1
おはようございます、こんにちは、こんばんは、はじめまして、お久しぶりです。
新作です。
今回は100話まではいかないかと……。
またまたご都合主義なので齟齬は温かい目で見逃して頂けると助かります。
宜しくお願いします!
最後まで、暇潰しにでも読んで貰えたら嬉しいです。
「王子、今日の自由行動何処を見てまわるの?私も一緒に行っていい?」
「はっ、王子はあなたとクラス違うじゃん。私達とまわるの」
「あなたこそ、王子と違う班でしょ?」
「ねぇ王子、あの二人は放っておいて私達とまわらない?」
かしましく囀ずるJC達。
今は中学生最大のイベント、修学旅行の真っ只中。
私のまわりには可愛らしい女の子が群がっている。
私の名前は森川くれは。
165cm、50kg。自分で言うのもなんだけど、締まった身体には程良い筋肉がついている。
筋肉と比例した運動神経は両親の遺伝子と、じっとしていられない性格のおかげと思われる。
生粋の江戸っ子な両親と祖父母を持った私も曲がった事が嫌いで、喧嘩は日常茶飯事。
著しく成長不良な躰付きは私を中性的に見せるらしい。
そのせいかはわからないけれど、私についたあだ名は『王子』だった。
可愛らしいJC達にもみくちゃにされた私を、一本の腕が引っ張り出す。
「光輝」
腕の持ち主は私の幼馴染みの一人、一条光輝のものだった。
「いつまで遊んでんだ。もう、集合時間だ」
私が居なくなったことに気付かないJC達を放置して私の腕を掴んだまま、ずんずん進む光輝に足に力を入れ踏ん張り、待ったをかける。
「放おっておいたら怒られる」
「自業自得だろ、放おっておけ」
冷たく突き放す言葉。そんな訳にはいかない。
「なら、光輝だけ行きなよ。私は戻るから」
「……はああああ」
呆れた顔で大きな溜息をつかれたけど知らない。
勝手にやって来て、連れていかれても……こっちにだって都合というものがある。
「集合時間遅れるよ。早く行きなよ」
「……ほんとムカつく。人の気も知らないで」
「光輝さん、君何言ってるの。勝手なのは光輝だよね。こっちがムカつく側だと思うんだけど?」
私が居なくなったことにやっと気付いたJC達がこちらに駆けてくる。
「王子、ひどい〜!待ってよ〜」
うん、可愛い。可愛いは尊い。可愛いは最優先すべきもの。
「待つよ、早くおいで」
「ったく、お前というやつは……」
うん、こっちは可愛くない。とっとと行けばいいのに。
「あっ、光輝君だ。今日は他の皆は一緒じゃないんだ?」
「………………」
無言で明後日の方を向く光輝。
私の取巻きの子達で彼女が一番嫌いな光輝は視界にすら入れたくないらしい。
ちなみに彼女が言った他の皆とは光輝以外の私の幼馴染み。
後3人いるけどきっと私同様、JC達に囲まれているんだと思う。
「秋夜達は自由行動どうするって?」
「くれはと俺に任せるだとよ」
「いや、私はあんた達と一緒にまわるなんて言ってないよね?」
勝手に決めないで欲しい。
一緒にまわるなんてどんな拷問なんだ。
此処にいる光輝、さっき言った月城秋夜、あと神田優、武田智樹の4人はびーびー泣いてた頃からの付き合いだ。
4人はそれぞれ趣きの異なるイケメンで、能力も高く他校にも、勿論うちの学校にもファンが多数いる。
小さな頃からずっと一緒にいたせいで、愛すべき可愛い女の子達に恨まれてきたのは悲劇としか言い様がない。
それに4人の取巻きは過激な子達もいるので、無傷では済まなかった。
だけど相手は私と違って可愛い女の子。
やり返すわけにいかなくて……。
苦肉の策で4人とほんの少しの距離をおき、現在に至る。
そんな私に最大のイベントを一緒にまわれと?
ない、絶対ない!
「くれは?お前の行きたいとこでいいから決めろ」
『行かない』という選択肢はないの?
4人が嫌いになったわけじゃない。
だけどやられっぱなしでいるのにも限界がある。
「ほんと無理。あんた達とはまわらない。一緒にまわってくれる子ならいっぱいいるでしょ?他あたって」
「くれはっ!お前またそんなこと……」
「ごめん、もう行く」
正論なんて聞きたくない。
そんなのはわかってて言ったんだから。
突き刺さる視線を感じたけれど、私は一度も振り返ることなく足早にその場を後にした。
移動のバス、最悪なことに後ろの席は光輝だった。
道理の通らないことを言った自覚のある私は、テンションが上がるわけもなく、ただ窓の外を見ていた。
バスは次の場所へと向かうため、高い山をくねくねと登っている。窓の外に見えるのは険しい崖で、落ちたら助からないだろうな、なんてぼんやり考えてた。
まさかこの考えがすぐ現実になるなんて思いもせずに。
ガタガタ、キキキキキーー!!!
「やだ、なにっ?」
「うわ、誰かっ!」
「いやあああー!」
物凄い衝撃と揺れる車内。そして巻き起こった叫び声。
窓から見たバスは崖のガードレールと接触し火花をあげている。
あ、これ死ぬやつだ。
あまりの出来事に一周まわって冷静になった頭が状況を理解した。
その時横から伸びた腕の中に抱え込まれる。
光輝。
後ろから移動してきた光輝は私を護るかのように、きつく抱き締める。
「くれは、俺は……」
「……馬鹿だね、光輝。でも、ありがと」
ガンッッ!!!
さっきとは比べものにならない衝撃。
そしてすぐに訪れた浮遊感。
私の意識はそこで途絶え、黒く塗りつぶされた。
恋せよ悪役令嬢の投稿は基本一日おきにさせて頂きます。
次回投稿は10/10(土)、am11:00です。