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私はイケメンを書くより女性との絡みを書く方が長くなる傾向にあるようです。
恋愛ものなのに申し訳ごさいません!
「ソフィア、私暫く王太子宮に滞在しようと思います。準備をお願い出来るかしら?」
「畏まりました。ただ一つお願いがございます」
「何かしら?」
珍しいな、ソフィアがお願いなんて。
「公爵邸のクレメンティーヌ様のお部屋にある魔道具の使用許可を殿下に取って頂きたいのです」
「魔道具?何の魔道具かしら?」
「消音と対魔法、対物理攻撃の結界の魔道具です」
あっ、そっか。
そうだよね、確かにこのままじゃソフィアと話すのも苦労するよね。
でも公爵邸ではクレメンティーヌの魔法で張っていたのに魔道具もあったんだ。
流石ソフィア!
「殿下に聞いてみましょう」
「ありがとうございます。では私は準備を始めます。私が居ない間はマルリード侍女長がお側に付いて下さいます」
「わかりました。ではよろしくね」
「はい。では暫く失礼致します」
ほうほう、あの美女が。
うん、目の保養だ。
……クレメンティーヌ、冗談だから引かないでよ。
「クレメンティーヌ様、入室してもよろしいでしょうか」
噂をすれば目の保養なマルリード侍女長の声がした。
「はい、どうぞお入り下さい」
扉を開け入って来た彼女は相変わらず清楚なのに妖艶な美女だった。
うん、やっぱり良い。
見た目も好みなんだけど、それよりぴんと張った弦のような心根が良い。
清濁合わせ飲みながら心の奥に真っ直ぐな芯があるのがわかる、ぶれない心意気みたいなものが彼女を凛と見せるから。
大人の女性とはこういう人を指すのだろう。
今の私には到底なれそうもない憧れの女性像。
……いや、今それどころじゃなかった。
「おはようございます、マルリード侍女長」
「おはようございます、クレメンティーヌ様。ご機嫌麗しゅう。体調は如何ですか?」
「体調はとても良いですわ。……毎食監視付きでしっかり食事も取っておりますし」
殆ど毎食、食事の時間にヴィーがやって来て優しく完璧な微笑みに変な圧をかけて完食するまで逃げられないからねっ!
「くすくす、それはよろしゅうございましたわ。クレメンティーヌ様は華奢すぎて折れてしまいそうでしたから。殿下も苦労の成果が出て喜ばれる事でしょう」
ヴィーが暇な人間ではないのはわかってる。
だから私の食事にやって来るのも時間をやり繰りして来てくれているのだと言う事も理解してる。
それだけ私の健康に重きを置いてくれている事も感謝している。
人間、身体が健康なら大抵の事は何とか出来る。
だけど身体が弱ってしまうと比例して心も弱ってしまう。
だからこそヴィーはクレメンティーヌの健康を最優先に考えているのだと思う。
「確かにわたくしはもう少し健康に気を遣うべきでしたわ。殿下にご心配をお掛けして本当に申し訳ないと反省しております」
「女性として体型に気を遣うのは理解出来ますが、クレメンティーヌ様は細すぎでございます。健康的な体型になるまで殿下がしっかり管理される事になるでしょうから大丈夫ですわ」
いや、それ大丈夫なの?
このままじゃ豚さんになってしまわないだろうか?
「クレメンティーヌ様にお出ししているお食事は全て殿下の監修の元に作られております。クレメンティーヌ様の食事の様子をご覧になって、好まれるものを太りにくい調理法でクレメンティーヌ様が完食出来るぎりぎりの量をお出ししておりますの。デザートにしても砂糖やバターなどを代替え品で太らないように作られておりますので安心して下さいませ」
「は?殿下がわたくしの食事を監修?」
「うふふ、愛、愛ですわ。素敵です。王太子宮の皆も殿下のかいがいしいご様子を微笑ましく思っておりますの。ここにおります者は殿下がお小さい頃から仕えている者が多いですから」
マルリード侍女長の背景にきらきらした何かが見えるのは私の幻想なのだろうか……。
「先程ソフィアが一度フォレスター公爵邸に帰りましたので暫くはおばさんで我慢して下さいませ」
「マルリード侍女長をおばさんと言う人はいないと断言します。あっ、丁度良かったです。マルリード侍女長にお願いがあります」
「ありがとうございます、クレメンティーヌ様。で、お願いとは何でしょう?」
「殿下にお会いしたいのですが、ご都合の良い時間をお聞きして欲しいのです」
「まぁまぁまぁ!お待ち下さいませ、すぐお聞きして参ります!」
満面に喜色をのせたマルリード侍女長は近くに控えていた侍女に言伝を頼む。
その言伝を聞いた侍女の顔にも笑顔が咲く。
何で?
「殿下はきっとすぐこちらにいらっしゃいますわ!クレメンティーヌ様から会いたいと聞いたからには、そうですね、半刻以内には来られるかと思います」
「でも殿下はお忙しい方です。わたくしの用は大した事ではごさいませんし、時間が無ければ次の食事の時でも……」
「有り得ません!クレメンティーヌ様のご要望は全て叶えるよう申しつかっております。それにクレメンティーヌ様が殿下に会いたいと仰ったのです。それは最優先事項ですから!」
マルリード侍女長の瞳が輝き夢見る少女になっている。
……ああ、何だか先が思いやられる方向に進んでる気がするんだけど。
「クレメンティーヌ様、殿下がお見えになりました」
扉を叩くのと同時に掛けられた言葉に唖然となる。
えっ?今さっき言伝を頼んだとこだよね?
早っ、早過ぎない?
「あら、半刻もかかりませんでしたわね。流石殿下ですわ」
マルリード侍女長、気にするところはそこではないと思う。
はあ。
ヴィーと接する機会を増やそうとは思っていたけれど、このままじゃ何かあった時クレメンティーヌがヴィーから逃げられなくなってしまいそうだ。
何事も無く逃げる必要がないのか一番良いとは思うけれど。
私はこっそり溜息をつきながら少女の様に楽しそうなマルリード侍女長に付いて行ったのだった。
次回の投稿は12/28(月)です。




