルは厄介で、一人につき一つしか持てないし、選ぶことも出来ない。

 基本固有スキルが何でもミッションはクリア出来るけど、スキルのレベルが上がっていることが条件に含まれる。

 更に更に!スキルは数多く存在し、ほとんど同じスキルは無いのでレベルアップの仕方は各々が試行錯誤しなければならない。


 この面倒さが病みつきになって嵌るプレーヤーが多いとネットで見た。


 ……かく言う私もその一人なんだけど。


 その世界が現実になると思ってなかったから、夢中になれたけど、いざしろって言われたら……キツいかも?


 「……ま、クレハ様?」


 ソフィアの声で我に返った私。


 いけない、恋金に思考がとんでしまっていた。

 とにかく今は魔法誓約書のことだ。


 「ごめん、ちょっとぼーっとしてた。何?」

 「魔法誓約書なのですが、一体何に使うおつもりなのかと」


 ああ、使用用途ね。


 「えっとね、私は脳内でクレメンティーヌと出来るって言ったけど、それってソフィアにはわからないじゃない?さっきの質問からもソフィアの最優先はクレメンティーヌなんでしょ?だからそれを証明するためだよ」

 「……どういう魔法誓約をなさる気ですか?」

 「えっ、ソフィアに嘘を言わない、だけど?それだとこれから先も安心出来るでしょ?」

 「…………はぁぁぁ」


 呆れ顔で細い溜息をついたソフィア。


 ……つい最近も誰かに似たような溜息つかれたような。

 いや、前世のことは今は置いておこう。


 「可愛い顔が台無しだよ、ソフィア。で、何に呆れてるの?結構いい内容だと思ったんだけど」

 「率直に申し上げても?」

 「勿論。ってか、これからも二人の時はその方向でお願い。言葉ももっとくだけてくれたらいいよ。意見も遠慮なく言って?わからない事だらけで、その都度こういう会話するのも面倒だし」

 

 それに回りくどい言葉のキャッチボールは苦手だから。

 ずっと一緒にいる人にまで疑心暗鬼でいるのは疲れるし、病む。

 ……前世で病んでた私が保証する。


 「……わかりました。言葉は人前で出ると危険ですので、内容だけ思ったままを申し上げさせて頂きます」


 ……ソフィア、真面目だなぁ。

 でも、こういう人好き。 


 「うんうん、了解。で、何がダメなの?」


 ひと息吸って姿勢を正したソフィア。

 きりり、としてこれもまた良い。

 可愛いだけでなく、凛としたとこもあるとか最高!


 「……若干クレハ様の思考がわかる様になってきた自分が嫌です。とにかくクレハ様、迂闊すぎです」

 「えっ、同類?同類なの?そっちじゃなくて、ただ愛でることで萌えるタイプ?」

 「違いますっっ!そこは流して下さいっ!肝心なのはクレハ様が迂闊だと言った事です!」


 そんな全力で否定しなくても……。


 「クレハ様は前世の『げーむ』で認識したこの世界の人間関係を、甘く見過ぎだと申し上げているのです」

 「今の魔法誓約の内容と何の関係が?」

 「失礼ですがクレハ様、前世での身分は?」

 「身分?基本、身分差なんて無かったよ。強いて言えば所得の差があるくらいかな?」

 「……だと思いました。クレハ様、この世界で生きる以上身分はついてまわるのです。そして、貴方様の身体は公爵令嬢であるクレメンティーヌ様のもの。そこまではご理解頂けていますね?」

 「はい……」


 ソフィア、段々眼が座ってきたんだけど?


 「貴族社会とは魑魅魍魎が跋扈する魔窟でございます。常に言動、装い、所作、表情など全てを見られています。そして、その観察は何処かに足を引っ張る要素がないかという悪意そのもの。いつ、何処で、誰が……目も耳も至る所にございます。……クレハ様、一つお願いがございます」

 

 この話の流れからのお願いって、正直言って簡単に頷ける類のものじゃないよね。

 ……でも、クレメンティーヌを心から崇拝し、クレメンティーヌもまた信頼を寄せるソフィアのお願いを断るという選択肢はない。

 それに断ればソフィアのくれはへの信頼は得られないだろう。


 仕方ない、腹を括ろう。


 「……お願いを聞く前に私からも一つ聞いておいて欲しいことがあるんだけど?」


 訝しげな顔をするソフィアだけど、目線は続きを促していた。


 「私だってクレメンティーヌの立場が悪くなることは避けたいと思ってる。だから精一杯の努力はする。その……クレメンティーヌの努力と同じ、というわけにはいかないとは思うけど。だけど、私にもどうしても譲れないことが何個かある。それは多分、クレメンティーヌの思考とは相容れないものなの。そういった事態になった時、私は私の考えを優先し実行するから。クレメンティーヌの侍女であり親友のソフィアには受け入れられないかもしれないけど、そこは譲れない」


 恋金、最強最悪のクレメンティーヌ。

 彼女は自らの目的の為には手段を選ばない。

 他者を貶め傷つけようとも……。

 だから彼女には味方がいなかった。


 孤高の気高き美しい公爵令嬢クレメンティーヌ。


 その毒々しい棘も魅力だと感じはじめた私だけど、悲しい結末(バッドエンド)を避けるためにはクレメンティーヌのやり方は封印する。


 そう、恋金のクレメンティーヌではないクレメンティーヌになってもらわなくてはならない。

 それは、ここまでのクレメンティーヌの努力を無駄にしてしまうことも沢山出てきてしまう。

 クレメンティーヌの血の滲むような努力を側で全て見てきたソフィアが、それを許せるだろうか?

 でも、それをしてもらわないと話は、断罪回避への道は開けない。


 私の言葉を聞いても尚、感情の読めない無表情なままのソフィアをじっと見つめた。

 


 



 次回の投稿は10/16(金)です。

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