第九話 再びあの公園へ
私たちは公園の中で寝る準備をしていた。
私は段ボールに寝袋を敷き、おっちゃんと彼は段ボールの上に何もかけずに寝る。
「おやすみ」の声をかけないまま、私たちは眠ってしまった。
翌朝。最初に動いたのは彼だった。
眠ってるおっちゃんに声をかけようとする。
彼が話しかけようとしたとき、突然おっちゃんが体を上げた。
その迫力に驚いたのか彼は話す言葉もないくらい驚いた。
おっちゃんが
「ん?どうした?」
と、声をかける。
すると彼が
「西の公園に行こう」と誘った。
おっちゃんは黙ったまま道路の側溝へお小水をした。
そして戻ってくると
「西の公園に何かあるんだ?」
と言い返す。彼は理由を語らずにひたすら「西の公園に行きたい」と繰り返す。
おっちゃんが
「西の方は、わし、行ったことないからな」
と言い、やや不機嫌な顔をする。
ホームレスは知らない土地には行きたくない感が強い人が多い。知らない場所へ行くと食べ物を集めるのに一から始めないといけないのだ。
私もあまり遠出はしない。
たまに1キロ先の彼女が待つ公園へ行くくらいだ。
(そういえば彼女どうしているのだろ・・・)
そんな考えが私の頭をよぎる。
私は居てもたってもいられず
「おっちゃん、西の公園に行こう。私の知り合いがいます」
と言った。
するとおっちゃんは
「あんたら二人から言われるなんてよっぽど行きたいんだな。よし、行ってみるか」
と言うと寝ていた段ボールを片付け始めた。
彼は段ボールをほったらかしにしていた。それを見たおっちゃんは
「段ボールを片付けないの」
と言った。
彼は心の中で(いちいちうるさいな・・・と)思った。しかし黙って片付ける。
そして三人で1キロ先の公園へ向かって歩き始めた。