生徒会長は王子様
まあ小説だからと言ってしまえばそうなんですが。
「なろう」によく出てくる設定上の問題をひとつ。
婚約破棄物のクライマックス舞台によく学園の卒業パーティが使われますが、これはおそらく乙女ゲームから来ていると思われます。
実は乙女ゲームなるものをやったことがないので想像ですが。
基本は
ヒロイン=男爵令嬢(平民上がり)
メイン攻略対象=王太子もしくは第二王子
取り巻き=高位貴族の御曹司
隠しキャラ=隣国の王族
ということになっていて、私が読んだ限りの乙女ゲームもしくは悪役令嬢物に共通していました。
ところでなぜクライマックスが学園の卒業パーティなのかというと、というよりは舞台が学園なのはそれ以外では主人公であるヒロイン(身分が低い)と攻略対象(王族もしくは高位貴族子弟)の接触の機会がないからでしょう。
舞踏会とかでも可能ですが、ヒロインが攻略対象を攻略するのには時間的に無理があります。
よって「学園に在学中」という環境で攻略出来るようにする。
クライマックスが卒業パーティなのは、それが身分差を無視して一堂に会する最後の機会だからです。
また大勢のギャラリーの前で婚約破棄出来るとか、大人の介入を防げるとか、色々理由はあると思いますが今回はそれについては言及しません。
テーマは表題の通り、攻略対象が生徒会にいていいのかということです。
なぜそうなっているのかという理由としては簡単で、生徒会(長)は学生がなれる学園内の最高権威だからですね。
攻略対象は身分が高いのですが、その権威を誇示できる立場がそれくらいしかないからです。
学園が舞台である以上、学生たちはヒロインも攻略対象も普通は授業があります。
放課後に王子様がフラフラ歩いていてヒロインとぶつかるというのはかなり無理がある設定です。
一度や二度ならともかく、そんなつかの間の接触では攻略する暇なんかありません。
どうしても長時間(少なくとも語り合える間くらい)一緒に居る、という状況が必須なのですが。
そもそもこれ、絶対的に無理がある設定なんですよ。
学園内は身分が停止されるので学生はみんな平等だ、というような頭が天国な発想は日本の乙女ゲーム内でしか通用しません。
王子様とか高位貴族子弟にお付きの者がいないはずがないでしょう。
日本の皇室とか英国の王族など見ていれば判りますが、どんな状況でも必ず護衛役が最低複数ついています。
学園などという身分チェックが難しい場所では尚更です。
廊下でヒロインと王子がぶつかるとか、階段から落ちるヒロインを王子が抱き留めるという状況も有り得ません。
その前に護衛役が阻止します(笑)。
まあそこは乙女ゲーム設定なので、ということにしてもです。
生徒会室内は攻略対象とヒロインしかいないので安全だから、ということにしてしまった事もまあ、いいでしょう。
多分部室のドアの前には護衛騎士が立っていると思いますが。
ですが。
やっと表題の話になりますが、そもそも王子や高位貴族子弟が学園の生徒会を運営するって絶対に有り得ないのです。
なぜかと言うと、生徒会という組織を考えてみれば判ります。
学校の生徒会って実行組織なんですよ。
その仕事内容は学生の世話です。
学園を運営しているわけじゃない。
それは理事会とか教育委員会、あるいは学園長の仕事です。
だとすれば生徒会役員のお仕事は、まあ雑用です。
企画もするかもしれませんが、基本的には現場仕事。
封建制度における支配者階級はそんなことしません。
王子や貴族が事務仕事すると思いますか?
支配階層の仕事は配下の者から話を聞いて判断して決断することです。
間違っても自分で何か調べたり資料を作ったりしません。
書類仕事もしない。
ちょっと違いますがアメリカの大統領がいい例で、書類仕事するにしてもサインだけです。
書類の内容は配下が説明してくれます。
自分で読む暇なんかないから。
増して資料作ったりするなんてとんでもない。
そういうことです。
王太子や高位貴族子弟は実務作業の訓練も受けてないし書類の作成も出来ないでしょう。
将来に渡ってもやる事はない。
そもそもそんな技能は必要ないから習わないし覚えない。
結論。
攻略対象は生徒会なんかには入らないし仕事しません。
やるとしたら生徒会役員から説明を受けてどうしろ、と命令する立場でしょうね。