第4話 少女の敵 其の二 行間
ちょい短いです
黄金の髪を揺らしながら人ならざるものにしか見ることの出来ない少女アリスが空の絨毯に座り込んでいた。
アリスは町を見下ろしながら、呟いた。
「また……ひとり……消えた」
ここ最近は特にひどくなっていた。
小さな気配が何かを探すように次々に町の人外の気配を消していた――存在さえも。
「躊躇しないんだね。あなたは」
小さく白い手を町に伸ばす。そしてそれを握りつぶす。
「ふふ……」
アリスの雪肌の顔に赤い弓の月が浮かび上がる。
「やりすぎ……かな?」
アリスはゆっくりと立ち上がると、アリスの姿はその場から消え失せた。
意味のない捜索を続けてかれこれ2時間近く経ったのかもしれない。
彰は歩き疲れて公園のベンチにぐったりと座り込んでいた。
町の人外を消しているという人物を探すことは分かる。しかし、手がかりになりそうなものがこの名前の書いてあるノートだけ。しかも全員が全員彰の知らない人物ばかり。
そんなに大きくはない町とはいえ町の中から人を見つけることは出来ない。森の中から一本の杉を見つけるのでさえ何ヶ月もかかる作業というのに、数日でこの人物を見つけるなんてことは出来る出来ない以前に不可能な気がしてきた。
「はあ……」
「どうしたの?」
彰が声の方向に顔を向けるとアリスが立っていた。
朝からいないと思っていたアリスはいつものようにそこに立っていた。少し心配していた彰は少しだけ安心した。
「どこに行ってたんだ?」
そう彰が聞くと、
「女の子の秘密」
それだけ言うとアリスは彰の隣に座ってきた。
「なにそれ」
「ねえ、ショウ」
アリスはいつものような口調でいつもと違う顔になっていた。それがどうにも気になった。
「また、消えた」
「消えた?」
アリスには人外が消えたことは伝えていない。なのにアリスはそれを知っていた。だから何が消えたのかを確認するつもりで聞いた。
「何が?」
「ショウは私の特技って知ってる?」
「特技?」
「そう。私ね、一応死霊なんだよね。ショウはあまり気にしてないかもだけど。死霊ってね、他のどの有機物、生物の気配――ううん、魂って言った方がいいのかも。それの探知が特技って言えるの」
「魂……」
ぞくりと背中が凍る。忘れかけていた死霊の気配が彰の全身を襲った。
「魂を狩る死霊……なんて素敵な響きでしょ? もちろん響きだけじゃないよ。死霊の目には人や人外の姿は魂と一緒に見えるの。でね、ここ最近……人外だけの気配が消えてるの。昨日で一〇人、今日で五人。人外だけが次々にね」
その顔にはそうした人物に対する同類である人外を殺されたことにより発生する憎悪がまるで無かった。あるのはただの、笑み。
そう、笑ってる。アリスのことはよく知らない。そう考えていた。でもただ見ていなかっただけなのかもしれない。
“ヒト”としてのアリスじゃなくて、“死霊”としてのアリスのことを――