三話:マキ前編
今回少し長くなってしまったので、
前編と後編に分けて投稿します!
「……ん?ちょっと待てよ。さっき自分銃で
撃たれたよな!?思いっきり腹に!血ダバダバ
出ちゃってたよな!?けどなんで!?」
自分の腹部を手で触り確認する。
「……治っちゃってんのー!!??」
え?自分本当に何なの?変な能力使うし勝手に
再生しちゃうし!化け物じゃんか!
カァーカァーカァー、カァーカァーカァー
夕暮れの合図の烏の鳴き声で我に帰る。
と、とにかく、何処か泊まれる場所を探さないと。
薄暗い路地裏から出て宿を探す。
しかしどこもかしこもボロボロでビルはいつ崩れても
おかしくない状態。ビル内で宿泊したら寝ている間に
瓦礫に潰されるかもしれない。
そのことを知ってか、難民らしき人達も道路の
真ん中に簡単なテントを張って野宿してる。
ビルの中で寝ている間に死んだらたまったもんじゃ
無いしな……。でも流石に屋根無しで寝るのな……。
しょうがないし、誰かのテントで少し休ませて
もらおうかな。
そう思い、テントの群れに向かう。
結構な数だな。1000人以上はいるな。
なんでこんなにも住む家も無い人達が居るんだ?
やっぱりあの護国隊って言う人達のせいで……。
考えているうちにテントの群れに着き、
少し大きめのテントの中の人に話しかける。
「あのー、すみません。今日一晩だけでいいんで
テントの中で少し休ませ–––––」
「ちょっーーーと!!」
「えー!?何!?って痛い痛い!腕ちぎれるー!」
女性らしき誰かの声が聞こえたと思ったら一瞬で
腕を掴まれ横の路地裏の奥まで引っ張られる。
「い、痛かったー……。で、なんなんですか?
いきなり腕掴んで路地裏に連れ込んで–––––」
走っていてあまり顔を見ていなかったけど、
その瞬間、脳に衝撃が走った。記憶は無いが自分は
人生で初めて一目惚れをしたことは確かだ。
おそらく自分と同じ高校生ぐらいだろう。
美しい、可愛い。この二つの言葉が似合う。
「なんなんですか?じゃねぇよ!何考えてんだ!?
あんな人間が沢山いる中で喰ったらバレるだろ!」
よく見るとスタイルも結構良い。……って変態かっ!
怒った顔も美しい、可愛い。……じゃなくて!
「何を言ってるんですか?食ったらバレるって、
勝手に人の食べ物盗んで食べようなんてしませんよ!
ただ一晩寝させてもらうだけです!しかも人間って
呼び方……自分も人間でしょ。」
「は?何を言ってんだはこっちのセリフだ!
あたしは鼻がいいんだ。お前も喰情者だろ!
間違えるはずがない。泊まりたいんだったらうちの
ところに泊まりな。お前みたいなあぶねぇ奴外に
ほっとけるか!」
喰情者?そういえば護国隊の人達が自分のこと
そう言ってたな。
「あ、あの……喰情者って一体なんなんですか?」
「……はぁ!?おい、もしかしてお前、最近目醒めた
ばかりのやつか!?今頃になって目醒めるとか
どんだけ寝てたんだよ。ププッ」
「笑ってないで答えてくださいよ!はぁ……。」
神様……この外見に入れる性格を誰かのと入れ
間違ったようだ。
「……ぁあ、わかった、わかったから怒るなって。
まぁ簡単に言うと喰情者ってのは超能力が使える
スーパーヒューマンだ。その能力は感情具現操作。
喜怒哀楽とかの感情を具現化して防御や攻撃を
することができる能力のこと。」
さっきの病院で現れたあのバリアみたいのと
赤い火の玉みたいなやつのことかな?
「けど稀に感情具現操作能力以外に特別な能力を 使える奴もいる。エートスだ。エートスの種類は
未知数だか大きく四つに分類することができる。
火とか水を操れるのが自然系のエートス、
動物とか植物を操れるのが生物系のエートス、
瞬間移動とか透明化ができるのが身体系のエートス、
そして最後、特殊系のエートスってのがあるんだけどこれがよくわかんないんだ。」
「よくわかんないってどういうことですか?」
「聞いたことはあるけど見たことがないからな。
本当はないかもしれないし、あるかもしれない。
あっ!言っとくがあたしは高速移動の身体系の
エートスだ。どうだ?羨ましいだろ?」
「どうりで路地裏に連れてくとき自分の腕がもげる
ぐらい引っ張られたわけだ。あと高速移動って
瞬間移動の下位互換じゃないですか?」
「下位互換って言うな!それにエートスも進化できるんだぞ!あたしのエートスも進化すれば瞬間移動に
だってなるんだからな!あと、そういうお前は
持ってんのかよ!エートス!」
「自分はまだわかんないですけど……。」
「ははっ、もってねぇ奴に言われなくないね!」
「まだもってないって決まったわけじゃ……。」
「まぁさっきの話に戻るぞ。」
「今の話まだ終わってないですけど……。」
「で、喰情者にはもう一つ能力があって、それが
超再生。手足や頭が吹き飛んでも身体の繋がっている部分が三割以上が無事なら再生することができる。
三割以下ならそのまま死だ。上級の喰情者の中には弾丸や刃物で傷ひとつ付かないような身体になることができる鋼化能力も使う奴もいる。」
超再生で銃で撃たれたところが治ってたのか。
「そして喰情者の主食、ていうかこの一つの物しか
食べれないけど。」
「一つの物しか食べれないってそれって一体……。」
「それは……"脳"だ。人間の。」
Continue to 四話:「マキ後編」
<説明コーナー>
・喰情者#1…正式名称:感情具現操作能力者
一般からは脳喰いと呼ばれている。
人間の脳のみを主食とし、感情具現操作能力を
使って防御攻撃をする。稀にエートスと呼ばれる
特別な能力を使う者もいる。