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 おはようございます、こんにちは、こんばんは!

 十六夜です。


 日中暑く、朝晩寒いのが辛いです。

 皆様も体調管理にお気を付け下さい。


 今回は長めですが、基本一話2,000文字程度の予定です。


 皆様の暇潰しにでもなれば幸いです。


 




 「お嬢様?お嬢様っ!旦那様、お嬢様がっ」

 「クレメンティーヌ!何処か痛いところは?気分は?」



 はっ?

 クレメンティーヌ?


 重い瞼をこじ開け見えたのは、こちらを涙目で心配そうに覗く優しげな美丈夫。

 

 「っっ!誰?」


 私が驚いたのは、目の前の美丈夫が知らない人というだけでなく金髪碧眼だったから。


 「……クレメンティーヌ、私がわからないのか?」

 「………………」


 いや、知らない。

 産まれてこの方、外人に知り合いはいない。

 ていうか、日本語話せるの?


 「ソフィア、お医者様をすぐ呼んできてくれ」


 ソフィア?

 さっきの女の子?


 ……私、あの子を知ってる。


 私が10歳の時このフォレスター公爵家にやって来た、私の一番の理解者で姉のような存在。

 いつだって私の味方で、唯一心を許せる私付きの侍女。


 ……待って、公爵家とか侍女とか。

 脳裏に流れる映像とこの世界の知識が私の中で一つになる。

 あっ、私は……。


 そう。

 私はフォレスター公爵令嬢、クレメンティーヌ·フォレスター。

 


 どうやら森川くれは、異世界転移したみたいです。



 ◇◇◇◇◇◇


 あれから大丈夫だという私を更に心配したお父様、ベルナルド·フォレスター公爵がお医者様を呼び異常が無いと診断されて、やっと解放されたのが今である。


 ……大丈夫だと言っただけで更に心配するって。


 まあ、私が知ってるクレメンティーヌなら言わないからね。この国最高の医者を呼べ、くらいは簡単に言うような娘だから。



 くれはとしての記憶の中に乙女ゲームがある。

 私は自分が可愛い女の子でないからこそ、可愛いものが大好きだった。

 勿論人並に恋愛にも憧れていたけれど、『王子』という枠から出られなくなってしまってた。

 

 だからこその乙女ゲーム。


 誰にも内緒でやり込んだ乙女ゲームの中でだけ、私は可愛い女の子になれた。

 そのやり込んだ乙女ゲームに転移するとは思ってもいなかったけれど。



 恋せよ乙女〜金の娘と守護者たち〜略して恋金。


 舞台はよくある、なんちゃって中世ヨーロッパ風。

 時々疑問の残る日本的なアイテムが出てくるありがちなもの。

 どのゲームにもあるご都合主義万歳で、主人公と攻略対象のイベントも辻褄が合うようになっていた。


 ただ他の乙女ゲームと一線を画す点があり、私はこのゲームに嵌まった。


 恋金はレベルアップしないと次のイベントに進めない。

 それもRPG並みの戦闘やアイテム探しが必須条件となる。

 主人公は勿論のこと、攻略対象の守護者達も半端なく強いのだ。



 そして乙女ゲームの絶対条件、悪役令嬢は全員がラスボスさながらのハイスペック保持者。

 この悪役令嬢を倒さないと(勿論戦闘で)攻略対象とは結ばれないのだ。



 もう気付いてる人もいると思うけど、そう、クレメンティーヌ·フォレスターはこの恋金の悪役令嬢の一人なのだ。


 しかも攻略対象人気NO.1のこの国の王太子の婚約者。


 

 恋金は好きだよ?

 王太子も私の推しだった。

 前世に未練がないとは言わないけど、転移した今を楽しもうとも思ってる。


 なのに、何故っ。

 最強最悪のクレメンティーヌに転移した?



 クレメンティーヌは主人公のヒロインに思い付く限りの悪事を働く。そして悪役令嬢NO.1の頭脳を存分に活かし、中々証拠を残さない。

 追及されない悪事はヒロインと王太子の仲が深まる毎に苛烈さを増していき、最終的には王位の簒奪か隣国との戦争に行き着くのだ。


 だけど所詮悪役令嬢、当て馬。最後に全ての悪事は暴かれ、良くて身分剥奪、悪ければ処刑が待っている。


 ……運営に問いたい。

 乙女ゲームに王位の簒奪とか、隣国との戦争とかいる?

 RPG要素高めで、今までとは違うユーザー確保したいってところまではわかるけど、規模大きすぎだよ。


 まあ、あくまでゲーム、そう思って作られたストーリーだから規模が大きい方が面白いんだろうけど……。


 それを現実として今から生きる私には「運営の馬鹿野郎!」としか思えない。

 ってか、本当どうしよう。



 運良く(?)クレメンティーヌはまだヒロインと攻略対象が出会う学園に入学する前だから、ほとんど悪事は働いてない。むしろ、恋する婚約者の王太子に相応しくなろうと人一倍努力してる健気な女の子だ。容姿だって美形な両親のいいとこ取りで、凄い美人さん。太らないようにと大好きなお菓子も小さな頃から我慢して……。


 何か腹が立ってきた。

 何が不服なわけ?

 クレメンティーヌ可愛いじゃん。

 こんだけ努力して好かれようとしてるのに、ぽっと出の女の子にうつつを抜かすなんて、男の風上にも置けん!


 ヒロインは可愛い、そりゃあ可愛い、それは認める。


 ふわふわした艶のある桃金の髪に大きく潤んだ榛色の瞳。

 華奢な身体とヒロイン属性の天真爛漫とドジっ子が付けば至上最強だ。


 だからといって、全てが許されるのはどうなのか。

 婚約者がいる男性に近付き奪うのはお咎めなしなんて間違ってる。

 

 とはいえ、ここが恋金そのままの世界なら私が何を言おうと負け犬の戯言になる。


 なら……。


 こっちから願い下げだ。

 浮気者の婚約者なんていらない。



 くれはが憧れた恋。

 きらきらしたものを想像してた。

 だけど現実の恋は厳しいらしい。

 クレメンティーヌほどの美少女がこれだけ努力しても報われず、あっさりと婚約は破棄されて身も心も全てぼろぼろになる。


 ただ相手が攻略対象だったから。

 ライバルがヒロインだったから。


 だったらクレメンティーヌが幸せになる恋をしよう。

 クレメンティーヌだけを愛してくれる人は必ずいる。


 だから私が入る前のクレメンティーヌには可哀想だけど、婚約者の王太子は諦めてもらう。


 幸いにも今の私とクレメンティーヌは同化した状態で、脳内で会話が出来る。私の記憶も共有しているからかクレメンティーヌは私の考えを受け入れてくれた。


 どうしようもない恋に無駄な労力と時間を使っていて、断罪されたら元も子もない。

 断罪されるのはこれから入学する学園の卒業パーティ。

 時間は余り残されていないから。


 

 婚約者と距離をおき、攻略対象とヒロインを避けて断罪回避し、クレメンティーヌだけを愛してくれる人を探すのだ。



 うん、何とかなりそうじゃない。

 何せ今までの相手が凄すぎただけで、それ以外の男の子ならクレメンティーヌに即オチしそう。

 選り取りみどり的な?


 まあ一人でいいんだけど、頑張ってきたクレメンティーヌには良い相手を見つけてあげたいので厳選したい。


 えっ?あっ、そうか。クレメンティーヌの相手ということは私の相手でもあるんだ。

 うんうん、クレメンティーヌは良い子だね。 

 さっきはよく知りもせず最強最悪なんて言ってごめんね。

 じゃあ二人が気に入る相手、一緒に探そう。



 こうして享年15歳森川くれはの、前世でやり込んだ乙女ゲームの悪役令嬢転移人生が始まった。




 

 

 



 くれは、書いてて楽しいです。


 今回は恋愛メインでいきたい!

 ……ですが書いていくうちに変わっていくのが常なので保証は出来ません。


 くれはとクレメンティーヌの恋探しにお付き合い下さると嬉しいです。



 次回投稿は10/12(月)です。

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